Re:天地魔界の戦乙女 -少女達が守る礎-
茶巾まる
プロローグ
周囲は日が落ちてから眠りにつく深夜。
市街から離れ人工的な光か全く届かない漆黒の闇の空に夜間飛行の航空機と間違えるような赤色灯を光らせ何かを運搬するように飛行物体が空を飛翔している。
同時刻のとある山中
風が山中の木々を揺らしてまるで波音のような音を響かせている山脈の一角にある切り立った岩肌、広い平地の中心に真蒼に塗られた人の姿らしき物体を僅かに流れこむ月明かりが映し出す。
その姿は人間より一回り大きい。
頭には両耳から空に向かって直線的に伸びる羽のようなアンテナを備えたヘルメットを被り、背中に戦闘機のジェットエンジンと似た形状の飛行ユニットと小さめの翼が見える。
更に左腕には上半身を覆えるほどの巨大な盾。
身体から足にかけては中生代の騎士甲冑にもよく似たデザインの姿だ。
甲冑を纏いし人物は眼の部分を覆っているゴーグルに表示された情報を静かに眺めている。
不意に何かに気付いたかのように、その人物は少しだけ頭を空に向け話しかけた。
「そちらの様子はどう?」
声の状態から話しかけたのは明らかに若々しい少女。
しかし口調は幼さを感じさせない落ち着いた風格を醸し出している。
自信に満ち溢れた喋り方で凄く落ち着いた感じだ。
先ほどの問いかけから少しだけ時間がかかる。
声を掛けた人物とは対照的に少し可愛い小さめな声で返事が帰ってきた。
「…まだ見えない」
先ほど少女が見上げた遥か上空に丸く光り輝く円が見えた。
そこには足に地を付けるが如く何もない空中に立っている。
まるで地面が存在するかの様に一人の少女が足の下に表示された魔法陣と思しき光の輪の上に直立していた。
地上にいた人物とは打って変わって空にいる少女はまるでゲームの中から抜け出してきたような姿で魔法使いとも言える風貌の三角帽子似た物を深々と頭に被っている。
全身を白色でコーディネートされた洋服を着て肩から胸にかけてプレートの様な鎧を装着し両手には肘まであるグローブを装着している。
右手には六角錐の赤い宝石が埋め込まれた三日月状の羽に装飾された長い杖。
背中には光の線で描かれた幾何学模様が刻まれた大きな光る四枚の羽を広げている。
魔法使いと表現したがどこかその姿は近未来的な風貌をしている。
地上にいる少女は空に待機している人物に対し更に話しかけてくる。
「まあ、あちらはあれでも隠密行動しているからそう簡単にはレーダーの網に掛からないわよね、ステルス機能もあるようだし」
今の口調から何者かがこちらに向かっていることを二人は既に察知して待ち構えているような雰囲気だ。
「まったく、こんな深夜に出動させるなんて安眠を妨害しているとしか思えないわよね、睡眠時間が短いと肌も荒れるし良いこと無いから深夜手当でも貰わないと割にあわないわ」
地上にいる少女は話を続けるが相手は無言で反応を示さない。
反応が薄いのを理解しているのか、お構い無しに一方的に喋りかけて満足したのかそのまま静寂が戻り静かに時間が流れていく。
しばらくして山々の静寂を喧騒の中に飛び込むほどの警告音が鳴り響く。
地上にいる人物が装着した甲冑から機械的な女性の声で遥か遠から近づいて来る敵の存在を伝える。
『─警告、上空300メートルで接近する物体を確認…エコー反射波からDA-11型輸送機と思われます…下部にはDG-02型歩行兵器を搭載…両機とも共に30機と予測』
時を同じくして先ほど空を飛んで何かを運搬していた飛行ユニットが合体していた下部のコンテナを地上に落下させた。
地上に降りたコンテナが分解し、中から人形をした二足歩行の機械歩兵が現れる。
部隊は赤外線のような赤い光を放ちそのまま、背中のエンジンを吹かし目的地に向かい僅かに空中にホバージャンプして進行を開始する。
地上にいる少女は、先ほどの警告音と状況説明を確認しながら空で待ち構えている人物へ問いかける
「やっと来たわね、今の説明聞こえた?」
その声に呼応するように空に浮かんでいた少女も遠くの空から赤い光を放つ飛行物体が接近してくるのを肉眼で確認し静かに返事をする。
「…聞こえた、射程距離外で陸戦機の切り離しを確認」
その返事を聞いてやっと来たかと言わんばかりの微妙な笑みをバイザーの隙間から覗かせ待ってましたと言わんばかりに両手を眼の前で叩く。
「状況は IRIS (アイリス) が伝えた通りだけど少し多いわね、やれる?」
地上の少女からの問に対して少し間を間を空けてから静かに返事を返す。
「…多分問題ない」
少しだけ不安げな声に聞こえたのか相手の返事に激励を出す。
「まあ、あなたなら大丈夫よ、空中戦に関しては私より強いのは実証済みだからね」
地上にいる少女はそう言いながら右腕を上に折り曲げ勢い良く振り下ろす。
すると右腕から光り輝く剣と思われる武器を出現させて同時に背中から空へ飛び立つ戦闘機のように轟音を鳴り響かせ始める。
「準備はいい?」
「…いつでも」
「じゃあ、さっさと速攻で全機沈めて帰るわよ!!」
戦闘機のような轟音をなびかせ二人の少女が接近してきた赤い光の集団に向かって突進していった。
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