エピソード 2ー5
アマリリスのモチーフ武器の入手方法。
ゲームではガチャだったけど、この世界にそんなモノはない。つまり、資源を使って製作するのが自然なはずだと、セフィナにアマリリスの武器の制作を依頼した。
そうして一息、俺は基地の中を散歩することにした。恐らく、レンは幾度となく歩いたであろう基地の中――だが、レンに転生した俺が歩くのは初めてだ。
ヴェルターラインが建てられているのは街の外、荒野にそびえる基地というのは知っていたのだが……これはもはや基地と言うよりも、一つの街の形を成していた。
ガチャキャラである魔装兵を筆頭に組織された、魔装部隊に護られた塀の中、逃げ延びてきたMAHS患者達が様々な仕事に従事している。
その基地は、俺がレベルを上げまくったので設備が充実しまくっている。基地の中はもとの世界にも負けず劣らずの生活水準を保っており、ショッピングモールすら存在している。
「……これ、レベルを上げるための資源集めがすっごい大変だったんだよな」
俺はショッピングモールを見上げながらぽつりと呟いた。
この世界、旧アーキライン文明の方が技術は発展していた。いまの時代にある技術の大半はそれらの模倣で、中には遺跡から発掘した道具をそのまま使っていることもある。
たとえば、ショッピングモールを建築したのは期間限定イベントだった。旧文明の遺跡に潜って、様々な遺物を持ち帰り、ショッピングモールを建築する、という内容だった。
ゲーム的には、ユニットの疲労回復速度が上がるという効果しかないのだけれど、現実となったいまは様々な商品が取り扱われている。
苦労して建てた甲斐があったというものだ。
もしも設備のレベルを上げていなかったら、戦前くらいの生活を強いられていただろう。それくらい、この世界は地域によって技術の格差がある。
「ショッピングモールを見上げてなにをしているのよ?」
不意に腕が絡め取られた。二の腕に伝わる柔らかな感触。見れば、ドレス風の戦闘服を身に纏ったレーネが、俺の腕を抱きしめていた。
「レーネこそ、今日は買い物か?」
「ええ、リーシアと一緒なのよ」
「え? あぁ、リーシア――」
振り返ると、そこには珍しく私服姿のリーシアが立っていた。
彼女はコルセット風のブラウスの上にジャケットを羽織り、下は膝上丈のスカートで、ガーダーで吊したストッキングを穿いている。
今日のリーシアはひときわ可愛らしかった。
「マスター、こんにちは。その……この服、変じゃないですか?」
「まさか、よく似合ってるぞ」
「えへへ……嬉しいです」
ぽつりと呟く感じが可愛すぎる。
「この子、マスターを誘おうとしたら留守だったって嘆いていたのよ」
「レ、レーネさん、それは言っちゃダメです!」
「もう遅いのよ」
レーネがクスリと笑う。
そして恥ずかしそうにうつむくリーシアが可愛すぎる。だが……そうか、俺と会うつもりで、その可愛い服を選んだのか――と、そんなふうに思うとニヤけそうになる。
すると、俺の腕を掴んだままだったレーネに腕を抓られた。
「マスター、私にも言うことがあるはずなのよ?」
「いや、レーネも似合っているが……それはいつもの戦闘服だろ?」
「マスターは観察力がなさすぎなのよ」
「ふむ……」
どこかが違うんだなと、レーネの服装を見返す。黒を基調としたゴシック調のドレス。それほど装飾は華美ではなく、チェックの柄が上手く使われている。
その服を着こなすレーネは可愛いが、正直いつものデザインと違いが分からない。
……髪を切った訳でもないだろうし、リップは……してるかもだけど、それはいつもだろう。サイドツインを縛るリボンもいつもと同じように見える。
「ダメだ、わからん」
「マスターはダメダメなのね。今日、帰るまでの宿題にしてやるのよ」
「帰るまで?」
「私とリーシアの買い物に付き合え、なのよ」
レーネがそう言って俺の腕を引く。そうして彼女に押しつけられた腕にずっと柔らかい感触が当たっている。それに抗えるはずも……いや、抗え俺。
手を出している二人とデートなんて、修羅場まっしぐらだぞ。
「わ、私も、その……マスターが一緒だと嬉しいです」
リーシアに言われたら仕方がないと、俺は二人と買い物デートをすることになった。
決して、レーネの胸の感触に負けた訳ではない。
という訳でやってきたショッピングモール。
ヴェルターラインのお店はすべて直営店となっている。その二階にある衣類関連のフロア。俺はリーシアとレーネに腕を引かれ、女性モノの服を取り扱うショップに連れ込まれた。
「いやいや、女性向けのお店に俺がいたら迷惑だろ?」
「大丈夫ですよ、マスターなら」
「ここのCEOがなにを言ってる、なのよ」
だが――と周囲を見回すと、こちらの様子をうかがっていた女性の店員がやってきた。
「ようこそいらっしゃいました、レン様。今日はお二人のお買い物ですか? どうぞ、心ゆくまでご覧ください」
「……ああ、そうさせてもらおう」
店員がそう言うなら断る理由もない。そうして、俺は二人の服を選ぶことになり――
「マスター、どっちの服を着た私としたいですか?」
「マスター、どっちの下着を脱がしたいか選べ、なのよ」
互いには聞こえていない、俺にだけ聞こえる囁き声で問い掛けられる。これは決して買い物デートなんて生やさしいものじゃない。バレたら破滅の修羅場デートだった。
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