異世界交流高校のPTA

綾邦 司

Ⅰ 誰か助けて

 右に炎。左に青白いプラズマ光。教室の窓に赤と青が反射している。


 どうしてこうなった。


 鈴森崇文すずもりたかふみは溜め息をつき、目を左右に泳がせた。

 右隣りには、高級そうな赤紫のスーツ──そんな色、どこで売ってるんだ?──を着こなしたドラゴン


 いや、ウソは言ってない。


 すらりと伸びたスーツの袖から見える手は、赤い鱗が綺麗な長い爪の手。そして襟から伸びている長い首、そして角の生えた細長い顔。蜥蜴っぽいが角の生えた蜥蜴なんて見たことがないし、威圧感が違う。闘気みたいなエフェクトが陽炎のように揺らめいて見える。縦長の瞳孔は崇文たかふみの左隣りにふんぞり返っている人物──人じゃないけど──に向けられている。

 和装姿だが、こちらは虎だ。毛並みは白い。ホワイトタイガーというやつか。そういえば、ホワイトタイガーってどこの動物園にいたっけ。名古屋だったか?


「だから、余こそが相応しかろう。諸種族の王者たる竜族、その長たる余がな」

「何言ってやがる。それならワシだって平原の種族の王だ。お前なんぞに上に立たれてたまるか」


 ふたり?とも体が大きい。座っていても二メートル近い。頭の上で声のやり取りが響くが、ドラゴンの口からは喋るたびに火が出て熱い。昔アトラクションで、ファイヤーショーを目の前で見た時みたいだ。あれは娘がまだ九歳の頃だったか。妻もまだ生きてた頃だ。

 対して、虎の方も負けていない。目を怒らせ、白と黒の毛並みから青い光が出ている。これって電気かな。イヤだなあ、スマホ大丈夫かな。会社のPCの認証アプリ入ってるから壊れると大変なんだよ。


 誰か助けて。


 崇文が切実な思いをこめて教室内を見回す。人間と、人間以外の何か──崇文と同じ新入生の保護者のはず──が、戸惑った様子で顔を見合わせていた。

 その奥、教壇に立つ嫌味なほど顔が整った青年だけは、面白そうな表情で崇文たちを見ている。


 おい、あんた。教師だろ。助けろよ。


 そう叫びたいが、隣りの竜虎を刺激したくもない。


 どうしてこうなった。


 崇文たかふみは再度、溜め息をついた。

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