「うっ、うううっ……。この自己嫌悪、たぶん、生涯で百回は経験してると思う」


「ふゆさん」


 膝を折り、顔を覆う女ふゆ。


「最近は、家族の中にデブとか太ったとか言う人がいなかったからよけいだ……しわ寄せきたこれ……。なんであたしはこうも自己コントロールができないんだろう」


「そう落ちこむことはありません」


「まま悲しいの?」


 ひょこっと肩から顔を出したはうに、声をかけたのは聖さんだった。


「はう。少し、運動しに出かけないか」


「うんどー?」


「ああ。ぱぱといっしょに身体を動かそう。ふゆさんもぜひ」


「あたし、すこぶる運動苦手です……」


「ふふ。だいじょうぶですよ。公園に出て楽しく身体を動かせば、カロリー消費なんてあっというまです」


 にこりとさわやかに微笑まれても。


「そんなかんたんだったらこんな生涯にわたって苦労してないし……」


「ほら、そんなこと言わないで」


 片手をはうの、片手をわたしの腕にからめ、聖さんが立ち上がる。


「こんなときのために、トレーニングセットは準備済みです」

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