さざ波は星をも映して

あまに

第1話

「なんかさー……。梅木に告られたんだよね」


「んぐっ!?」


 中間試験を控えた晩秋のある日の昼下がり、いつものように中庭のベンチで並んでお弁当を食べていたとき、幼馴染であり、かつ親友でもある星谷の口から衝撃的な発言が飛び出した。こいつは、今、なんと。


「別に嫌いじゃないけどさ。なんか、どうなんだろ?みたいな」


「待って頭が追いつかない。え、梅木って言った?」


「うん」


 冷静さを失った挙句食べ物を喉につまらせかけた私とは対照的に、星谷はつまらなそうにキャラメルラテのストローを咥えた。まるで心の底から興味がないとでも言うように。


「梅木って、バスケ部キャプテンの?」


「うん」


「定期テストは上位常連の?」


「うん」


「芸能事務所にもスカウトされた?」


「あ、それは知らなかったかも」


「いつの間に!?」


「ついさっき。四限終わってすぐ。なに、七瀬、そんなに気になる……?」

 

 若干引き気味の星谷を見て、つい熱くなりすぎたことを自覚する。それでも、わたしがここまで驚くのには理由があるのだ。

 梅木はうちの学年の中で、トップクラスのモテ度を誇る。そのわけは先ほど述べた通り。おまけに人柄もよく、去年のバレンタインデーにはチョコを山ほどもらっていたのを覚えている。

 対する我が幼馴染、星谷奈緒もこれまたモテる。モデル顔負けのスタイルの良さに、滲み出るミステリアスな雰囲気。彼女のことをよく知らない人からは(本当はかなりの変人なのだけど)クールビューティと評され、絶大な人気を集めている。

 そんな二人がくっついた暁には、とんでもないビッグカップルが誕生することになるだろう。わたしが食いつくのも仕方のない話というわけだ。


「ちょ、ちょっとびっくりしただけ!え、返事は……!?」


「あ、そうそう。そのことで、ちょっと相談があって」


 そう言うと星谷は先ほどまでのつまらなそうな表情から一変、僅かに口角を上げて、どことなく楽しそうにしている。顔の良さを存分に発揮しているけれど、わたしは知っている。こう言う顔をした時の星谷は、決まってろくでもないことを考えているということを。


「アタシじゃ決めきれないからさ。親友に判断を委ねるのも、また一興かなって」


「え、ちょっと、何考えて」


 脳裏に嫌な想像が浮かぶ。まさか。


「七瀬が選んでよ。告白の返事。OKするべきか、断るべきか」

 

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