TS従魔のダンジョン攻略記!

おにっく

プロローグ

 なんでも願い事が叶うなら、何がしたい?

 ありふれた質問で、けれどもその答えが実現されることなんてほとんどないものだ。


「ぐ……! じゃま、くせぇっ!!」


 友達に、この質問をしてみたことがある。他愛のない会話だった。


「ちょ、サン!! 無茶しすぎ!!」


 そしたら一人はこう答えた。一攫千金、億万長者。一生分の金をもらって悠々自適に暮らしたい。


「んなこと言ったって、とわっ!? ごめん捕まったぁ!!」


 もう一人はこう答えた。死んだばあちゃんを生き返らせたい。別の一人はこう答えた。不老になって、永く生きたい。


「まったく、もう……!」


 明日のテストをなくして欲しい。無限の力を手に入れたい。太陽を克服したい人間になりたい、オラより強ぇ奴と戦いたい。

 終盤、明らかにふざけていたけれど。他にも、いろんな願いがあった。


「しょうがないやつ!!」


 その中で、きっと今の俺の状況に近い願い事は、これ。


「待ってろ!! 今助ける!!」


 異世界転生。そんで勇者になって無双して、美少女モンスター娘とイチャコラしたい。

 あまりにも包み隠さずに欲望が出ていて、なんとなく少し笑ってしまった記憶がある。


「だから、サン!! 《動くなよ》!!」

「ちょ、わざわざ命令するほどでもっ、むぐぅ……!?」


 だというのにまさか、自分がその状況に陥るなんて思ってもいなかった。


「そりゃっ!!」


 今なら少し、その友達の気持ちもわかる気がする。


 その身一つに剣を携えて、知恵と勇気で仲間を助ける。こうしてみるとなるほど、憧れるのも頷ける。


「よし、と……大丈夫か、サン」


 つまり、何が言いたいかってさ。


「……最悪。血で体ベタつくし……命令する必要あったか?」


 俺の状況に近い願い事だ、なんて言ったけど。俺はモンスターの方だ、ってこと。


「う……その、下手に動かれるとサンにも剣が、ね……?」

「へーっ! へーっ!!」

「ごめん……」


 で、頬掻きながら謝ってる男が俺のご主人。さっきの話で言えば、勇者の方。


「……いや、冗談。突っ走っちゃった。ごめん。ありがと、ご主人」

「いいよ、仲間は助け合いさ。それより、見てご覧」

「ん……?」


 ご主人の言葉に従って指差す方を見ると、倒した魔物が消えている。

 そして本来死体があるはずのそこには、宝石のようなものが残されていて。


「魔道具! やっぱりあいつがダンジョンボスだったんだな!」

「みたいだね。さて、今回の魔道具こそ当たりだといいけれど」

「どれどれー?」


 ヒョイと先程まで魔物だったそれを拾い上げて、魔力を通してみる。すると、徐々に輝き始めて。


「こ、こら! サン! 検査もなく魔道具を使っちゃダメだっていつも言ってるでしょ!?」

「い、いや、こんなちょっとで発動するとは思わなくて……! ど、どーしよ!? どーするこれ!?」


 そう言った直後、輝きは収まった。魔道具の能力が発動し終わった証だ。


「……ご主人、なんか命令してみて」

「え、うーん……《笑顔でピースして》」


 ご主人がそう命じた瞬間、体が勝手に動いてしまう。

 抵抗も虚しく、俺の体は自動的に片手でピースしながら、ご主人にフレッシュな笑顔を向けた。


「なに、させんのさ」

「自分で言ったんじゃない。大丈夫、とても可愛いよ」

「そういう事言う癖、直せよな。……はぁああああ………今回もダメかぁ!!」


 どかっと後ろに倒れ込むと、掌の中で魔道具は跡形もなく砕け散ってしまった。


「しかも使い切りだったみたいだね……それより、どう? 効果の方は」

「え? ん、んー……あ、腹がいっぱいになってる。さっきまで減ってたのに」

「……そっか。ダンジョンではありがたいな」

「だからって一回きりじゃ意味ないじゃーん!! 今日もう帰るし」


 ほんとに、まったく。


「こんな調子じゃ、いつこの呪いも解けるのかねぇ。……元の世界にも」

「二人ならなんとかなるさ。頑張って次を探そう、な?」

「はいよ、ご主人……」


 なんでこんな事になっちゃったかな。

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