第二章 迷宮創造

第34話 ダンジョン攻略後

「いややばすぎでしょっ!?」


 翌日、怜奈は竜の首を持ち帰ってきたルリアからダンジョン攻略の詳細を聞いた。


 それはどれも驚愕では収まらない。

 45階層を超える巨大な迷宮に、ハイオークやオーガの群れ、さらには飛竜に地竜に悪魔の軍勢とは。そしてダンジョンボスは歴史級ヒストリーから伝説級レジェンダリーに進化するクラスのバケモン。


(とても今の私たちが手出しできるような相手じゃなかったね。そのダンジョンの強力なモンスターたちを眷属にできなかったのは痛いけど……)


 彼女は思案しながら自分の手勢を眺める。

 人狼の王ワーウルフロード骸骨兵馬スケルトンタウロス蜂人ホーネットノイド蝉人シケーダリアン蝗人ローカシアン輝石魔狼ダイヤモンドウルフにレッドキャップゴブリン。どれも精鋭級の力を持つものたちだが、とてもそんなダンジョンを攻略できるような戦力ではない。


 それに、ハイオークやオーガの群れがダンジョンから溢れていたと言う。

 新潟駅からここまで決して遠くはない。もしもダンジョンから排斥された強力なモンスターたちがここまで到達していたらと思うと……。


「うん、やっぱりルリアに攻略をお願いして正解だったよ。よくやってくれた!」


「お褒めいただきありがとうございます、レーナ様」


 それにしても、やはり彼女は規格外すぎる。

 話を聞く限り、新潟駅ダンジョンは怜奈が想定していたよりもはるかに上位の迷宮だ。平均レベル100オーバーのダンジョンなんてそうそうない。


 そんな超高難易度のダンジョンをわずか一日で攻略し、あまつさえ手加減してダンジョン内を調べつくし、さらにはダンジョン内のモンスターをただの一匹も残らず殲滅する余裕。


 回収できる魔石はすべて回収してきたと言っていたが、果たして最難関のダンジョンを攻略中にそんな余裕があるだろうか。

 彼女の持ってきた魔石は、どれもゴブリンやそこらの魔物とは比較にならない大きさと魔力密度だった。


 改めて、白銀騎士シルバーナイトルリアの強力さを知った。

 同じ伝説級レジェンダリーのモンスターをも一周する彼女の実力は、すでに神話級ミソロジーにも近いだろうということを感じさせる。


 本当に、最初のガチャ召喚で彼女が出てきてくれてよかった。怜奈はそう確信するとともに、彼女への期待をさらに募らせていく。


「レーナ様も、ビートルダンジョンの攻略お疲れ様でした。どうやら強力な味方を手に入れたようで」


 そういいながら、彼女は蜂人ホーネットノイドのジルフィスや蝉人シケーダリアンのクスノキを一瞥する。

 どちらも彼女が見たことのないモンスターだ。ルリアに比べれば大したことはないが、二人とも武芸の達人であることはその立ち姿を見ればわかる。


 今後怜奈がダンジョンを創るうえで、大きな戦力になるだろう。

 何せ虫型のモンスターは集団を創る割に知能が低い。その中で統率者となれるものがいるのなら、これ以上ない戦力だ。


 それに、怜奈の成長ぶりもすさまじい。

 ルリアもまた彼女からダンジョン攻略の様子を聞いたが、感嘆の一言だった。


 己の使役する眷属をまるで手足のように操り、さらには圧倒的魔法センスを発揮した。一騎打ちで蝉人シケーダリアンのクスノキを打倒し、ダンジョンボスであるジルフィスにも辛勝している。


 改めて、彼女の魔法センスと戦いへの冴えは異常だ。何せ、ルリアは長い長い修行ののちに今の境地へ至ったが、彼女は数日前まで父に守られるだけの単なる小娘だったのだ。


 それが、いったいどんな進化を遂げたのだろうか。

 この短期間でダンジョンを二種も攻略し、その手勢を増やしている。


 召喚できる眷属も増え、召喚したそばからレベル20を超えているという強力さ。

 彼女は新潟駅ダンジョンのモンスターを眷属にできなかったのは惜しいと言っていたが、ルリアからすればあんな雑兵ども関係ない。


 これほど強い迷宮創造ダンジョンマスターが生み出すモンスターなら、きっとそう遠くないうちにあんな木っ端モンスターどもとは比較にならないほど劇的な進化を遂げるだろう。


 いずれは必ず伝説級レジェンダリーに至る者たちだ。

 もしかしたら、自分を超え神話級ミソロジーになる者もあらわれるかもしれない。


 今回のビートルダンジョンでの活躍を聞き、ルリアはむしろ焦ったほどだ。

 怜奈はどんどんと力を付けている。これからもその成長は止まらないだろう。


 新潟駅ダンジョンを手に入れたことで、彼女はさらなる力を付ける。

 自分が怜奈の元で活躍できる期間は、そう長くないかもしれない。そんな焦りを、ルリアは感じていた。


「さ、じゃあ向かおうかルリア。君が攻略した新潟駅ダンジョン、今度は私のものにするんだから! 最低限の準備をしたらすぐに向かうよっ!」


 怜奈は立ち上がると、ルリアへその手を差し伸べる。

 陽光の差す中、新たなる君主が誕生したことをルリアは改めて歓喜した。

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