第27話 半年だいじぇすと


 月日は流れて、2012年11月。それも後数日で終わる。

 今年も……という表現には早いが、ともかく今日に至るまでに色々なことがありました。


 大きなもので言えば、修学旅行。

 3泊4日で北陸の三都市……ロシア大公国との貿易で発展した新潟市、地域交通を復興発展させた富山市、ダンジョンを抱えつつも小京都を維持する金沢市を巡った。

 バスで各地を周って色々と見て回ったが、前の世界と比べると大陸側との貿易が強いからか、日本海側が発展してるのがわかる。

 だが、それはそれとして、ダンジョンができてしまったことで、従来の交通網が寸断されてしまって廃止されたり新設されたりなんてことが当たり前の世の中になっている。また、これまで築いてきた街並みをどうにかして残そうと苦心している様子も垣間見ることができた。

 ただ、それを言葉に表そうとすると、小並感あふれる物凄く大変だとしかならないのは、俺の残念な語彙のせいだろう。


 次、キョウのナノマシン治療が完了したこと。

 担当したキューちゃんによると、しつこい油汚れのようになかなか消除できなかった先住AIをようやくボット化することができた、とのこと。これで一安心。毎日毎晩続いたキョウへのナノマシン供給もようやく終わりに……、なる訳がないですよねー。

 ええ、ええ、わかってましたとも、今更、こんなことやめようなんて言ったら……、デデーン、ダイチ君、この世からアウト、に高い確率でなるって、キューちゃんの演算で出ましたとも。


 くっ、【直ちに影響はございません】を甘く見ていたかもしれない。

 あれって言い換えると、【将来に影響がございます】ってことだもんな。ちくしょうめぃ、前の記憶にあった、あの軽い調子の発言にまんまと騙されていた、ということにしておこう、うん。


 なので、キョウとの関係性はそのままになるのだろう。


 その次もまたキョウ関連というか、ミリアを含めた二人のこと。

 二人が進路として俺と同じく探索者養成学校を選んだことについて、英子さんはそれぞれに個別で面談をした。


 その結果であるが……、


「二人とも、認められなくもない理由だったから、試験を受けることを認めることにしたわ。ただ、そのね、普段の生活態度を見てると、これで本当にいいのかって迷う所でもあるのよ。……つくづく、親って大変なんだなって、思い知らされるわ」


 ……とのこと。


 いや、英子さん。

 今あなたが悩んでいることは、多分、親云々とは違う気がするのですが……、でもうーん、俺にも確信があるわけでもないし、ほんとどうなんでしょうね。俺にもわからないや。


 ちなみに、ソーニャの進路に関しては、英子さんが本人にしたいことを聞き取った上で普通科の高校を目指すようにと勧めたようだ。里子組の末っ子のことは、英子さんに任せておけば大丈夫だろう。このまま養子縁組しそうな感じだしね。


 ではまた次へ。

 俺が目指す探索者養成学校について、更に詳細が発表された。

 学年の定員は、600人。1クラス30人で計20クラスになる。かなり多いなと思ったが、関東圏なら応募可能ということもあってか、応募が五千人を超えている。そう考えると、これくらいが妥当なのかもしれない。

 とはいえ、学校の定員なんて、子どもの数で変わっていくものであるし、今後、各都道府県に養成学校が設置されたら減っていくとは思う。

 そもそもがかなり特殊な学校であることを考えると、初年だからイロイロ試行錯誤もあるだろうし、今年だけ特別ってことも考えられる。


 後、入試日が入試週間になった。

 12月第一日曜日から始まって次の日曜日まで続くそうだ。あまりにも応募者が多すぎて、一日ではとても無理だってことなんだろう。12月なんかにするからと言うなかれ。既存制度との調整の末に選ばれたはずだから。

 内容としては、第一日曜日に各都県の指定会場で学科試験。以降、各受験生ごとに指定された会場及び日時に個別面接となるそうだ。かく言う俺は、東京での学科試験の会場となる都立高校で、試験6日目の金曜日の昼からとなった。


 とりあえず、狭き門であることは間違いない。

 できれば入りたいが、ダメだったら……とりあえず、ソーニャと同じ学校に行くとしよう。もらとりあむのの延長だ。


 他に数点。


 一つ目。

 まだ残っていたジャッカーの残滓が懲りず出現して、テレビの電波ジャックをやらかした。

 たまたま家の皆で見たが、活舌悪い声で自らの偏った主張を垂れ流して、国民に決起を促すという訳の分からない放送だった。俺とソーニャぽかん、キョウぽけー、ミリアけたけた、英子さん青筋である。

 当然ながら治安当局にアジトを探知され、特殊部隊による強襲制圧逮捕である。この際、アジトの地下室で干からびて半ばミイラみたいな男性が発見されたらしい。しかも、それで生きていたというから驚きである。

 とはいえ、監禁成果は酷いものであったらしく、体だけではなく心の傷も深いようで、保護された時もひたすらうわ言を繰り返しては悲鳴を上げるなんて酷い有り様だったそうだ。


 二つ目。

 政府がDエーテル……、モンスターより取得できる結晶体から抽出した液化エネルギーとそれを使った発電を行うことを公表した。

 先の地震……よりも津波の影響で原子力発電所が危険視され始めたことを受けてか、または探索者養成学校を設立する意義を説明する為か、あるいは両方ないし他の事情か。ともかく、新エネルギーによる発電を世界に先駆けて発表したのだ。

 その影響は大きく、国内外の先物市場や株式市場ではエネルギー関連の銘柄が乱高下して、連日メディアを賑わせている。かー、俺も金があれば参加するのになー、かー残念だわー。いや、ほんとにお金がないのは悲しいことよね。


 この発表に伴って、副業探索者がまた増加しているらしい。

 付け加えると、ダンジョン内で探索者が探索者を襲うなんて事案も多数発生しているとのこと。欲望こそが人の生の本質、なんて言葉が信じられる話である。

 もっとも政府の対応は早く、この治安悪化を抑え込むべく、法律改正で管理する皇国軍に対して逮捕権が付与されることになった。ただ凶悪班に対する制圧に関して、殺害を認めるか認めないかについては、与野党が揉めているようだ。


 個人的には、そんな不心得者はダンジョンの土にした方がいいと思う。


 三つ目。

 ダンジョンに潜る探索者の能力調査が実施されたこと。

 専業探索者の間で、活動を続けるうちに体の動きや切れが良くなったという話が広まっており、それを調査する為らしい。まだダンジョン庁附属の研究所で分析中とのこと。

 これは俺も気になって、キューちゃんに潜って調べてもらった所、ダンジョンで活動が長い者ほど身体能力が向上しており、なんらかの働きがあるかもしれない、程度に有意なデータが出ていたとのこと。

 今後も継続的に調査をするという話になっているらしく、これからの結果が待たれるところである。


 だいたいはこの程度だろう。


 さて、来週はいよいよ養成学校の入試だ。

 とりあえず、今の俺ができるだけのことをやってみよう。

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