闇の商人レバンジ
真白透夜@山羊座文学
第1話 若返りの薬
異界への穴がそこら中に口を開けていた時代、レバンジという旅商人が怪しい商品を売りながら歩いていた。背中には商品が入った大きな荷物を背負い、悪魔が化け損ねた山羊の皮で作った肩掛け鞄はお気に入りだった。
レバンジはとある村にたどり着いた。村はなかなかに大きく、家々もしっかりした作りで、きちんと整備された田畑や池があり、豊かそうだった。さらに奥に入ろうとすると、そんな村には似つかわしくない、ごつくてボサボサの髪を一つに結った、髭面の男が一人やってきた。
「何か用だが?」
「ええ、私は旅商人のレバンジと申します。ちょっと変わった物を売ってまして。良かったら村長さんにお会いしたいのですが」
男はふーん、と言いながらレバンジをじろじろと見た。
「んじゃ、ついて来い」
と言って男は歩き出し、二人は村の奥の屋敷へと向かった。
♢
座敷に通され待っていると、小柄な老人とさっきの髭面男が現れた。
「ワシはこの村の村長ヘイジと申す。よくこんな辺鄙な村まで来ましたな」
ヘイジはボロボロで黄ばんだ歯を見せながら言った。
「旅商人のレバンジと申します。随分と綺麗な村ですね。こういう場所には異形が入り込みづらいのです。これは村長さんのご指示で?」
「いやワシにはそのような知恵は無くてね。この村に住む僧侶の仕業だよ」
「ほう! ぜひお会いしたい」
そう話してると、一人の中年の女が茶を出しにきた。目鼻立ちがしっかりとしていて、長く黒い髪と睫毛が妖艶だった。女の身だしなみや所作の美しさと男たちの様子は不釣り合いだった。
「その前に商売の話をしよう。どんな物を売っているのかね?」
「ご希望はありますか?」
「そうだな……この歳だからね、やはり健康に関わるものかな」
「ではこれならいかがでしょう」
レバンジは大荷物の中からすぐに、掌におさまるくらいの小瓶を取り出した。蓋を開け、蓋に棒が付いているところを見せた。
「手の甲をお出しください」
ヘイジが言われた通りにすると、レバンジはヘイジの手の甲に一滴垂らした。それを舐めるようにとレバンジは言い、ヘイジは言われた通りにした。
「若返りの効果がある薬です。一滴ですぐ効果が表れ、翌朝まで続きます」
「うむ……確かに体に力が入るような。呼吸も楽になってきた。もう少しお試しできんかね?」
「一気にたくさん口にすると、異形になってしまいます。明日の同じくらいの時間にまた一滴試しましょう。それで気に入ったら買ってください。この小瓶一つで、お代は……」
レバンジが金額を口にすると、二人は驚きの表情をした。
「屋敷と土地一つ分の値段じゃねぇか! たかがそんな小瓶に冗談じゃねぇ! どうせ薬草やら魚の肝やらを入れだまがいもんだろ!」
髭面男は叫んだ。
「お売りするなら値がそうだというだけですよ」
レバンジは笑って言った。髭面男は舌打ちをしたが、ヘイジは真剣に何かを考えているようだった。
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