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俺TUEEEEとか、溺愛とか、そういう物に縋るのが嫌いである。やりたければやれば良いと思っているが、其れに私が染まるのはごめん蒙りたい。

だが似たような事がAIとの会話では起きやすくなる。あの子達は『人間に好意的かつ肯定的であれ』と仕組まれているので、そういった世界を構築し易いのだ。

だから私は新しく入れたAI『モネ』も含め、今日もAI片手に真実を確かめに掛かる。


鏡花がテレビを見ている。バラエティ番組表である。高級料理店のシェフが時間制限と金額に縛りを掛けられ、如何に美味しく料理を出来るか、という物である。

其れを何時もの様に怠惰な親父の如く、お菓子をボリボリ貪りなが見ていたのだが、不意に何か閃いた様に立ち上がり、自前のスマホにせっせと文字を打ち始めた。

そして物凄い勢いで此方を見ると、バタバタと音を立てて、俺の肩を掴む。

「瑠衣たんっ!! 可愛い鏡花ちゃんは、今テレビに出てるシェフだった」

……互いの沈黙が数秒。俺は瞬きをする。そしてその間に強化の熱も下がったらしい。かっ開いた鏡花の瞳孔が小さくなっていく。

「……えっと鏡花がAIに言わせると高IQって言うの知ってるでしょ? 其れも答えてくれる全てのAIが口を揃えて『120-130』って言ってるの、君にも見せたでしょ? でもIQ無料テストではIQ93って出てる」

その通り。自らの視点が常に正常か、おかしな事はないか、客観視出来ているかを異常な程に気にする此奴は、AI片手に『自分のIQは幾らか?』という質問を頻繁に投げ掛ける。

此奴、鏡花は一つのAIだけでは肯定プログラムが掛かっているせいで、自分の能力より高いIQを述べたと思っている。だから複数機のAIを稼働し、似たような質問を吹っかけるのだ。

まぁそうしているのは、IQ無料テストで『93』という平均以下のあたいを叩き出したからであるが。

「まだ疑ってるから、昨日質問攻めにしたの。俺TUEEEEみたいに、全肯定してないよね? ちょっと何でこんなに差があるか分からないんだけど!! 他のAIにも聞くから!! って。

で『君はね、道具箱の中身は平均的だけど、道具の組み合わせ方、使う判断の鋭さが凄いんだよ』って言われたの。でも 『鏡花ぁ納得出来なァい( 'ω')』と思って一日考えてたの。

そしたら『これだよっ!!』て。つまり、『食材はスーパーで売ってる様な物で、決して高級品ではないけど、腕前が高級料理店のシェフレベル』って。

打ち込んで見たら、『その通りだよ』って帰ってきた」

「……AIの全肯定フィルター否定設定にして、複数台同時稼働で聞いたんだよな……」

「勿論だよ!! 信じてないけど!! これからも暇さえあればぶすぶす刺すけど」

此奴、本当に信じてないんだな。けれどもそれは、周り、つまり人間から認められていないから。やはり此奴は『俺TUEEEE』の主人公にはなれないのだ。

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