第3話 スキルの謎、隣人の謎?
なんでも、スキルというのは基本的に一人ひとつしか持てないものであるらしい。
だってのに、返品不可らしいんだぜこれ?
いや、返品したいなんて思うのは俺くらいである可能性は、ないでもないんだが。
なにせ、スキルは全ての人が持っているとは限らないのだ。
むしろ、ない人のほうが多いまである。
実際、今日十数人の村人がスキル確認を受けに来て、実際にスキルの存在が認定されたの、俺以外だとたったの三人だ。
その三人も、世間で有用とされるスキルではない、らしい。
「うーん、〈還元〉ってなんだよこれ」
いや、待て。
俺の隣で唸ってる一歳下の幼馴染であるトーテル君や?
それ、育てたら結構いい線行く可能性あるぞ?
「鉄の錆びを鉄に戻せる希少なスキルですね。
ただ、錆びて変形した形状が戻らないため、磨いた方が早いという方のほうが多いですが」
どうやら育たないタイプのスキルなのですよね、と、シシェーリス確認官は残念そうに言う。
そうか、育たないスキルというのもあるのか。
……ただ、この〈還元〉に関しては、この世界の科学知識が足りないせいじゃないかという気も、そこはかとなく。
他の二人のスキルも、〈拳法〉と、〈スライス〉という、微妙ラインだった。
どちらも育つスキルだけど、〈拳法〉、つまり
〈スライス〉の方は、育て方次第ですね、とシシェーリス確認官は述べた。
剣を学ぶ方向に行くか、料理人コースになるか、らしいんだけど。
「とはいえねえ、育てたところで、切るしか上手くない料理人って微妙よねえ」
そう、〈スライス〉を所持していると言われたのは、フィリスねーさんだ。
フィリスねーさん、この年齢なのにスキル確認受けたこと、なかったのか。
そして、残念なことに、大人になると、スキルは育たなくなる、らしい。
フィリスねーさんは年齢的に、育成可能スキルが発現しても、育てるのが無理っぽいのだ。
「それにしても変な話ねえ。
フィリス、貴女って確か、この村に来た年にスキル確認、受けてたわよね?」
その時にはないって判定じゃなかった?と、かーさんに言われて、首を傾げるフィリスねーさん。
「そうだっけ?覚えてないけど」
フィリスねーさん最大の問題点は、ここだ。
びっくりするくらい、物忘れがひどいんだ、若いのに。
頭の悪い人じゃないのに、純粋に物忘れが酷いんだよねえ、勿体ない。
というのが、村人皆のフィリスねーさん評だ。
残念ながら、俺もそう思う。
と、言いたいところだけど……
俺の目から見ると、フィリスねーさんのそれは、忘れている、ではなく、
ともあれ、数年ぶりに開催されたというスキル確認の儀式は無事に終了し、シシェーリス確認官はお礼とお布施を手にして、にこやかに挨拶してから帰っていった。
なお〈拳法〉が出たのは、俺より二つ年上の、村長さんちの次女だったので、本人共々、見なかったことにする宣言が家族一同から出された。
「……〈囲い〉」
くるりと地面に、灰色の丸。
これを毎日、気が向いたときに繰り返す。
ひとつ作って、数分待つと、丸は消える。
そうするとまた、スキルが使えるようになる。
つまり、リキャストタイムがあるタイプのスキルなわけだ。
俺は前世では小説を読んだりは、さほどしてなかった。
短編だと異世界転生ものって意外と少ないからね、そこらへんの知識はあんまりない。
但し、ゲームは学生時代のオンラインゲームから、小説以外の隙間時間潰しのお供のソシャゲまで、あれこれ手を出していたクチだ。
なんでスキルだの魔法だのに関しては、案外と知識の引き出しが多い、ってわけだな。
この世界の場合、人類の使う魔法というのはスキルを介してしか使えないものだ。
無論、人間以外、具体的には魔物や精霊や神獣、または神様の眷属、御使いに関してはその限りではないそうだけど。
魔力というものは、直接観測はされていないらしい。
けど、スキルを使いすぎると、疲れる。
なので、見えない何かを消費しているらしい、ということだけは、スキルを使う人間は誰でも知っているし、それに対する名称も、ある。
で、その疲れは試行回数を増やし、スキルを熟練させていったり、そうじゃなくてもシンプルに大人へと成長することで、軽減される。
なのですべてのスキル持ちは、スキルが育つ育たないに関わらず、使うと決めたら練習あるのみ、だ。
……フィリスねーさん、使う気ねえんだな。練習している気配すらない。
今日も俺の練習風景をにこにこ眺めているだけだ。
って、そうだ、フィリスねーさん、料理できない人だった。
この世界、料理もスキルを持っている人が作るほうが、ほぼ確定で旨い。
フィリスねーさんちの場合、なんと、お母さんとねーさんの弟のロヴァルタにーさんが調理系のスキル持ちだ。
そう、フィリスねーさんちは、村に一軒しかない居酒屋兼食堂だ。
なお、宿泊施設は付属していない。
この村に泊りがけで来るのは、行商人と教会関係者だけだから、商売にならないのさ。
行商人はだいたいの場合、男爵家の下屋敷でお世話になっている。
辺境のド田舎の村まで回ってきてくれる行商人は、村の経済の生命線でもあるから、大事にされているんだよ。
行商人が持ってこないようなものは、隣の領主の住む領都まで買いに行くしかない。
コルモラン男爵領には、領都と呼べるような大きな街はないからな。
これはこの大陸だと普通のことだ。
領都と呼べる規模の都市を配下に収めているのは、基本的に伯爵以上の、その中でも規模の大きな貴族だけ。
近隣最大の都市、ポデントスを領しているのは、パートリッジ侯爵家。
国内でもかなり有力な大貴族様だよ!
寄り親制度はないけど、パートリッジ侯爵家はコルモラン男爵家には結構良くしてくれているらしい。
……たぶん自分でこのド田舎を領有するのは割に合わないから、だろうなあ。
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