第42話 善は急げ
〈闘技場ランキングベット〉
三連単
アカネ◀ゼロン◀ハカゼ
払戻金:8,800,000G
──────────―――――――――――
「800万?!」
「ほーほっほ〜。驚いたか〜い?」
「いやいやいやいや、何かの間違いでしょこれ!だってボク5万円とちょっとしか賭けてないんだよ?!」
「競馬とか見たことない?人気が無い馬が2着とか3着になって、三連単を当てるとオッズが900倍とか1000倍以上になることもあるんだよ?」
「はい?!なにそれドリーム過ぎない?!」
さっきから全く知らない世界の話を聞かされ、驚くことばかりだ。
当てれば人生が薔薇色になるかのような魅力的な数字。ギャンブルに熱中する人の気持ちが少しだけわかった気がするよ。
「とはいえ、競輪とか競艇みたいに人が対象だから、今回のオッズがそこまで高倍率に跳ね上がることはないけどね。」
「でも150倍くらいだよね?ボクからしたらかなり高倍率だよ!」
ボクよりも賭け金が多かった日和は一体どのくらい稼いだんだろう…
そして、ボクには心残りがひとつある。
「何割くらい渡せばいい?」
というのも、今回の賭けは日和の完璧な予測と采配によって得られた成果なのだ。一番の功労者に8割くらいは渡すのが筋というものだろう。
「いやいらんが?」
「いやいや、日和のお陰でこんな大金が得られたんだから、全部もらうのはさすがに申し訳ないよ!」
「いや、ほんとに大丈夫。茜は私が優勝するのを信じてくれたでしょ?3位をこっちで調整するのも信じてくれたし。だから――」
「そりゃ信じるでしょ。知らない人に賭けるより何倍も信用できるじゃん。それに、ボクの知ってる日和は今のところ負け無しだからね!」
「茜……うん、そうだよ!あんたの親友は最強天才美少女ゲーマーなんだから負けるわけないってこと!でも、信じてくれて嬉しかったから、私の分前はそれだけでじゅーぶんっ!」
なんだか少し恥ずかしい事を言ってしまった気がして体が熱を帯びていくのを感じる。
そして今日1番の笑顔を見せきた日和の言い分を、飲み込む以外の選択肢がボクにはなかった。
そして、託された900万近くのお金の使い道は、日和と楽しむために使おう。何よりも、彼女が教えてくれたこの世界の魅力をより深く知るために。
その後、今後の方針を大まかに決めた。
まずは第3の街に到達すること。
第3の街クロードは崩壊した街だから、空き地は沢山あるとのこと。
その後、家を建てて、家具などを一式買い揃える。デザインや配置は日和におまかせする予定だ。
それでもお金が余ってたらクロードの復興費用に充てることにした。日和曰く、これが復興シナリオだったら、貢献度で報酬が変わる可能性があるそうだ。
勿論ボクに異論は無い。日和がお金をそうやって使いたいというなら、それが最善の選択になるからね。
コンコンッ
「準備できたわよ〜」
「今行く〜」
「やったぁ!今日は食い尽くすぞぉ〜」
作戦会議もほとんど終わった所で、お母さんからお呼びがかかった。
腕まくりをして勢いよく部屋から飛び出していく日和の背中を見つめる。
向こうの世界では最強の剣士、こちらの世界ではただの腹ぺこ少女なのだが、それも彼女の魅力の1つなのだろう。
あんな華奢な体のどこに入っていくんだと言わんばかりに、お好み焼きが1枚、また1枚と消えていく。
お腹いっぱいになってソファで寝かけていた日和を迎えに来た日和のお父さんが「いつもすみません」と言って脇に抱えて回収していった。
流石のボクも疲れが溜まっているので、今夜のログインはやめておいた。
今日一日の出会いと思い出を頭の中へ大切に保管し、本を閉じるようにそっと瞼を落とす。
………
……
…
翌日、日和から連絡があり、午前10時からログインすることになった。
今日は特に予定が無いので、第2エリアのエリアボスを倒してしまいたいとのこと。
「おはよーアカネ。昨日の夜はさすがにログインしてなかったね。」
「え、あんだけ眠そうにしてたのに、もしかしてログインしてたの?」
「まあね〜。ちょっとクロードを下見に行ってたけど、マズイ問題が発生したかも。」
どうやら第3の街クロードへ行って、いい感じの土地があるか探していたらしい。しかし、何か問題があったらしく、クロードに着いてから説明するとのこと。
第2エリアを進みながら、件のエリアボスについて色々と説明してくれた。
そのボスはアルフロンの南門を出て真っ直ぐ行ったボスエリアにいるとのこと。今までのボスとの大きな違いは、複数体討伐であることと、魔法をバンバン放ってくることらしい。
当初の日和は遠距離に対応する手段を持っていなかったから、フィールドギミックを上手く使って、地道に倒していったらしいが、今回は別だ。
日和は言わずもがな、ボクも適正レベルに到達しているし、火力も十分出せるから特に準備をしなくても余裕で勝てるとの事。
「おお、ここがボスエリア?」
「いえーす。ちょっと変わってるでしょ?」
歩き始めて1時間ちょっと、深い森の中を進んでいると、何やら村のような場所にたどり着いた。
木の柵は壊れており、堀に溜まっている濁った水には槍や剣などの武器が見え隠れしていた。だれかの戦闘痕なのだろうか。
「茜、予定通りこの柵から先に入ったら、一直線に駆け抜けるよ。」
「りょーかい、スピードブーストはボクだけでいいよね?」
「そうだね。なるべく私の速さに合わせて欲しいかも。」
ボクはできる限りの最速を出すため、ボク自身に付与術と支援魔術の重ねがけを施した。
「それじゃあ行きますか。――せーのっ!」
日和の合図を皮切りに、ボクたちは全速力で走り出した。
〈ボスエリア【緑鬼族の占拠地】へ進入しました。〉
聞こえてくるアナウンスには一切耳を傾けず、先導してくれる日和の背中を追う。
速度は公道を走る車くらいかな。視界の端に緑色のなにかが映り込むが、この速度だと正確に認識出来ない。
ただ、日和に聞いていたからその存在の名前自体は既に知っている。
――【
人に近い姿形をしているから、いざ討伐するってなると抵抗がある人もいるらしい。
ただ、人に近いと言っても、あまりにも異形な見た目をしているらしいから、日和曰く、そんなに心配しなくても自然と攻撃出来るって言ってた。
「そろそろ最初の敵が見えてくるよ!」
「了解」
しばらく進んでいるうちに周りも騒がしくなってくる。何が目印か分からないが、日和がそう告げてくれた。
「「フギャアアアア」」
「きた!アカネは右の槍持ってる方を20秒以内に倒して!」
「20秒?!おっけやるだけやってみる。」
どこから出てきたかは分からないが、目の前に2mくらいのゴブリンが3匹現れた。左から2匹は剣と杖を持っており、右の1匹は槍を持っている。リーチ的にボクが槍を相手にするのが無難なのだろう。
深緑色で、上半身がガリガリ、お腹だけ大きく出てる角の生えた人なんていないだろう。
しかも、こっちを倒そうと殺意を剥き出しにしているから多分ボクも普通に攻撃出来る。一旦心を鬼にして、殺られる前に殺らないとね。
正直、20秒以内に倒し切れる自信は無いけど、日和からしたら時間も無いのだろう。ここはこの速度を活かした振りの速さとグラントさん流の斧術で一気にカタをつけよう!
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