【因習村不仲バディシリーズ②】女肉の檻

疋田匹

プロローグ




私は先生が好きでした。


先生は決まって少し気怠げに、それでいてこの上なく優しい声で私を呼びます。手招きをする手は枝のように細く、なのにどこか、白樺の若木のような瑞々しさを保っていました。これは甚だしい女遊びの賜物なのでしょう。先生が私を見る際の細めた目、私へ呼びかける唇の動き、ささやかな仕草。どれをとっても、思い出すだけで心臓か戦慄きます。

認めたくなどありません。それでも、私は先生を愛しているのです。しかし、先生は私を置いていってしまいました。私は先生を奪っていった女が憎くてなりません。殺してやりたい。


先生、先生、どうして私を置いていってしまったのですか。




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