空洞の丘のナワル
夜が他の土地よりも早く落ちる村では、
コオロギが三度鳴いた後、誰も一人では歩かない。
それは迷信ではない。
それは――記憶だ。
近代の地図には存在しない村、
空洞の丘のサン・イシドロでは、
年寄りたちは静かにこう語る。
人は皆、完全な姿で生まれてくるわけではない。
ある者は、余計なものを抱いてこの世に来る。
あるいは――
決して目覚めてはならなかった何かを。
それを人々はナワルと呼ぶ。
何世代にもわたり語り継がれてきた。
ナワルはその力を選ばない。
それは血に埋め込まれた呪いとして、必ず受け継がれる。
昼は人。
夜になると、空気が重く沈み、犬たちが理由もなく遠吠えを始める頃、
その魂は肉体から剥がれ落ち、獣の姿を取る。
幻ではない。
仮面でもない。
それは――魂の断裂だ。
サン・イシドロで語られる獣は、いつも同じだった。
巨大な黒い犬。
ねじれた脚。
そして――人間のような目。
最初の失踪は、雨の降らない夏に起きた。
消えたのは一人の子供だった。
夜明け、干上がった川のそばで見つかった。
身体に傷はなかった。
だが、その顔は――
この世のものではない何かを見た者だけが浮かべる、
絶対的な恐怖に凍りついていた。
治療師たちは囁いた。
あの子の魂は、
舐め取られたのだと。
それから、同じことが続いた。
血の一滴も残さず剥がれた鶏。
蹄の跡が、人の足跡へと変わる地面。
首に牙の痕を残して目覚める村人。
そして同じ朝、
別の誰かが――
まったく同じ傷を負って現れる。
村は互いを疑い始めた。
視線は鋭くなり、沈黙は重くなった。
だが、
本当の正体が指差された時には、すでに遅かった。
ドン・エウセビオは寡黙な男だった。
丘の縁にある土壁の家で、独り暮らしていた。
彼の祖父は“知の人”だったと言われている。
断食と歪んだ祈り、
神ではない存在と交わす契約によって、
肉体と魂を引き裂く術を学んだ、
古い時代の呪術師。
真実が暴かれた夜、
村人全員が松明を手に丘を登った。
家の床に転がっていたドン・エウセビオは、
裸で、泥と乾いた血にまみれていた。
その傍らには、
まだ温もりを残した黒い犬の死体。
だが、それを確かめた瞬間、
屈強な男たちでさえ嘔吐した。
その獣は――
人の痕跡を持っていた。
目は、動物のものではなかった。
歯は、人のように削られていた。
毛皮の下の皮膚は――
あまりにも、人に近すぎた。
その時、
ドン・エウセビオが目を覚ました。
彼は許しを乞わなかった。
命乞いもしなかった。
ただ叫んだ。
魂が、元に戻らない。
もう、つなぎ直せない。
村人たちは彼を縛り、
かつてと同じように丘へ連れて行った。
歩くたび、
老人の身体は不自然にねじれ、
内側から何かが出ようとしているかのようだった。
祈りは効かなかった。
十字架も意味をなさなかった。
焼かれた時、
炎は炎の音を立てなかった。
それは――
泣き叫ぶ獣の声だった。
それ以来、サン・イシドロは今も存在している。
昼は、どこにでもある村。
だが夜になると、
丘から風が降りてきて、
犬たちは姿を消し、
子供たちは闇の中に
黄色い目を見る夢を見る。
年寄りたちは、今も小声で警告する。
ナワルは、完全には死なない。
血が続く限り……
奴も続く。
だからこの村では、
新生児を夜、一人で眠らせることはない。
泣き声が、
不意に止んだ時――
それは眠りではない。
すでに、何かに見つけられたのだ。
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