この世界は、愛と執着とカフェインでできている
めぎ
第1章 コーヒー聖戦①
第1話「突然のコーヒー」
6:20アラームが鳴る
寝ぼけ眼でパジャマの服についた小さな虫を手ではらう
「…おはよう、自分」
「…いい朝だね、自分」
「…今日も頑張ろうね、自分」
大学生になって初めての一人暮らし
4月から始まってもう3年目に入ろうとしていた
ずっと仲良し家族と暮らしていた僕は1人の時間があまり好きではなく
いつもおはようと言ったら誰かが返してくれていた環境がが恋しくて
無意識におはようから言葉を繋げることが多くなった
まだ完全に目が覚めていない僕は、
カーテンを開き太陽の光を浴びる
そのままキッチンへと向かい
父親が大学祝いでくれたコーヒーマシーンで
日課のコーヒーを淹れて一口啜った
「…今日は午前中に友達とカフェ行って、旅行計画話し合うんだっけ…」
自然と口元がニヤける
1人は好きじゃない、でも彼女がほしいわけじゃない
恋愛より大学の単位優先
バイトでお金を稼いで自分の生活安定優先
性的欲求は右手の相棒がどうにかしてくれている
価値観の合う友達と楽しく大学生活が送れれば
バイトの日にちを増やしたって楽勝だった
しかも今回は初の海外旅行
大学1年の時からみんなで決めていた
もうすぐ就職活動が始まってまともに会えなくなる
でもその前に海外旅行して楽しもうってこと
「ふぁぁ〜よーし、今日も頑張るぞ〜!」
コーヒーを持ちながら両手を伸ばして背伸びをしていると
ふと、視界の端で、空気が揺れる
次の瞬間2人の白い服を着た、羽の生えた男女が突然現れた
「…え?」
僕はコーヒーを片手で持ちながら手を伸ばしている状態で固まり言葉を失った
え?不法侵入?泥棒?
てか、誰!?!?
1人目は、ツインテールの幼女が少し成長したような姿の女の子(可愛いは正義だ)
2人目は、優しい目をした薄茶色の髪の長い野郎がいた
ツインテールの幼女が鋭い目で僕を見下ろす
「あんたさっきやばいことをしちゃったのよ。…わかる?」
「え、え…?」
僕は首をかしげる
何を言っているのか理解できない
というより、僕は冷静にツインテール幼女の
話をかけていることに驚く
僕、意外と冷静だよな……
僕は僕で自分の凄さに感心していた
そう誇らしげにしていると
ツインテール幼女が怒気を込めて言った
「虫を殺したでしょ!!」
「……虫……?」
状況を理解しようとしたが、ダメだ
まるで意味がわからない…
寝起きだからかな…(棒)
この子は何を言ってるんだ…見た目は可愛いけど
すんごく強い口調!怖いよ!!
そして、ずっと思ってたんだけど
なんで僕の部屋にいるんだ…帰ってくれ!
「あ、あのぉ〜…な、なんのことで、でしょうか〜???」
もう僕はヤケクソだった
寝起きの顔とぼさぼさ頭に、パジャマ姿を
晒していることが本当は恥ずかしいんだ
そして、何度も言おう!
不法侵入だ!!帰れぇぇ!!!!
そう僕は頭の中で叫んでいた
これを口に出したらもっと怖いことになりそうで
心の中だけ饒舌になる
僕がなんとも言えない顔をしていると
男の方が近づいてきて、僕の肩に手を置き、
優しく微笑む
は、花のいい香りがする…!
柔軟剤のアロ◯リッチの香に似てる…!
「僕は天使のラファエルっていいます。あなたは、起きた時にパジャマについた虫を払ったことを覚えていますか?」
「…え…?…虫?、…むし、む………あ!」
そういえばさっき服についていた虫をはらった、ような気がする
こう、ペシって、感じで
ラファエルと名乗っていた男に目線を合わせると
少し困った顔をしていた
「実はその虫は、天界と地獄の均衡を支える大切な存在だったんです…その虫があなたが払った衝撃で死んでしまって……均衡が崩れてしまったので今天使と地獄で戦争が始まりそうなんです…」
「………え、?」
な、なんで!?
「な、なんで!?」
僕は思ったことがそのまま口に出ていた
ラファエルは少し眉を下げて
「実はあれはてんとう虫という昆虫です。たくさんいるてんとう虫の中で、幸せの象徴なので早々に殺されないだろうと……ミカエルが決めたのですが…君がすごい確率で殺しちゃたみたいですね……」
………あ、アンビリーバボー
この天使は真面目な顔して
一体何を言っているんだと思っていると
……カタ…カタカタカタッ
突然地面が少し揺れた
感覚的に震度2ぐらい
揺れに驚いていると、黒い影が滑るように
這い出てきて小柄だが不気味な形をした黒い動物?が6匹現れた
目の光は冷たく、静かに状況を確認するようにこちらを見ている
「……え、こ、これは……?」
僕が戸惑っているとツインテール幼女が僕の前にきて
黒い動物から僕の視界を隠すように前に立った
「ちっもうきたのね。…私はガブリエル。今から私の質問に答えなさい。」
「状況確認…どうぞ」
「あんたは?」
「状況確認…ワタクシ達ははサタン様の使い魔です」
「なぜここにきたの?」
「状況確認…ワタクシ達が見ている風景は全てサタン様に繋がっております」
「状況確認…象徴が天使側によって消滅させられたのではないかと地獄側は考えており、状況確認のため様子を見に来ました。結果次第ではすぐに戦争への準備を整えております」
ラファエルが眉を寄せる
「…そちら側は本気なのね…」
優しい言い方なのに言葉の奥には緊張が隠せない様子だった
「状況確認…人間の記憶を確認しました」
「状況確認…偶然で均衡を乱したようです」
「状況確認…天使たちも状況確認に来ただけのようです」
「状況確認…戦争の可能性は低いと見ました」
「状況確認…サタン様から伝令『待機』」
「状況確認…承知しました」
その言葉を聞いて、ガブリエルとラファエルは安心したように息を吐いた
「あ、あの…」
僕は思わず声を出した
「まとめると、僕が起きた時に服についていた虫をはらっちゃって?その虫が死んで?天界と魔界の均衡が崩れて?今から戦争が始まりそうだと?でも偶然だったから戦争もなかったことになりそう?おーけー??」
「あんたモブ顔の割には結構頭がいいのね」
僕の言葉に意外!みたいに驚いた顔をしながらガブリエルは笑った
…否定はしないが、なぜ天使が『モブ顔』って知ってんだ!
と変なことを思いながらま、寝起きだし、戦争なさそうだし、不審者たくさんいるけど
コーヒー冷めるの勿体無いし、うん!とりあえずもう一口飲もう!
そう思って僕はコーヒーをもう一口飲もうとカップを口に近づけると
透明な水分が目に入る
ん?あれ?透明?でも暖かい、コーヒーの匂いだ
僕が淹れたのは父親からもらった特製ブレンドコーヒーで
ブラジル産だから味が濃ゆいはずなんだ、だから真っ黒のはずなんだ
なんだこれは
ダメだ、叫ぼう
「ぎゃああああああ!!!」
「!?何!?どうしたのよっ」
「ちょっ、きみ、」
「状況確…」
僕はびっくりしすぎて、もう本当にびっくりしていたんだ
びっくりしていたからコーヒーが入っているマグカップを
手から離してしまったんだ
そしたら近くにいた使い魔にかかってしまって
…そのまま、消失した
浄化したみたいに溶けて風になって消えてしまった
ガッコン、コロ…ロ…
割れたマグカップ、広がる透明な液体、消えた使い魔
一瞬の沈黙
一瞬の出来事で言葉を失う僕
「……え?」
「「「「「警告!警告!警告!警告!」」」」」
残りの使い魔達が一斉に叫び出す
その音量は耳を塞ぎたくなるほど不協和音で不気味な叫び声だった
「「「「「聖水を感知!聖水を感知!使い魔消滅!消滅!」」」」」
「「「「「天界側からの宣戦布告と受け取りました!!!!!」」」」」
「「「は!?!!!!」」」
「「「「「「状況確認…接続します」」」」」
さっきまで叫んでいた不気味な動物のような使い魔達は
急に大人しくなりすっと目を閉じた
そしてゆっくり目をひらく
その目はさっきまでの使い魔達の目ではないことが
明らかなぐらい威圧感と恐怖の象徴のような
本物の悪魔の目が僕らを見つめていた
『状況確認に来た使い魔を聖水で消滅――これは我らへの明確な宣戦布告と受け取った』
『天と地獄は、それぞれの役割を果たすことで均衡を保ってきた』
『だがその行為は、その均衡を踏みにじる暴挙である』
『均衡を乱したのは、そちらだ』
『秩序を壊したのも、そちらだ』
『『『『『ゆえに――緊急戦争会議の開催を要求する』』』』』
低く、耳の奥に響く甘い声で、聞いているうちにくらくらしてくる
あ、やばい、倒れ…
気を失いそうになっている僕に気づいたラファエルは
すぐに僕の肩を抱いて優しく床に下ろしてくれた
そして柔らかい緑色の光を放ちながら
「大丈夫、さぁ、ゆっくり息を吐いて」
と優しく囁く
その時気づいた、僕、無意識に息止めてたって
酸欠状態になっていたことに気づく
その瞬間どうしようもないぐらいの悪寒と恐怖と震えが止まらなく溢れてくる
この声は誰の声なんだ
ラファエルとガブリエルはさっきまでよりも一層
緊張と慎重に言葉をつなげる
「久しぶしですね、かつては智天使の地位にいた」
「天使サタネル、いえ、今は悪魔の象徴、地獄の王サタン」
…は?
あのよくファンタジーで出てくる?
まじかよ
僕、寝起きで、パジャマ姿で、今日は出かける予定で起きただけなのに
今日も一日、普通の日常を過ごすはずだったのに…
うっすら時計が見えた
あ、僕意外と時計が観れるほど冷静なんだ
起きてからたった15分しか経ってない…
何なんだよこれ……
最悪のモーニングコールだ
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