第6話 機影捕捉

「天火カイカ博士が回収のためトレーラーに乗って首都へ移動中です、連れ戻しますか?」


 博士につけた監視から、ラムズィのもとへ連絡が入った。また何かしでかすだろうと思って監視をつけていたが、今度は首都へ戻ろうとするとは。何を企んでいるのか。


「まったく彼女は……構わない、放っておけ」

「上空の母艦から、飛行物体が発射されました!」


 叫ぶ下士官の声にラムズィは暗いテントへ走った。


 並ぶ機器のレーダーには一つの機影が映っていた。


 衛星画像を確認すると、先の銀の機体ほどの大きさはある。内部に兵士を乗せていたとしても単騎で侵略するには心許ない。


 彼の命令を待つ下士官に「監視を続行しろ」と伝え、少将は数名の兵に銃を持たせコンテナハウスへと向かった。警備兵は張りつめ、中にいる人間へ警戒をしめしていた。


「彼はいるな」

「はい少将。中でウマル医師が診察中です」


 コンテナの扉を兵士が開け放つと、部屋の主は老医師と茶を飲みにこやかに談笑していた。


「イストレクス君!」


 少将の軍靴が騒がしく踏み入り、和やかな場を壊す。


「少将もお茶をいかがですか?」


 数日見ない間に、すっかり流暢な英語を話すようになっていた。凄まじい学習能力だ。


「話してもらおう、君たちの目的はなんだ?」

「……攻撃が始まったんですね」

「偵察しているようだ。機体はまだ顔を見せていない」


 考え込むように目を伏せた異星の青年に、少将は一歩詰めよった。


「時間がない、答えてもらおう!」


 イストレクスは瞳だけを動かして、威圧する数人の軍人を冷静に観察し、口を開いた。


「焦っていますね、少将。まだ住民が都市に残っているのですか」

「……そうだ。そして首都には、君を撃った天火博士がいる」


 天火博士の名前に、イストレクスは弾かれたように顔を上げた。


「敵機に捕捉されれば住人を含め皆殺しにされる可能性もあるだろう」


 持っていた紙コップを盆に戻し、少将に向かって両の手を見せた。


「拘束を外せとはいいません。僕をそこへ連れて行ってください」

「できかねる相談だ。君を仲間の船へ帰還させるわけにはいかない」


「偵察が出たということは、いずれ機体が降下するでしょう。目的は市民の蹂躙か、私を捜すことか……対抗できる武力と技術を持つのは、私だけだ」


 長い睫毛の下で、オマーン海を思わせるターコイズブルーが輝いた。


「このままでは――国が滅びますよ」




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