恋愛ストリーミング

旭野ヒカリ

第1話 オーラを纏う配信者

「よし、今日も始めようかな。」

私、夕咲羅奈はごく普通の高校生なんだけど、実はもうひとつの顔があって、

『今日も最後まで見てくれてありがとう!!よろしければチャンネル登録お願いします!!』

そう、動画配信者としての顔もあるのだ。こういうので1番達成感を感じることができるのはやっぱりコメント欄かな。

【らなちゃん今日も可愛かった!】

【らなちゃんのおかげで疲れも全部飛んだよ!】

こんなにも自分の動画を評価してくれる人がいるなんて自分からしたら嬉しさしかない。まあ、一部荒れてるところもあるけどね…


もちろん、学生生活も真面目にしてる。

「羅奈おはよう!」

三橋良花。私と同じクラスの親友だ。小学校からの幼馴染でもある。

「でね、昨日彼氏がさぁ、この可愛いキーホルダーくれたんだよねぇ。ていうか、私の好みなんだよねえ。」

…。まあ、彼女は会話の通り彼氏持ちである。私?私はそれは有名配信者なのでね、もしそういうので炎上しちゃったら大変なことになるからね…いない。

「あ、そういえばこの配信者さん面白いんだよねぇ。」

「へ、へぇ、そうなんだ…」

私だよこれ、私のチャンネルだよ。謎にバレないのが私なんだよね。なんでだろう。やっぱりオーラが違うのかな。

そんな話をしてたら、学校に着いた。私が住んでるこの町は自然豊かな場所。少し歩けば畑も田んぼもある。素晴らしいこの町にある唯一の高校こそが、私の通う「県立吉美高校」である。県内屈指の進学校で、私もどれだけ入るのに苦労したことやら。

「おはようございます。今日は1限目の古典が…」

ホームルームは基本的に暇すぎてしょうがない。その間私は何をしているかというと、頭の中で今日の配信の内容を考えているのであった。

「おい、神池!寝るんじゃねぇぞ?大事な話なんだから。」

「あ、すみません。」

神池有斗。クラスで目立たないというと違うような気もするけど、話してるところをあまり見たことがない。こんな雰囲気の中ホームルームは進んでいった。

「で、最後にひとつだけ。ここ最近ネットでー」

担任の話が終わると、クラスの全員が返事をしているかわからないくらいの声で返事が教室に響いた。ちなみに私は返事をした。ネットなんかしてない感じにね。

時間は経ち、昼休み。私はトイレに行きたかったので、トイレに行き戻ってくると、何やら教室が騒がしい。教室を覗くと、神池とクラスの陽キャ達で何か揉めてるみたい。

「自分でしたくてしていることに、なんで君たちにそうやって言われないといけないの?」

「神池ねぇ、そんなのに誰が興味持つのさ。お前の配信なんて誰も見たくねぇよ。なぁ。」

配信?なんのことだろう。このことを親友の良花に聞いてみた。

「ああね。なんか神池が自分で配信してたんだって。そしたらね一田達が、配信見つけたんだって。それでコメント欄で本名ばら撒いたり、悪口言ったりで。それでああなったみたい。」

私の中で何かが切れた。

「なにが、なんて?」

「夕咲には関係ないだろ。あっちいけ。」

「関係あるよ。君たちが彼のことを侮辱してることに。」

「は?どこがだよ。」

私は言葉を選ぶ。ネットと同じようにね。

「彼の配信荒らしたんだってね。しかも悪口まで?どうせ、俺たちは悪くないとか思ってるんだろうけどね。」

「ああ、そうだよ。だけどな、実際にやってないからいいんだよ。」

「…いい加減にして。」

「…?」

「お前ら、ネットだから大丈夫とか思ってるわけ?そんなわけないよね。やってることは実際にやるのと同じ。しかも、ネットで本名晒すとかもっとやばいでしょ。さあ、これからどうする?学校に言うか、警察に言うか。どっちがいい?」

「お前、いい加減にしろよ。」

私に拳をあげてくる一田。殴られるんだと確信したその時、横から誰かが一田の腕を掴んだ。

「お前ら、夕咲に手を出すのは違うよね?ごめんもう限界。」

と言うと、彼は一田達に向けてここでは言えないような言葉を吐き出した。

「お前、許さねえからな。行こうぜ。」

一田たちが去っていった。

「夕咲大丈夫だった?」

「う、うん。ありがとう。」

そう、彼こそが神池だったのである。自分のことを言われてたのに、私のことまで庇ってくれた。

「さっきのことは、大丈夫なの?本名とか晒されてたらしいけど。」

「あぁ、安心して。もう通報してるから。すぐ凍結されると思うよ。」

通報は誰でもできるけど、凍結には時間がかかる。でも、自信満々だったから。

「まあ、登録者50万人もいればね。」

「え…?」

「ああ、自分登録者50万人いるんだよね。だから、みんなが通報してくれた。」

身近には私しか配信者いないかと思ってたけど。まさかこんなに近くにいるなんて。私が話す隙がないほどの間で。

「ずっと思ってたんだけど、配信者のRANAだよね?名前も似てて顔も似てるから。」

「そうだよ。」

まあ、元々隠すつもりはなかったけど、場の空気でたまたまバレてなかっただけ。

「ていうか、さっきなんであんな感じだったの?」

「ああね、演じてただけだよ。実はね、あいつらに悪口を書かれてたの、自分の視聴者さんなんだ。だから、自分が代わりにあいつらの悪口を受け止めるために捨てでチャンネルを作った。だからその配信はダミーなんだ。個人情報系はだから大丈夫。で、さっきあいつらに絡まれた時に、言われるがままに演じてたんだよ。」

「賢いことするね。自分だったら思いつかないよ。でも、クラスであまり話してないように見えるけど。」

「ああね、ずっと配信の内容考えてたんだ。」

(私と同じだ。)

そんな感じに場も収まり、いつものクラスに戻った。しかし、1個心残りがあった。彼のチャンネル名聞けてない…そして、私は何故か彼に想いを寄せていたのであった。

次の日。いつも通り配信を終え、ネットでエゴサをしていると、とあるコメントに目が留まった。

「このゲーム配信してもらいたいです。」

そう、このコメントを残してる人はゲームを趣味で作ってるみたい。そんなすごい人が私にお願いしてくれるなんて、もちろん受けるしかない!

そして、DMに承諾の旨のメッセージを送るのであった。そのゲームであのような出来事になるとはまだ知らずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る