無能勇者のリベンジマッチ
豆すけ
第1話無能の処刑
「
「……は?」
それは突然告げられた。
俺はここフェイン王国に召喚され約半年、何も悪い事はしていない。むしろスキルもなく、体力や魔力なんかも全て平均値であった為に、裏では無能勇者と蔑まれていたほどだ。
せっかく異世界に召喚されたんだから、自分の可能性を見つけようと、色んな事に参加した。
軍の練習があれば一緒に混ざり、図書館や魔法師団に魔法を教わったり出来ることは何でもやった。
それでも体力は最初に比べれば上がったけど魔法は全然だったから仕方ない。だけど処刑される謂れはないはずだ。
「なぜ処刑されなければいけないのでしょうか?」
「何故だと。貴様はこの半年何も進歩せず、ただこの国の金を貪るだけだったではないかっ」
余程腹立たしいのか、貧乏ゆすりで椅子がガタガタ揺れる。
「そんな事はないはずです、自分の知ってる限りの知識も喋りました。それにこの国のお金って言われても俺は使ってません。食事は朝と夜のパンとスープだけ、賃金だって貰ってないはずです」
俺はこの国に来てから城以外に出た事が一切ない。ある日軍の練習が休みだから街の冒険者ギルドに登録して、何か依頼をやろうと思っていたら、兵士達に止められた事がある。
理由を聞いてもまだ早いとだけ言われて出してもくれなかった。
「確かに知識はあった。だがそれも下らない物が多く使えん物ばかりだ。この半年観察していたがもう無理だ。貴様の様な無能はいるだけで迷惑なのだ、せっかく秘密裏に召喚し、他国へ恩を売ろうと思っておったのに……、使えんやつが出てくるとは」
今こいつはなんていった?
「秘密裏? 恩を売る? ふざけんな俺はあんたらの欲を満たすための道具じゃないんだぞ」
これまでいくら邪険にされても、王国の為にとやってきたのに、あんまりだろ。
「もういい、目障りだ早く処分しろ」
兵士が集まり俺はその場に倒され、抵抗しようにも、流石に多数対一では無理だ。
それでも何とか処刑だけは免れようと必死に叫ぶ。
「せめて……、国外追放とかにしてくれ、金も武器も何も要らないから、命だけは助けてください……」
王はゴミを見る目で告げた。
「秘密裏にといっただろ。貴様の存在自体バレたくないのだ」
薄暗くカビ臭い部屋、無表情に斧を持つ処刑人。
そして薄笑いを浮かべる
「今に見てろよ。必ず化けて出て、テメェら全員呪い殺してやる。このクソヤロウども」
それが俺が見た最後の光景だった。
【スキル『
【スキル『魔導王』獲得】
【エルダーリッチへ進化しました】
「何だ……この声……」
突然頭に流れた声に意識を取り戻す。そしてすぐにさっきの出来事を思い出した。
冷たい刃の感触、徐々に冷たくなる身体。
そして、地面に落ちていく首。
「そっ、そうだ!俺の首がっ……」
慌てて触るもしっかりくっついている首、そして温もりを全く感じない肌。
それはまるで全身に血が通っていないかのようだった。
俺は確かに首を刎ねられたはずだ。記憶もあるし、感触だって確かにあった。
「いったい、何なんだ……これっ……」
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