聖女と化獣の巡礼記ー害遊のレミィー
藤田丈一
プロローグ
牙の時代は終わり、理の時代が始まる。
嘗て世界を支配していたのは、山を齧る程の巨躯を持つ化獣と、不定形で様々な獣や蟲の姿を取れる怪物達が跋扈する、牙の時代だった。
牙も無く、爪も無いヒトは、鋭い爪の代わりに武器を鍛え、牙の無い口で神の行いを理へと解した術とし、数代に渡り、血の研鑽を続けた。
軈て、蛮勇とも取れる勇ある者達は化獣に挑み、そして“竜”と名付けられた怪物達へと立ち向かった。
永く、戦いの時代は続いた。
一体、また一体と、支配者達は斃れていった。そして、最後の“竜”が地に埋もれた時──
ついに支配者の座は空席となった。
ヒトによる理の時代が幕を開けた。
ーーその神話も、今では色褪せ、
埃を被り、物語として語られる程の時が流れた、この時代。
始まりは、世界の片隅。
火を理解し、理(ことわり)で縛り再現するーー理術(りじゅつ)はヒトに暖かさ与えたが、同時に戦いを凄惨に彩る。
戦場が長く続く、闘争の地から幕開ける。
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