第5話-臆病者たちの野心-
そこは、紫の床があった空間があったところと少しだけ似ていた。そんな感覚。けど違う点もいくつかある。床は半透明なのは変わりないが、黄色く輝いていた。空は、
今までの不気味な雰囲気とは打って変わって、そこは幻想的であり神秘的でもあるから思わず、〈美しい〉と声に出してしまいそうだ。ただ、もちろんそれだけでは無かった。あちこちに点在するように部屋が用意されており、ほとんどの部屋は扉のようなもので、遠目のため、近くで見ない事には判断できないが硬く閉ざされているように見える。ゆっくりと探索はしたいがそう云うわけにも行かない。
ここにも、あの黒い生き物があちこちに待ち構えていた。
「ねぇ、モノリス。聞いても良い?」
もしかしたら、彼なら奴らの存在が分かるかも知れない。そう思い、モノリスに尋ねてみた。
「・・・どうした?」
「あの生き物は、一体何なの?」
「あれは、『シャドウ』。彼らもまた、元は君と同じ人間だったんだ。」
「え・・・?」
やはり、彼は知っていた。あの黒い生き物はシャドウ。ただ、それ以上に驚いたのはシャドウの正体。その驚きは隠せなかった。続けてモノリスは、こう告げた。
「彼らも、君と同じくここに迷い込んだ。もしくは作為的に入り込み、目的を果たせなかった者達。あのような姿になっては、もはや人の記憶など抹消され、この世界をただ幽遠に彷徨い続ける。」
「私を・・・襲うのは?」
「君が憎いんだ、本能的にね。人の姿をして、目的を果たそうといている君がね。」
ようやくシャドウの目的がわかった気がする。そして私を襲う理由も。私に噛みついた事も。私の何かが欲しかったのだろう。その何かがまではわからないが。この世界の人の成れの果て。それがシャドウ。本来の自分の陰なる存在。けれど人間だった頃の自我はそこにはもう無く、本能に赴くまま何かを求めている。
それはきっと、何か救いの手を差し伸べているのではないのだろうか。余計にシャドウに対して感傷的になってしまう自分がいた。
「そう・・・、可哀想な存在なのね。」
「同情も良いが心を揺らす必要は無い。近付けば喰われ、やがて君もあの姿になる。もっとも、それが君の結末なら私はそう認識しよう。」
やはり彼もシャドウに対しては、否定的だった。彼らは成る可くしてなってしまった。そう言いたげな表情をフード越しでモノリスは語った。
けれど、それで私がシャドウに喰い殺されるのは別の話だ。私の目的は、あくまでも真実を知りたいだけ。
「なら、その時は極上のBGMでエンドロールを流してね。」
だから、私はモノリスに冗談を溢す。当然、彼は私の言葉に疑問を持っていた。理解が出来ない。そう言いたげな表情で。
「・・・なぜだ?そんな願いは、不可能だな。」
「だからよ。」
そう、私はここで『私を殺す』わけにはいかない。
「私はトウマを見つけるまで、こんなところであの姿になるなんて譲歩してもゴメンよ。」
これから起こる事も、待ち受けている事も。時には受け止めて、時には振り払い。あなたを見つける為に奥へと進まなければならないんだ。
この空白の世界では・・・。
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