Ⅳ 癒し

 一階の校舎入口。もう生徒たちは帰ったようで、閑散としている。

 崇文たかふみは自動販売機で缶コーヒーを買った。校内の自販機の為か、ちょっとだけ安い。学生には有難いだろう。


 うん、分かっている。現実逃避したいだけだ。


 無記名投票とかいうけど、白虎もドラゴンも何か魔法とか使えそうだしなあ。誰が書いたか見抜いてくるかもしれない。

 そもそもどうして普通に日本語を話せるんだろう。

 考えていると頭が痛くなってくる。普段買わない糖分マシマシのコーヒーに口をつける。甘い。思わず舌を出したところ、ふと目があった。


 犬に。


 いや失礼。犬じゃない。犬頭の小さな子供だ。教室にいた一メートルほどの犬頭の女性ではない。もっと小さい。五、六十センチほどか。Tシャツとジーンズのショートズボンから、明るい茶色の毛がもさりと出ている。


 かわいい。


 頬が緩む。崇文は猫も好きだが犬派だった。目があった犬頭の子がこちらに近づいてくる。

 なんだろう?と思ってたら、そのまま飛び込んできた。


「うぐっ」


 頭突きである。下腹に入った。体重自体は軽かったが、一瞬息がつまる。


「何見てんだよっ!」


 ぐるる、と歯を剥き出して警戒する。その姿も子犬めいて可愛らしい。息を吐きながらも警戒を解こうと微笑んで見せたが──。


「気持ちわるっ」


 逃げられてしまった。ひどい。軽くショックを受けた崇文だが、知らない校舎を小さな子供が走り回ったら危ない。ここで待っているよう親御さんに言われているかもしれない。

 崇文は後を追った。

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