II-4
樋口 宏美
全校集会の表彰式で、あの作品名が読み上げられたときは、そんな立場にない自覚はありながらも嬉しかった。体育座りから体を解放し、跳び上がりたいほどだった。そしてその気持ちの中で、しっかりと高尾 宣隆の姿を記憶に留めた。不健康そうな肌、野暮ったい髪、身長は170センチくらい?服装はシャツ。ああ、制服だから覚えても意味ないか。でも、ピシッと着るよりは少し着崩すタイプ....。
「2年C組、2年C組...。」
周囲にバレない様に、かつ、しっかり自分の鼓膜を刺激する声量で呟き、クラスの暗記にも成功した。
幼少期から、周囲と感覚や意見が合わないことが多々あり、積極的なコミュニケーションを避けるようになった。その分、ひとりで読む絵本を好み、特段寂しさを感じることは少なかった。そして、読み物の節々に転がる言葉の持つ力に、気づけば私は捕らえられてしまっていた。言葉が好きなことと、会話が得意であることは別物で、私には一向に仲の良い友達はできなかった。そしてそのまま16年の歳月が過ぎ、今ではこの状況に慣れてしまった。
ということで、誰かに謝罪する事に慣れていない。親や先生など、大人にペコリと頭を下げることはある。コピーライト同好会の掲示物の件で、過去に5回は職員室に呼び出された。その度に口だけの謝罪で説教を切り抜け、忘れたであろう時に再犯をやる。もはやそれは、私の中での密かな楽しみになりつつある。もとい、私は誰かに本気で謝ったことがない。なので、今の私は浮き足立っていた。
周囲がウネウネと立ち上がったことで、起立の号令がかかったことに気づいた。校長先生の話よりも、『2年C組』を忘れないことが重要だった。
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