第5話 (第一次)捕獲成功に到るまでの経緯について②

結果を先に言います。

純情乙女(はい、私鈴木裕美です)と、淫乱肉食系女3人(もちろん恭子、佐保、奈美)の「楽屋急襲作戦」は見事に「空振り」となりました。


それでも、楽屋の前までは行きました。

数名、楽器を持った人(おそらく次のステージの人たち)がいたので聞きました。


「あの・・・田中さんは?」

「え?田中君を探しているの?」(それを聞いている!)


「彼は、そのまま帰ったよ」

「いつも、彼は、すぐに帰るよな」

「そう言えば、煙草嫌いだとか」

(楽屋前の廊下灰皿は、吸殻の山!)(楽屋急襲失敗の主たる原因だ!)


そうかといって、初対面の音楽家を責めることも難しい。

「ここでは、ラチがあかない」、私たち四人は、スゴスゴと、客席に戻ったのです。


気分を変えて、四人で、カウンター席に移りました。

(渋い大人のマスターにネホリハホリしようかと)

(とにかく、もっと情報欲しいから)


マスターは、申し訳なさそうな顏です。

「楽屋まで行ったの?」

「いなかったでしょ?」

「そういう子なんだ、先に言えば、よかったかも」

(おい!あなたも急襲失敗の原因だ!)


「言っていいかな、これくらいなら」(え?何を言うの?)

「そもそも、君たちと、同じ大学だよ」

(えーーー?マジ?)(最初に言ってよ!)

「すれ違うこともあると思うけどな」(はい、今後は見逃しません!)


しかし、その後、大学内で約2か月、田中さんの姿は、すれ違いもなく、遠目でも発見できなかった。

そのジャズバーで毎週金曜日に見て、聴くだけの状態。

(田中さんは、ステージでクラシック、ジャズ、ポップ、ロックを自由自在に弾き、お客様の大拍手を受ける、途端に姿を消す、の繰り返し)


そんな状態に転機が発生したのは、11月の中旬でした。

いつもの4人娘でキャンパスを歩いていた時のこと。


恭子

「あれ?あそこにいるの、田中さんだよね」

佐保

「ああ・・・あれ?隣にいるのは杉田君だ」

奈美

「杉田君って何?」

佐保

「あ、ごめん、高校で同級生、音楽部でも一緒」

私は、佐保に肩をブンとぶつけました。

「じゃあ、その杉田君から、田中さん情報を取って!」

恭子

「元同級生でしょ?それくらい、できるよね」

奈美

「あ、田中さん、バイバイって、スタスタいなくなった」

私は、唇を噛んだ。

「大学でも、逃げ足早いの?」

すると佐保が、恥じらいもない大声。(乙女脱落決定)

「杉田君、こっちに来なさい!」

「ほら、ノロマしない!」


佐保は、相当怖いか、(おそらく意地悪な)同級生だったようだ。

(杉田君は、顏を真っ青にして、我々の前に来た)

(少しお坊ちゃまタイプ、興味なし)


それで田中さん情報が取れた。

(同学年だったので、田中君でもいいかも)

(でも、私は上品な乙女なので、田中さんと呼ぶ)

(田中さんの前でも、杉田さんと言う)


さて、杉田君からの情報では、

「下北沢のジャズバーでライブに出ている」

(それは知っている!それ以外を言いなさい!)

「彼女?・・・一言も聞いたことない」

(4人女は、ニッと笑う)(下心見え見えだ)

「合コン誘ったこともある、でも、嫌がる」

(何で?女性恐怖症かな。逆にそそられる)

「口下手って言っていた」(ペラペラ男ではないのか、いい感じだ)

「でも、骨っぽい、受けた仕事は、完璧以上にやる」

(ほーーー・・・私の気持ちも受けて!)


※(第一次)捕獲成功に到るまでの経緯について③に続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る