II-7

 放課後、彼女はここにくるような気がした。

 階段を登り切った先に自分の作品があると、不可抗力で立ち止まってしまう。一体、この青のどこがライフルなんだと、やはり意味不明である。

 例えば、青の中での無秩序を表現するのであれば、ライフルよりもマシンガンが適切か。それでも野蛮さの違和感は拭えない。単純に、ライフ・イズ・ビューティフルになぞらえての命題だろうか。ライフ/生命と聞くと、どちらかというと情熱的な赤のイメージが出る。ライフルなどの攻撃的な言葉から連想される色も、俺の中では赤や黄色など、爆発や血液を関連づけられる色。自分の脳みそが、まだ手前の方で止まっている気がした。

「高尾...」

 急に後ろから声がし、「ひああ!」と情けない声をあげてしまった。それに釣られるように、相手も「あああ!」と慌てる様子を見せる。そこには、目当ての女生徒が立っていた。おかっぱの髪の毛で身長は低い。目尻がつりあがった、凶暴な猫のような、大きな目が特徴的だった。女性にしては声は低めであり、いわゆるハスキーボイスだった。

「ご、ごめんなさい。急に、話しかけて。」

「ああ、いや。全然。」

「高尾、宣隆さん。」

「はい。そう、です。」

 ぎこちなさすぎる。まさか、彼女の方から話しかけてくるとは思わなかった。彼女はずっと俺の足元あたりを見ていて、全然目が合わない。と、思っていたら、途端に意を結したようにキッと俺の顔を見てきた。

「申し訳、ご、ございませんでした!」

「......えっと」

「絵の題名を、許可なく付けたのは、わ、私ですきっと、高尾 宣隆さんにとって。とって、あれは、たぶん意味のある、く、空白で....」

 彼女は目を泳がせながら話す。俺に話していると言ってもいいし、独白と言ってもいいような仕草だ。変なところで言葉を区切るため、独特のリズムがあった。緊張が嫌でも伝わる。

「全然、納得でき、できなければ。変えてください。変えてい、良いです。そうしてください是非。ただ、えっとただ。」

 彼女はまた、ぐっと俺の目を真っ直ぐに見て、淀みなくはっきりとこう言い放った。

「ただ伝えたかった!あなたの絵は、最高に美しい!!」

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