最低以下スタートの僕、異世界で“俺”を貫く: 俺だって主人公になりたい‼︎そう心に決めた俺は異世界で最強の英雄になる〜

@DXzirou

プロローグ

第1話 何処かへ続く道

ここではない何処かの公園


ベンチに座る二人。


昼の光が芝生を照らし、

遠くで子どもたちが遊ぶ声が聞こえる



少年が声をひそめて言った。

「なあ、知ってるか?」



少女は少しからかうようにいう

「知らないよ」



「….その返しやめてくれる?正論だけど、調子狂うから」



「ふふっ」



少年は肩をすくめる

「まあいいや、ほら、前に歴史の授業でやった英雄の話だよ」



「知ってるよ、800年前、世界を崩壊から救ったっていう英雄たちでしょ」



「そうそう、その中にさ、最強って言われてた“斧貫の英雄”っていたじゃん

 実はあの人、最初は俺たちみたいな凡人だったらしいぜ」



「ふーん」



少年はちょっと身を乗り出して、にやりと笑う

「でさ、俺思ったんだよ!もしかして俺も英雄になれるんじゃないかって!」



少女は笑いをこらえつつ首をかしげる

「フッ」



「おい笑うなよ!結構真剣なんだけど…」



「ごめんごめん。いきなり変なこと言うからつい。

 「なれるかどうかは知らないけど、目指すのは悪くないんじゃない?応援するよ!」



少年は少し照れたように笑った。

「よし、なら本当に頑張ってみるか!」



昼の光の中で、二人の影が芝生に長く伸びていた。

誰もが知る英雄の話が、

今この瞬間、少しだけ現実に近づいているように思えた――



平和な日常

飽きるくらいに平和だ

だが、その平和は、非日常より勝ち取った平和だ



かつて僕、瓜原颯真かわはらそうまが生きた道も、今となっては物語

今となっては昔の話――



◇ ◇ ◇


いつからだろう。

自分の人生を、自分で「選んだ」と言えなくなったのは。


正確には――


選ばなかったのではない。

選ばずに済む道ばかりを、無意識に選び続けてきたのだ。



学校も、進路も。


気づけばすべて、レールの上


誰かが敷いたのか、

それとも自然に生成されていたのかわからない

レールの上にあった。



敷かれているなら、乗ればいい。


外れなければーー別に転ばない

転ばなければーー別に痛くない

みんなと同じならーー別に怖くない

波風を立てず、摩擦を避けて、無難に進む。


だがそんな人生には内心飽きていた。


でも、失敗するのが怖くてそのままで良いと思っていた。

――まさか進行方向にレールがないとは知らずに。



耳を刺す目覚ましの音で、

僕はまぶたをこじ開けた

白い天井は今日も変わらないはずなのに、

どこか遠く、ぼんやりと霞んで見える


…気がすることにする


僕は瓜原颯真かわはらそうま

気づけば15歳になっていた


特段好きなこともなく

ただゲームしたり宿題したりするだけ


勉強やらスポーツやらなんやらは

いつも大体、中の下ぐらい

そんな人生だ


(……今日は、何か起こるだろうか)



小説みたいな異世界転生。

少年漫画みたいな覚醒イベント。

現実じゃありえない。

分かっている。

分かっているけれど――ありえたら、いいなと思ってしまう。



そんな期待を胸の奥に押し込めて、いつも僕は家を出る



◇ ◇ ◇



「寒っ…もう冬だなー」



朝の空気は冷たく、吸い込むたび胸がひきつる。

通学路を歩きながらも、妄想は止まらない。



(角を曲がったら、運命の出会いとか……)



曲がる。

何もない。

次の角を曲がる。

やっぱり、何もない。



小学生が駆け抜け、自転車がブレーキを鳴らす。

世界は今日も、期待に対して無言だった。



学校が見える頃には、期待はすっかり冷え切っていた

現実はいつだって、余計な優しさをくれない

まあ、別に悲観もしていなが




昇降口に入ると、ガヤガヤといつもの空気。

挨拶する相手は数人。友達と呼べる相手は、いない。

正確には、いなくもないけれど、いるとも言い切れない。



教室に入り、席につく。

ざわめき、笑い声、椅子のきしむ音。

どれも“日常”のはず、


なのに、自分には遠く感じられる。



しばらくして1時間目の数学の授業が始まった。

教師の声は音として耳に入るが、意味としては抜け落ちていく。

ノートを取るふりをしながら、僕はいつも思う。



(……狭いな)



何が、とは言えない。

ただ、息が詰まる。


◇ ◇ ◇


昼休み、僕はいつもひとりで弁当を開く。

教室の笑い声は、ほんの数メートル先のはずなのに、

膜越しに聞くみたいに遠い。



「なあ、昨日のイベントやった?」



同じゲーム仲間の大樹が近づいてきて、しばし軽い会話を交わす。

ボスが強かっただの、範囲攻撃がどうだの―。



「そういえば、あの地震なんだったんだろうな」



「ああ、あれね」



原因不明。

世界中で同時に起きた、妙な地震。


ネットでは『変な生物を見た』なんて投稿も増えていたが、



(どうせ、デマだろ)



そう言い切りたくなる。

非日常の話をされると、なぜか否定したくなる。


逆張りというんだろうか


フッ……自分は、

その非日常を誰よりも欲しがってるくせに。



「ひょっとして世界が滅ぶ前兆だったりして!…ま、そんあわけないか!」



会話が終わると、大樹は友達と一緒に購買へ向かっていく。

その背中を見送りながら、僕は心の中でぼそりと呟いた。



(僕だけ、いつも物語の外側にいるみたいだ)



主役どころか、モブですらない。

背景の背景。

エキストラ未満。



◇ ◇ ◇



放課後。

最後のチャイムが鳴ると、教室は一瞬で華やかな声に満たされる。

長い、でも思い返すと短い時間が終わる。

鞄を肩にかけ、窓の外を見る。

夕日が机の上に伸び、光がじんわりと広がっていく。



(……今日も、何も起きなかったな)



ため息が漏れる。

特別な力が目覚めるどころか、普段通りの一日。

そんな出来もしない奇跡に縋っている自分自身が、いちばんみっともない。



帰る途中、オレンジ色に染まった空を見上げる。

夕日はいつ見ても綺麗だと思う。



気づけば、家の近くの河川敷に来ていた。



土手の斜面を撫でる風、下で野球をする子供、対岸に見える二つの大きなマンション。



ここで黄昏るのが好きだ

なんだかどうでも良くなってくる

将来の不安、才能の無さ、努力のできなささ



ふと上を見る

理由はない

ただ僕はなんとなく空を見た



ビュオオオォォオ



なんだか嫌な風。

耳のあたりでヒュルヒュル鳴いている



「え?」



夕焼けの中に、

黒い鳥みたいな影が見えた。

それははるか上空で羽ばたいているように見えた。



まるでーー”ドラゴン”ーーみたいな



突然すぎて固まる


世界で起きてる異変、変な生物の目撃談


ーー瞬間、


周りの音が聞こえなくなる。

その影に目が釘付けになる。

聞こえるのは高鳴る心臓の音だけだ。


……一瞬だけ、心臓が跳ねる。






(待て……いや、違う飛行機だろどうせ)



どうせ見間違いだ。

現実を見ろ、現実を。

変にこじつけるな僕


だんだん周りの音が聞こえるようになってきた


それでも胸の奥が、少しだけ軽くなった気がした。



帰宅すると、台所から母の声が聞こえる。

部屋に入ると、機械的にゲームの電源を入れた。

三時間ほどオンラインの仲間とプレイし、

宿題をやり、夕飯を食べ、シャワーを浴びる。

やっぱりすべてが“普段通り”だった。



夜。

ベッドに横になり、静かになった部屋で天井を見つめる。



(漫画みたいな展開なんて来ないって……分かってるんだけどな)



胸の奥がかすかに渇く。

所詮僕は、どこにでもいて何処にでもいる中学三年生、その他大勢の1人だ。


主人公とは別

なにも持ってない



⸻だから


特別になりたかった。

何かになりたかった

ならなければならない気がした

自分だけの何かが欲しかった。


けれど


努力する気は”どうせ”と言う気持ちのせいで、

いつの間にかどこかに消えていた。


その願いだけが、目の前でふっと浮かび上がっては沈んでいくだけ


分かっている

奇跡なんて来ない

何かが起きるはずなんかない



それでも――心のどこかで、期待している。

自分だけの物語が始まる日を。

名前すらないモブの僕にも、ふいに光が差す瞬間があるのだと。



やがてまぶたが落ち、意識は静かに闇へと沈んでいった。



⸻その夜。


「ドッ!」


僕はまだ知らなかった。

この眠りが誘うのは夢ではなく、英雄へと至る道だということを。


これは、

何者でもなかった少年が、

英雄への道を歩き始めてしまった――その最初の夜だった。

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