第10話 役員決め

リアとヘンドリックは生徒集会の後、すみやかに生徒会室に連行された。


  会長    クリス・アルノー(アルノー王子)          2年

  副会長   ジークフェルド・リンドブルム(リンドブルム王子)  2年

  会計    ルーファス・トルドー(トルドー公爵子息)      2年

  書記    エリザベス・オースティン(オースティン公爵令嬢)  3年



生徒会室の黒板に書かれたすでに決まっているらしい人事を見て、リアはのけぞりそうになった。


王子二人に公爵家二人・・・


隣に立つヘンドリックもしょんぼりと背を丸めている。


やりたかった人もたくさんいたでしょうに、どうしてこの二人になったのかしら・・・


リアは自分のくじ運の悪さを呪った。


「二人とも生徒会へようこそ。黒板を見てもらった通り、これはすでに決まっているから、二人には会計補佐と書記補佐をお願いしたいと思っている。エリザベスは3年生だし、知っての通り兄上の婚約者だ。最近は王太子妃教育が忙しくてあまり学院に来ていない。」

クリスが黒板を軽くたたいた。

「だから、書記補佐の方が少し仕事が多いかもしれない。二人とも希望はあるかい?希望が重なるようなら、またくじで決めてもいい。」


ヘンドリックがおどおど声をあげた。

「僕、書記がいいです。数字を扱うより、文字を書く方が得意なので。」

「ほう。リアはどうだい?」

クリスがリアに尋ねてきた。

「私はどちらでも・・・」

いきなり聞かれても、詳しい仕事内容も不明だし、どちらがいいかなんて分からない。

「じゃあ、ヘンドリックが書記補佐で、リアが会計補佐に決定ということでいいな?」


二人が頷くと、クリスとジークフェルドの脇に立っていた男子生徒が声をあげた。

「私にこの子だぬき・・・いや、この子供の面倒を押し付けるんですか?くじ引きとか言い出したのは殿下方でしょう?」


少し長めの銀髪に青い目の彼は怜悧な美貌の持ち主だった。銀縁の眼鏡も相まってとても賢そうで、そして怖そうだった。


子だぬき呼ばわりされ、リアは泣きそうになってうつむいた。

しかし、ふと視線を感じ顔を上げると、申し訳なさそうにリアを見ているヘンドリックと目があった。


その目が、ゴメンねと物語っていた。


ヘンドリック先輩はルーファス先輩と同じ学年だもの。

彼がどういう人か知ってたんだ・・・。


ヘンドリックに会計を押し付けられたことを悟り、リアはさらに落ち込んだ。


唯一の味方だと思ったのに・・・。


「まあまあ、ルーファス。もともと君一人でやるはずの仕事だったんだから、雑用を手伝ってもらうくらいのつもりでいたらいいだろう。」

クリスにそうなだめられるも、ルーファスは不満そうだ。


クリスの言葉でブラック上司の元で仕事をすることが覆らないことを悟った。

「足を引っ張らないように頑張ります。よろしくお願いします。」

健気にペコっと頭を下げたリアに、小さな子供をいじめているような気分になったのか、ルーファスは不満そうな表情を浮かべつつ、それ以上何も言わずうなずいたのだった。


「じゃあ、とりあえず役職も決まったし、今日はこれで解散しよう。二人とも明日の放課後からここに来てくれるかい。頼んだよ。」


今日はこれで帰れるようだ。


ヘンドリックとリアが生徒会室の外へ出ようと扉を開けた瞬間、クリスが声をかけてきた。

「ヘンドリック。常に成績上位の君が数字を扱うのが苦手だなんて意外だったよ。」

「へっ?」

どうして殿下が自分の成績を把握してるんだ?

ヘンドリックの表情がそう物語っていた。

「いや、あの。どちらかというと文字を書く方が得意ということで・・・」

あたふたするヘンドリックにクリスはフッと笑った。

「まあ、いいや。今日はお疲れ様。」





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