リステディア創世記〜転生した俺はチートな地球文明で革命を起こす〜
ねこあし
【第一章】革命と創生
第1話 破滅と新生
暗黒の星。
それは、遥か宇宙の果てから、ただ黙々と地球へと向かってくる巨大な質量体だった。
地球の十分の一にも満たないその星の残骸は、しかし、人類が築き上げた文明を消し去るには十分すぎるほどの破壊力を秘めていた。
アメリカ、NASAの本部。
モニターに映し出される、近づく星の残骸。
それは、まるで漆黒の瞳のように人類を見つめ、静かに、だが確実に破滅の時を告げていた。
科学の粋を集めた人類も、この絶望的な事態にはなすすべがなかった。
「どうするんだ、ジェイク! このままでは、地球は……!」
白衣の科学者ジェイクは、虚ろな目ですべての計算結果を凝視していた。
「ダメだ。あらゆる手段を試したが、軌道を変えることは不可能だ。これが……人類の終焉か」
彼は、愛する家族の顔、そして何より、人類が数万年かけて積み上げた知性の集積を思い浮かべた。
知識は、この世界を救えなかった。
だが、この知識こそが、人類が唯一宇宙に誇れる遺産だった。
『もし、次に機会があるのなら。もし、この知性が、別の場所で、別の時間で、誰かに託されるのなら――その時は、この過ちを繰り返さないでくれ。知識を、ただの力としてではなく、創世の礎として使ってくれ』
彼の心の叫びは、虚空に消える。
別れを告げる時間だけが、残酷なほどゆっくりと流れていく。
そして、その時は来た。
空を覆い尽くすほどの星の残骸が、地表へと激突する。轟音は存在せず、ただ静かに、星の残骸は地球を呑み込んでいった。
大陸は粉々に砕け、海は蒸発し、大気は宇宙へと散り散りになる。
人類の文明は、その歴史のすべてを無意味なものに変えられ、一瞬にして消滅した。
その光景を、ただ一人の存在が静かに見つめていた。
銀河系のすべてを統べる神。
彼にとって、地球は数ある星の中の一つに過ぎなかったが、そこに住む生命体――人類の知性と、その文化の多様性は、興味深いものだった。
滅びゆく地球を見つめながら、神はふと、手を差し伸べた。
粉々に砕け散った地球の欠片が、神の光の力によって集められていく。
まるで時間を逆行させるかのように、大陸は再び形を成し、海は満ち、大気は再生されていく。
神の力は、物理法則を捻じ曲げ、地球を新しい星として創り変えていった。
だが、かつての地球とは少し違う。
「……彼らが、今度こそ美しい文明を築くことを願おう」
神はそう呟き、その星の核に、自らの持つ『魔素』を流し込んだ。
魔素は地球のすべての物質と結びつき、新たな星の生命線となった。
その星は、かつての面影を残しながらも、まったく新しい存在として、宇宙に光を放ち始める。
人々は、この神によって再生された星を『リステディア』と呼ぶようになる。
時が流れ、リステディアでは、魔素の恩恵を受けた文明が驚くべき速度で発展した。
人々は魔素を利用し、魔法という力を使うようになった。
だが、それは限られた者だけの特権だった。
魔素を操る力は、特別な血筋――すなわち、貴族にしか与えられなかった。
平民は魔力を持たず、貴族に支配される世界が築かれていった。
しかし、歴史の大きな流れに逆らう、たった一つの奇跡が起こる。
辺境の村に住む、名もなき平民夫婦の間に、一人の男の子が生まれた。
彼の名はレイド。
貴族ではない、魔力を持たないはずの平民の血を引きながらも、その身には、宇宙の法則すら歪ませかねない、膨大な魔力が宿っていた。
両親は、レイドの存在が貴族に知られれば、必ずや彼を権力のために利用しようとすることを悟っていた。
「この子の力は、私たちで守らなければ……。この子が、いつかこの不公平な世界を変える『希望』になるかもしれない」
「ええ。誰にも気づかれないように、この子を育てましょう」
両親は、レイドの力を隠すことを決意した。
平穏な日々の中で、レイドは成長していく。
彼の内に秘められた魔力は、誰にも知られることなく、静かに、だが確実にその輝きを増していった。
これは、滅びた地球の記憶を持つ一人の少年が、魔法と科学の力を融合させ、新たな世界を創り上げていく、壮大な物語の始まりである。
***
本話の表現意図
レイドの行動原理を、単なる「チート転生」ではなく、「滅びた文明の最後の使命を背負った者」として深め、後の孤独や倫理的な葛藤の伏線としました。
レイドが背負う力の「重さ」と、彼が平民から革命家へと至る動機付けを強化し、物語の根底にある「希望」のテーマを導入しました。
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