第2話【冬休み特別編】 ―6人で迎える年越し、光のタワーで
⋯⋯冬休みの始まりと、6人の計画
冬休みの朝。吐く息が白く、校舎の影がやけに細く伸びていた。終業式が終わり、陸上部の3人――優太、明、輝は、部室でジャージに着替えながら自然とほぼ同時に言った。
優太「冬休み、どうするよ」
明「いや、どうせ練習はあるけど……」
輝「……彼女たちと、どっか行きてぇよな」
3人の視線が合う。次の瞬間には苦笑いへと変わった。
練習はある。だが、それ以外の時間は――
輝「冬休みのどこかで、6人で年越しとかできんかな?」
輝がぽつりと言うと、他の2人が
優太と明「お前それ天才か?」と即同意した。
その日の帰り道。各々が恋人に相談すると、女子3人は反応が分かれて面白いことになった。
楓「え、みんなで年越し!? 絶対楽しいじゃん!」
愛「6人で……? にぎやかだけど、悪くない、かも」
百合「冬のゴールドタワーって、ライトアップ綺麗なんだよね……行きたいっ!」
こうして、6人での年越し計画が本格化していくことになった。
大晦日の午前――それぞれの準備
●楓&優太
楓は前日の夜からワクワクしすぎて眠れず、目の下に少しクマがあった。
優太「お前、興奮しすぎだろ」
楓「だって、6人で年越しだよ!? 絶対楽しいでしょ!」
優太は苦笑しながらも、そんな楓の楽しそうな顔を見ると胸が温かくなる。
カイロを人数分持ち、『みんな寒がりだから』とこっそり荷物に入れるあたり、優太の気遣いは完全に“彼氏モード”だった。
●愛&明
愛は鏡の前でマフラーを巻く位置を何度も調整している。
愛「明……その、寒かったら……これ一緒に使う?」
差し出したのは淡いクリーム色のマフラー。
明は一瞬で顔が赤くなる。
明「いや、その……一緒にって……」
愛「嫌?」
明「いやいやいや、嬉しいに決まってるだろ!」
愛は静かに笑った。
「ふふ、ならいい」
この2人は相変わらず“ゆっくり距離が縮まるタイプ”だ。
●百合&輝
百合はホットミルクを飲みながら、スマホでゴールドタワーの情報を調べていた。
百合「ねぇ輝、大晦日の夜は特別ライトアップだって!」
輝「へぇ、じゃあ写真いっぱい撮るか」
百合「……写真より、その……輝と一緒に見るのがいいな」
輝は思いっきり照れた。
輝「そ、そういうの不意打ちで言うなよ……!」
百合はふわっと微笑む。からかってるわけじゃなく、素直な気持ち。
3組3様で準備は整った。
夕方――6人が集合
大晦日の夕方5時。
街にはテレビから流れる年末特番の音が漏れ、店先には買い出しの家族連れが行き交っていた。
集合場所に6人がそろうと、自然と笑いがこぼれた。
楓「うわ、そろった瞬間に年末感すごい!」
愛「部活の遠征じゃなくて、こうやって遊ぶの新鮮ね」
明「マジで雪降らんでよかった」
百合「でも風強いね……輝、手冷たい……」
明「お、おう。カイロ持ってる?」
百合「持ってない……」
明「じゃあ、俺の」
百合「うん……あったかい」
それを見て、楓がテンション高く言う。
楓「はいはい!百合ちゃんたちラブラブ~!」
優太「お前が一番うるさいんだよ」
笑いながら、6人は歩き出す。
目指すは――
恋人たちの聖地・ゴールドタワー。
冬の夕暮れの中、タワーのシルエットがゆっくりと浮かび上がってきた。
⋯⋯ゴールドタワー到着――光に包まれる夜
タワー前の広場は、すでに多くのカップルや家族でにぎわっていた。冬の特別ライトアップ。金色と白の光が混ざり、夜空にゆらめく。
楓「すっご……!」
楓が目を丸くする。
百合「写真じゃ見たことあったけど、こんなに綺麗なんだね」
輝が頷く。
輝「実物の迫力やばいな……」
明と愛は、無言で見上げていた。
愛はそっと明の腕に触れる。
愛「……一緒に見れて、よかった」
明は照れながらも、落ち着いた声で返した。
明「俺も」
優太は、楓の横顔を見つめていた。
優太「楓、光が似合うな」
楓「へっ!? なにそれ急に!」
優太「いや、マジで。可愛いから」
楓「~~~!! い、今それ言う!?」
優太「今言いたかった」
楓が真っ赤になって足をバタつかせ、愛と百合がくすっと笑う。
6人で見る冬のタワーは、どこか特別だった。
⋯⋯展望台へ――6つの想いの交差
チケットを買い、6人は展望台へ向かうエレベーターに乗った。
上昇するたび、外の光が流れるように変化していく。
■展望台からの景色
扉が開くと――
夜景が一面に広がった。
街の灯り、遠くの海の黒、そしてタワーの足元に広がるライトの海。
優太「やば……こんな綺麗なの初めて見た」
愛「冬の夜景って、透明度高いからね。より綺麗なんだよ」
楓はガラス窓に両手をつけながら言う。
楓「6人で見れてよかったぁ……!」
百合は輝の手を握りながら、静かに呟く。
百合「輝と来るって、決めてたんだ……」
輝「え」
百合「中学の頃から、ずっと」
輝は言葉を失い、百合の頭をそっと撫でた。
輝「……ありがとう。俺も、来れてよかった」
23時台――年越し前の特別な時間
展望台は少しずつ人が増えてきた。
年越しカウントダウンをここで迎えるためだ。
6人は窓際のソファ席に腰を下ろし、軽食をつまみながら語り始めた。
■■部活の話
明「冬季練習、きつすぎん?」(明)
輝「お前、途中で倒れかけてたじゃん」(輝)
明「いや、あれは……その、愛が見てるから張り切っちまって……」
女性3人「は???」
明は耳まで真っ赤。
愛は笑って言う。
愛「倒れられても困るんだけど……でも、頑張ってるのは知ってるよ」
明は俯いたが、嬉しそうだった。
■■恋バナ
楓「さっきの百合ちゃんのやつやばくない!? “中学から来ようと思ってた”って!」
百合「う、うるさいよ楓……!」
輝「……まぁ、俺としては嬉しかったけど」
優太がにやりとする。
優太「百合、ギャップえぐいな」
百合「輝くんの前だけだから……」
優太「うぉおおそれ余計すごい!!」
楓が騒ぐと、百合が楓の袖をつまんで真っ赤になる。
愛は静かに微笑むだけだったが、明は気づいていた。
(……愛も、こういうのに憧れるのかな)
ふと、愛が明の手に触れた。
愛「明。今日……一緒に年越しできてよかった」
明「……ああ。ありがとな」
手を握り返す力が、いつもより強かった。
⋯⋯23:58――カウントダウン開始
展望台の照明が少し落ちる。
大きなカウントダウン画面が点灯し、全員が窓の外を見た。
楓「あと2分だ……!」
6人は自然と円になるように立った。
楓は優太の袖をつかみ、百合は輝の腕に寄り、愛は明の手を握る。
3組3様の距離感。
その温度が、とてもリアルで、とても愛おしかった。
⋯⋯0:00―新しい年、6人で迎える初めての瞬間
「3!」
「2!」
「1!」
――――パッ!
タワー全体が一瞬、真昼のように輝いた。
外では花火が上がり、光が空に散っていく。
百合「うわぁ……っ!」
楓は嬉しさのあまり優太に抱きつく。
楓「優太ー!あけおめっ!!」
優太「お、おう……あけおめ」
明と愛は、そっと見つめ合った。
愛の小さな声が響く。
愛「……明。今年も、よろしく」
明「……あぁ。今年はもっと、愛を大事にするよ」
輝と百合は、まだ花火を見ていた。
だが次の瞬間、百合がぽつりと言った。
百合「輝。今年の初めての瞬間、こうして一緒に見れてよかった」
輝「俺も。ずっと隣にいろよ」
百合「……うん」
6人の心は、花火の光よりも温かかった。
⋯⋯年越し後――6人だけの誓い
展望台の片隅。
人がやや落ち着いてきた頃、楓が言い出した。
楓「ねぇ、せっかくだし……6人で今年の目標言わない?」
優太「俺は……走りで明と輝に勝つ」
明「はっ、上等だ。俺はインターハイ決勝」
輝「……俺は、怪我しないで走り切ること」
百合「私は……輝の支えになることかな」
愛「私は、もっと……誰かじゃなくて自分の意思で行動したい」
楓「私は……優太との時間、もっと大事にする!」
優太「え、俺?」
楓「うるさい、照れるでしょ!!」
6人は笑った。
その笑い声はタワーの天井に吸い込まれ、夜景に溶けていった。
⋯帰り道――それぞれのこれから
タワーを出ると、冷たい風が一気に頬を撫でた。
楓「さっむ!!」
優太「ほら、カイロ」
楓「ありがと……」
愛と明は並んで歩き、愛がそっと寄り添う。
愛「明……今年もよろしくね」
明「こっちこそ!!」
百合は輝の腕に手をまわし、少し甘えた声で言う。
百合「輝、手冷たい。握っていい?」
輝「お、おう……」
街は初詣へ向かう人でにぎわっていたが、6人の世界は不思議と静かで穏やかだった。
今年の冬は、忘れられない夜になる。
⋯⋯そして、始まる新年の6人
帰り道の途中、楓が突然振り返って言った。
楓「ねぇ!来年も6人で年越ししようね!」
優太「お前……気が早すぎ」
愛「でも……悪くないわね」
百合「うん。また来たい」
輝「来るに決まってんだろ」
明「……よし。決まりだな」
6人は笑った。
冬の夜空に、吐く息が白く揺れながら。
そして確かに、こう思った。
――この仲間、この恋人たちと迎える新年が、世界で一番尊い。
その気持ちは、誰の胸の中でも同じだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます