第2話ドラゴン討伐はしていません。勝手に死んだだけですから。いや、本当に。
朝の光が眩しい長屋で綺麗なエルフさんと一緒に目が覚めた。『おはようアリエル』『おはよう芙美』『まずは朝御飯にしようか』そういって昨日の帰り道スーパーの特売品セールで買ってきたのを出す。オニギリをいくつかと昼めしも夕めしも買ってある。『いただきます』ふたりで声を合わせて言う。『何これ、美味しい!』アリエルがオニギリを頬張る。『それはツナマヨだね。日本では定番の具なんだよ』そう言う俺は種有りの梅オニギリを頬張る。この酸っぱいのがまだエルフさんには早いかなって思ったからだ。アリエルが続いて鮭オニギリを頬張る。『何これ、これも美味しいんだけど!』そりゃそうだ。『これも日本では定番の具なんだよ』『ふーん!貴方の国の食事のレベルの高さは見習わないといけないわね!!』『そりゃどーも』俺は昆布のオニギリを頬張りながら答えた。『さて朝飯も食ったし。ギルドでも行って任務を探してこよっかな』そう言うと立ち上がり89式小銃とMINIMIを担いで長屋を後にしようとする。すると『まってアタシもいくわ』えっエルフさん冒険者登録して無いよね?そんな表情でアリエルを見る。『こう見えてもアタシ、エルフ大学で教授を務める程の腕前よ。冒険者登録したってすぐAランクに昇格してみせるわ』そうなんだ。大学の教授って何を教えてるのだろう?まぁ
良い。『じゃあ一緒に行こっか』アリエルとふたりでギルドへ向かう。すると受付嬢のニンフィアちゃんが不機嫌そうに応対してくれる。『芙美さん、なんですかお綺麗なエルフさん連れて』ははーん。もしかしてヤキモチ焼いてるのかな?『いや、色々あってさ。冒険者登録お願いしたくって、良いかな?』『どうぞご自由に』なんだか妙に不機嫌だな。やりづらい。アリエルの冒険者登録を始めたニンフィアちゃん『こちらにお名前とご住所、生年月日をお願います!』『次に魔力測定をします。こちらの水晶に手をかざしてください』するとパリーンっと何故か水晶が割れてしまった。何だ何があったんだ?ってか俺はこの魔力測定でほとんど魔力が無かったから現代社会の武器に頼る事になるわけだが、水晶が割れてしまったって事はそれだけ凄い魔力量って事か?ニンフィアちゃんが青ざめて『しょ、少々お待ちください』と言い残してバックヤードへ向かった。どうやら上の人に言いに行った様子。俺はアリエルに話しかける。『水晶が割れてしまったって事は物凄い魔力量ってことなのかい?』『当然よ。こんな安物でアタシの真の魔力量なんてわかるはずがないわ。エルフ大学の教授をナメないで欲しいわね』ほぉーそりゃ凄い。ニンフィアちゃんが上の人と一緒に戻って来た。『失礼ですが、エルフ大学の教授様ではありませんか?』『いかにもエルフ大学の現役教授だ』『それは申し訳ありません。すぐにAランクで冒険者登録をさせて頂きます。もうしばらくお待ちを』『芙美は冒険者ランクはいくつだ?』『?Cだけど』『なら私もCランクからで良い。芙美とは同じレベルであると思っているからな』『承知致しました。でも本当に宜しいので?Aランクなら受けられる任務も幅が広がりますよ?』『いや、良い。必要ならばこれからあげていくまでだ』そう言うとCランクの冒険者証をつくってもらって俺に嬉しそうに見せてくる。『ねぇねぇ、見て見てCランク。芙美と一緒♡』何故にイチャついてくるのか?ニンフィアちゃんがまた不機嫌になるではないか。『芙美さん』ニンフィアちゃんが不安そうな瞳でこちらを見てくる。『あっ!ありがとうねニンフィアちゃん色々と迷惑かけちゃって』『いえそんな事ありません!』と全力で否定しつつ、アリエルに対して畏敬の念を抱いてるのがわかる。さて、何か良い任務はないかしら?ニンフィアちゃんに聞いてみる『芙美さん達はCランクですから…いや、でもAランク相当ですから…いや、でも』『結局どんなのがあるわけ?』『あっ!昨日入荷した任務でドラゴン調査の任務依頼が来てます。山の奥深くに最近ドラゴンが住み始めたとの事で近くの村が焼き討ちにならないか心配してるそうです。もちろん国も動いてはいますが、いかんせん組織が大きい分対応も遅れがちでして…』『それいいじゃない!それにしよ芙美』アリエルが言う。『無茶だよ。流石にドラゴンはまだ早いって。ホフゴブリンでさえあの有様だったんだぜ!もうちっと簡単なものから始めない?』『アタシこう見えても強いのよ?ホフゴブリンの時は確かに油断したわ。でも魔力量が高いので魔法が使えるのと、近接戦闘もある程度出来るのよ。』『そこにあなたの遠距離火力が加われば怖いものなんて無いわ。』『と言う事で受けるわ、その任務』何が、と言う事でだ!あーぁ、知らないよ死んじまっても。俺は多分死んじまったら現代に戻るだけ。んでまた寝たらこっちの世界に来るから、いわゆる無敵モードが使えるけどアリエルはそうは行かないだろうに。まぁでも仕方ない。『おっし!いくかぁ!いざドラゴン調査』こうしてギルドを後にして山へと向かう。現在時は0900。1900には帰ってきて寝たいから1700には切り上げて撤収しよう。そう伝えるとオッケーとばかり右目でウインクをしてきた。カワイイ。さて弾はいくつ残っているのか?100発リンクがあと3つと30発入り弾倉が3つフルで残っている。これだけあれば十分か。ドワンゴ爺さんのとこへは行かなくても良いか。そう思いながら『馬を調達しない?歩くよりもずっとましな気がするんだけど』『そうねぇ、じゃあレンタルしてく?』そう言って街のレンタル馬屋さんに行って2頭程馬を借りた。昔で言う騎馬鉄砲隊だな俺!なんかカッコイイかもと自分自身に酔い痴れてると山道に入る。今の所、モンスターの影はない。しかし此処には世にも恐ろしい山賊が巣食って居たのであった。山賊頭のモーティマは暇を持て余していた。するとそこへ見張りの子分がやって来て、『親分、大変です。久しぶりの通行人です。しかも奇麗なエルフさんも一緒です』それを聞くやいなやモーティマは『行くぞ野郎共!久しぶりの大金持ちだ』まだ金持ちとは決まったわけではないだろうに‥。深い谷のような地形に差し掛かった時モーティマが2人の前に立ちはだかる。『ようよう兄ちゃん達、ここを通りたきゃ出すもんだしな』『はぁ?なにいってんの?あんた達にビタ一文払うつもりはないね!』アリエルが応える。『それじゃ仕方ねえ!野郎共、やっちまいな』あぁーマジかよ!人だけは撃ちたくないんだけどなぁ。仕方ない足とか腕とか狙って撃つしかないかぁ。でもやっぱ人に向けて撃つってのは抵抗があるなぁ。などと考えてるのも束の間。エルフ大学の教授様の魔法攻撃が鬼の様に山賊を蹴散らしていく。火の玉、氷の柱、稲妻と思わずおぉファンタジーっぽいと思わずにはいられない。逃げようとする山賊頭を生け捕りにしたアリエルが『あんたらこそ出すもん出してもらおうか』などと脅している。山賊頭のモーティマさんが渋々懐から現金を出すと『たりないなぁ〜!まだどっか隠してるんでしょう?』と末恐ろしい事を言う。山賊頭のモーティマさんが泣く泣く現金を持ってきた。アリエルは満足そうに『まっ、いいわ許してあげる。その代わり二度と山賊なんてするんじゃないよ。これからは真っ当に生きていきなさい。次に山賊なんてしてるの見かけたらただじゃおかないからねぇ!』アリエルが凄んで言うと山賊達はてんでバラバラに逃げて行った。『さっすがエルフ大学の教授様だね。魔法ってやっぱり凄いんだね。』『まぁね。あれ位は朝飯前よ。もっと強力な魔法も有るんだけど、あいつ等にはこれ位で十分』さてそんなこんなで時刻は1200『アリエル、もういい時間だからここらでお昼にしない?昨日スーパーで買った焼きそばがあるんだけど』『ヤキソバ?なにそれ?美味しいんでしょう?』『まぁね。冷めても美味しく頂けるものといえば焼きそばかな?って思ってさ。はいアリエルの分』そう言って渡すとアリエルは目を輝かせて焼きそばを見つめる。『あぁ〜!もう香りがたまらないわ。早くお箸を頂戴』『はいお箸』アリエルが一口食べる『んん〜たまらないわね。この美味しさ。この赤いのはなにかしら?』『あっ!それは紅生姜って言って好き嫌いが別れる食べ物なんだけどとりあえず一口食べてみて駄目そうだったら俺がもらうよ』そう言われてアリエルが紅生姜を口にする。『うーん、確かに美味しくはないけど…』『やっぱり無理だったみたいだね。おれが貰うよ』そう言ってアリエルの焼きそばに箸を伸ばした瞬間、『いや、やっぱりアタシのヤキソバだからアタシが食べるわ。紅生姜も合わせてヤキソバなんですもんね』おいおい無理すんなよ。そう思いながら二人で『ご馳走さま』を言う。『頂きますに、ご馳走様なんて、大分日本の文化に慣れてきたみたいだね』『あら、そう?まぁ郷に入っては郷に従えって言うじゃない?』『それ日本の諺だと思ってた。こっちでも言うんだ?』『エルフ大学の教授様よ?これ位知ってるわ』なんだかあんまり答えになってない様な?さて昼めしも食べたし行軍再開。時刻は1500になった頃合い。大分山の奥深くに来てしまった。ここからはいつドラゴンが現れてもおかしくない。馬を降りて慎重に進む。するとアリエルが何かを感じ取ったのか『芙美、ここから先は何かいるわ気をつけて』言われて89式小銃を構えて進む30発入り弾倉をセットし槓悍を引く。カシャーンと弾が装填された音が鳴り響く。この音を聞くとあぁ戦闘が始まるんだなと実感する。89式小銃を構えながらアリエルの後ろを前進する。すると、道の先に広くなった場所が現れた。その広間にポツンと一つの影がある。ドラゴンである。『でっけぇー!!!』『しっ!バレたら襲って来るわよ』アリエルに注意された次の瞬間、ドラゴンが卵を産んだ。産卵中のドラゴンなんて初めて見たかもしれない。一つ二つ三つ目の卵を産んだ所で、力尽きたのか地面にへたり込んでしまった。近くまで行って調べて見る。すると親ドラゴンの方は力尽きていた。卵の方はと言うと『あぁ~、この二つは駄目ね。』既に殻が割れている。産み落とす際の衝撃に耐えられなかったのであろう。『けどこっちの一つは大丈夫そうね、持って帰って温めましょう。私達が親代わりになるの』『えぇ~、ドラゴンの親代わりって無茶な!しかも普通に孵化させるつもりなのか』『当ったり前よ、こんな機会二度と無いわ大学に戻って研究しなきゃ、これは良い論文がかけるわよ〜、ね芙美アタシがちゃんと育てるから良いでしょ?』そう言われてもである。『それは良いとしてこのドラゴンの死体と殻の破れた卵はどうするの?』『ドラゴンの肉はとても美味しいのよ。私も食べた事ないんだけどね。あと殻の破れた卵は卵焼きか目玉焼きにして美味しく頂きましょう!早速持って帰りましょう』『どうやって?馬2頭じゃ持って帰れないよ』『心配御無用、ストレージ袋があるわ私のは大学の奴だから収納容積も大きいのドラゴンもほらスイーっと入っちゃう。良いでしょう!じゃあ生き残った卵は温めながら帰るとするわ』そう言って自分のマフラーを卵に被せて温め始めた。ギルドへ向かう道すがら、山賊頭のモーティマさんが再び現れた。『何の用?またブッ殺されたいワケ?』『とんでもない。さっき見ちまったんだ。あんたらがドラゴンを倒している所を』ん?俺たちは戦ってないんだけどね。ドラゴンが勝手に死んでくれただけなんだけどね?『あんたらに惚れた。今日から俺たちはあんたらを頭として生きていきたい』何を言い出すんだコイツらは?『頼む!俺たちは腕っぷしの世界で生きてる。やられたからって恨みになんか思っちゃいねぇよ。ただ強いヤツが頭を張る。そんな単純な世界で生きてるだけなんだ』アリエルが頭を抱えている。同時に俺も目頭を押さえている。こんな山賊共を抱えて生きていけるわけがない。アリエルにどうする?と視線を送ると『駄目だよ。アタシたちは頭とかそういうの柄じゃないから。でもどーしてもって言うんなら、あんたら冒険者に登録しな。冒険者同士ならパーティーも組めるしうちらと共同でなにかを成し遂げるチャンスもあるかもしれないしね?』そう言って俺の方をみる。『アリエル、マジで言ってんの?俺はコイツらとツルむ気はサラサラないよ』『でもこうでも言わなきゃコイツらも納得しないよ。』『そりゃそうかもしれないけど………』モーティマさんが再び言う『んじゃあ分かった。明日にでも冒険者登録に行くから俺たちはあんたらを頭として認める。冒険者として俺たちを率いてくれ』そう言ってまたどっかへ行ってしまった。時刻は1630、1900まであと2時間30分とりあえず急ごうアリエル、明日の出勤に間に合わなくなっちまう。そうして馬を走らせる事約1時間30分、ようやくギルドに戻ってきた俺たちは周りから称賛された。そりゃあそうだ。なんせドラゴンまるまる一匹ゲットした上に卵まである。ギルドに併設されている酒場のシェフが、取り急ぎドラゴン肉のステーキと目玉焼きに卵焼きを作ってくれた。これがまた美味いのなんの。こっちの世界にきて初めてまともな食事をしている気がする。ドラゴン肉のステーキは口の中でトロける様な感じで柔らかくジューシーな感じで物凄く美味い。卵焼きはフワッフワなんだけど甘みがあって物凄く美味い。目玉焼きは黄身を固めで焼いてもらったんだが、何というか白身も黄身もホクホクしてると言うか何というか。とにかく美味い。いつの間にかドラゴンを倒したって事になっていて、否定するのに時間が掛かったが、Aランク昇格の話も再燃しちまって超面倒くさい展開に。そうこうしてるうちに1900になってしまう。俺は急いで寝る支度をしてベッドにはいる。すると何だか温かいものが二つ背中に当たっている。アリエルのおっぱいだった。また来るのかアリエル、懲りないなお前も…こうして俺はまた眠りについた。そして現代社会に戻って行くのであった。
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