秋を俯瞰
@Aoi_sheside
第1話 秋の終わりを見上げていた
サークルを抜ける少し前。最後の仕事。
会場の中心部に設置された小さなイルミネーションタワー。その警護と、学祭内で行うサークル企画。それが僕の最後の役目だった。
担当は、2人で回す。相方は、つかみどころのないけど、僕とは正反対にハキハキした人だった。僕らは、特に仲が悪かったわけではないが、男女であることでやりにくさはあった。
僕は既に付き合っている人が居たけど、学内には内緒にしていた。勿論、色々と詮索されたくなかったからだ。
相方とは、それまではサークルの仕事や、他愛ない話をしていたが、ある日相方が余所余所しくなった。
理由はなんとなく察した。
彼女は、他サークルの一人に片想いをしており。僕と仲良くしていることが不都合だった。大学祭が一つのターニングポイントだったのだろう。
また、僕のサークルの仕事をやり切りたいという強い思い。それが彼女にプレッシャーを与えたことも一理あったろう。
最たる原因は、ジンクスだ。サークル内で一緒に行事を担当した男女が結ばれるとかいうしょうもないやつ。相方からすれば、僕とジンクスを否定したいのは言うまでもなくだった。
イルミネーション警護中に彼女は、ちょっとだけ用事と、持ち場を離れて行った。遠目に見えたカップル。それは、他人の告白シーンだった。
まんざらでもない顔で戻った相方をみて、おめでとうって思いながら、僕はイルミネーションの頂点を見上げていた。
同時期に中学校時代の縁も断ち切れていたこと、サークル内で本当の目標がわからなくなっていたこと。
とにかく人に気を遣うことに疲れた僕は、サークルを辞めることを決意した。
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