第12話 夜明け前
遙の部屋。
もう何度目かの週末。
でも今夜は違う。
遙は消え入りそうな小さな声で、事前に耳元で囁いていた。
「今夜は、おとしてあげる」
その意味を、愛はまだ知らない。
愛はいつものように布団に座らされる。
優貴は後ろから抱き、遙は正面に膝をついて、愛の頬を両手で包む。
いつもより静か。
いつもより熱い。
いつもより、遙の瞳が深い。
「愛……今夜は、あなたに全部見せてあげる」
遙が優貴の腕をそっと外させる。
初めて、優貴が愛の背中から離れる。
愛は不安げに振り返るが、優貴は目を伏せたまま。
遙が愛の両手を自分の首に回させ、恋人同士のように密着して唇を重ねる。
舌が奥まで侵入し、唾液の音がねちゃねちゃと響く。
優貴の手が再び背中に回るが、今度は違う。
強く、胸元に手を――
「あっ……や、優貴くん……?」
遙が唇を離し、耳元で甘く囁く。
「ねぇ、愛……優貴がこんなに欲しがってるの、わかる?」
――嘘だ。
愛にはわかる。優貴の手は震えている。
震えながら、でも止められない。
遙がスカートを捲り、下着を剥ぎ取り……
優しく触れる。
「ほら、優貴……見て。愛ちゃん、もうこんなになってる」
愛は泣きながら首を振る。
違うのに、身体だけが勝手に反応してしまう。
遙が優貴の手を取り、愛の秘部に押し当てる。
「触ってあげて。愛ちゃんがどれだけあなたを欲しがってるか、確かめて」
優貴の指先が震えながら滑り込み、愛を堕としていく。
遙が耳を甘噛みしながら毒を注ぐ。
「でもね、愛……
優貴は、あたしがいないとこんなことできないの。
あたしが言わなきゃ、あなたに触ることすらできない。
――あたしと三人でしか、燃えられないのよ」
その言葉に、愛の胸がぎゅっと締めつけられる。
あの日の優貴を思い出していた。初めての淡い触れるだけのキス。
矛盾するような、公園での拒絶。
優貴の愛も遙の愛も歪んでいて、それを埋める鎹は私しかいない。
そう信じた瞬間、愛の背中反り上がり、絶頂が襲う。
びくびくと身体が跳ね、甘い蜜が指を濡らす。
「可愛い……もっと見せて」
遙は微笑みながら胸を、優貴は指を二本に増やす。
二度目、三度目……愛は何度も身体を震わせて、チカチカとした光が目の奥で弾け、
遥に髪を撫でらるていると――
――意識が霞み、深い眠りに落ちる。
――その瞬間だった。
遙が優貴の首に腕を回し、静かに囁く。
「……愛は寝ちゃったね。……ね、しよう」
優貴の瞳が揺れる。
心は拒絶しているのに、身体は熱を帯びる。
遙が優貴を押し倒し、ズボンを下ろす。
愛を抱いていたときには冷えていたものが、
遙の指に触れた途端、痛いほどに張り詰めた。
「んっ……あぁ……!」
遙の白い脚が背中に絡みつき、爪が背中を掻き毟る。
「優貴……もっと……!」
遙の喘ぎが部屋に響く。
優貴は涙を浮かべながら、獣のように目を光らせ、
愛を抱いていたときには決して出せなかった、
本当の悦びの声を上げる。
その声に、愛のまぶたが薄く開いた。
愛が見たのは――
優貴は遙を深く――ずっと深くを満たし、
遙が優貴の首に爪を立て、甘く啼きながら果てる姿。
自分は指で愛でられただけなのに、
遙は優貴のすべてを受け止め、
優貴は遙の中でだけ、本当の獣になっていた。
愛の胸が、音を立てて砕ける。
「私……なんなの……?」
「私がいなくても……こんなに……?」
「私が鎹だと思ってたのに……」
涙が頰を伝う。
声は出ない。
ただ、心が完全に壊れる音だけが、内側で響いた。
遙と優貴は果て、絡み合ったまま息を整える。
遙は甘い吐息とため息を混ぜながら、
優貴のすべてを秘部で受け止め、飲み干した。
「あーあ、やっちゃった……
愛がいないと、こんなに燃え上がってくれないのに。
バランス、取り違えちゃったかな」
遙の小さな呟きが、静かな部屋に溶けていく。
愛は誰にも気づかれぬまま、布団の中で震えながら、
永遠に忘れられない光景を胸に刻んだ。
――翌朝、愛は静かに部屋を出ていく。
決して、振り返らない。
もう、誰も信じない。
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