第29話 対ルドルフ戦2
「え?」
「はあっ?!」
ルドルフ兄さんの剣を受け止める、僕に突き刺さったままの剣。それは、まるでエリフォナの様だった。その数、4本。
そうか、これは僕が僕を嫌いで、自分自身を責める心。誰かに認めて欲しいと望む、承認欲求の具現化。
そして1本の鎖が横薙ぎに奔り、ルドルフ兄さんを弾き飛ばした。
「ぐあっ?!」
いつの間にか、左手にノアみたいな鎖が巻き付いていた。
ノアほどの量は無く、1本だけの鎖。これは、僕が誰かに縋りたいと感じた心。誰かに存在を預けたいと望む、依存心の具現化。
「あ……」
そして気がつけば、微かにきらきらと輝く光が僕を取り巻いていた。
ティミナ程じゃないけど、溢れ出す光魔術の煌めき。これは、僕が自分を偽り大きく見せたいと感じた心。誰かに望まれたい満たされたいと焦がれる、虚栄心の具現化。
「そうか、これはみんなの力……。みんなと繋がる心の力……」
目を閉じると、エリフォナから、ノアから、ティミナから、温かいものが流れ込んでくるのを感じる。
お互いに認め合い、肯定し合い、信じ合う心の力。
「これが、覚醒スキル『盲目礼賛のオーバーライド』の真の力なんだね……」
僕はみんなに助けて貰ってばっかりだ。
でも、それでいいのだろう。僕達は独りじゃない。時にはダメな部分が暴走したりもするけれど、認め合い、助け合い生きていくんだ。
呆然とこちらを見つめるルドルフ兄さんに、宣言する。
「僕はもう、負ける気はしないよ」
僕からずるりと抜け出した4本の剣が、宙に浮きルドルフ兄さんに剣先を向ける。
両手の中の折れた剣を捨てて手をかざすと、その中の1本が僕の腕の中に収まった。
……不思議な感覚だ。まるで自分の手足のように動かせる。頭上の3本の剣はルドルフ兄さんに狙いを定めたままくるくると周り、左腕に巻き付いた鎖は狙いを定める蛇のように切っ先をもたげていた。
「な……なんだよそれ、なんなんだよ、それは!!」
ルドルフ兄さんが、こちらを指さし怯えたように叫ぶ。
これが何かって? 決まってるじゃないか。
「僕とみんなの……心だよ」
頭上の3本の剣が、ルドルフ兄さんに向かって降り注ぐ。
「くそっ、意味分かんねぇ!
兄さんの剣が煌めき、刀身が半月状の光の帯を描く。
その攻撃で砕け散る、僕の放った3本の剣。
あれ、意外ともろい?
でも、問題ないさ。
再び僕から3本の剣が溶け出すように生まれ、再び飛んで行く。
「なんだそりゃ?! 卑怯だろ、それは!」
襲いかかる3本の剣を、転がるように避けるルドルフ兄さん。
そして、起き上がると一気にこちらに踏み込んでくる。
「だが、近づけばこっちのもんだ!!」
電光石火の踏み込みで迫る、兄さんの剣。
僕にはあれを避けるのは無理そうだ。
だけどね。
じゃらららららら――
左腕の鋼鉄の鎖が奔る。
一本だけだけどどこまでも伸びるその鋼は、ノアがしていたように僕を球状に包み込んだ。
がきいんっ、っと弾き返されるルドルフ兄さんの剣。
ノア同様防御に秀でたこの鎖は、そう簡単に破れはしない。
そして――
「
左手の人差し指をかざし唱えると、そこから一条の光が放たれる。
初級だが、光属性の攻撃魔術だ。ルドルフ兄さんの脇腹を貫き、鮮血が飛び散る。
あまり攻撃力は高くない魔術だし、傷も浅い。そこまで深い傷ではないだろう。だけど、そのダメージ以上にルドルフ兄さんの動揺は激しかった。
「魔術?! 今度は魔術だと?! どうなってる、どうなってやがる!!」
ぽたぽたと血を流す脇腹を押さえ、吠えるように叫ぶルドルフ兄さん。
そこからは、動揺と混乱しか感じ取れなかった。
一方、僕の方は落ち着いていた。
形勢が有利になったから、というのも勿論ある。だけど、みんなとの繋がりを感じられるのが何よりも大きかった。
僕は独りで戦っているわけじゃないから。
「くそっ! くそっ!! クズのくせに、無能のくせに!! どうして、どうして俺が!!!」
混乱のまま、剣を振りかぶり突っ込んでくるルドルフ兄さん。
型も何もない、動揺したまま破れかぶれに振るわれる剣。
悪いけど、そんな物に負ける気はしないよ。
左手の鎖が横薙ぎに奔り、兄さんの腹部を打ち付ける。
「か……はっ?!」
そして宙に浮かぶ3本の剣が、体勢を崩したルドルフ兄さんに向かって降り注ぐ。
ぱあっと、鮮血が舞う。
兄さんの腕から剣がカランと零れ落ち、どしゃりと膝をついた。
地面に崩れ落ちる、その姿を見て思う。
ごめんね、ルドルフ兄さん。
はっきり言えば嫌いだ。でも兄さんにも不満とか葛藤とか、ままならない事情があることを知った。それにそもそも、ルドルフ兄さんのことは嫌いだったけど、殺してやりたいとか貶めてやりたいとか思ったことはない。
僕とは関わらずに別の場所で、兄さんなりに楽しく過ごしてくれればそれで良かった。
だけど、多分もう――
どさりと崩れ落ちたルドルフ兄さんを見つめて、そんな事を考えていた。
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