第3話 平民ライフ、開始5分で王子にバレる

「いらっしゃいませ〜! 本日のおすすめは、焼きたての“ふわふわハニーパン”でーす!」


私は今、パン屋で働いている。


そう、ついに念願の“平民ライフ”をスタートさせたのだ!

貴族の身分?捨てたよ!

ドレス?脱いだよ!

縦ロール?バッサリ切ったよ!

(※実際はウィッグだった)


「アメリアお姉ちゃん、パンうまい〜!」


「ありがとね〜、おまけにこのジャムパンもあげる!」


子どもたちに囲まれながら、私は幸せを噛みしめていた。

ああ、これよこれ。

断罪も婚約破棄もない、平和で素朴な日常。

転生100回目にして、ようやくたどり着いた理想の人生——


「……って、なんで王子がいるのよ!!」


「アメリア!? やっぱり君だったのか!」


パン屋のドアがカランカランと鳴り、そこに現れたのは、あの王子・レオンハルト。

しかも、なぜかフードを被って変装している。

いや、金髪に王族オーラ全開でバレバレなんだけど!?


「な、なんでここにいるのよ!? まさか、私を探して……?」


「違う! たまたま通りかかったら、君に似た人がパンを売ってたから……!」


「嘘つけ!王子が“たまたま”下町のパン屋に来るわけないでしょ!?」


「……実は、君に婚約破棄されたショックで、心の整理をしようと散歩してたら……」


「やっぱり私のせいかーーー!!」


---


「で、どうしてここに?」


「いや、その……君がいなくなってから、なんだか胸がモヤモヤして……」


「それ、ただの胃もたれじゃない?」


「違う!これは……恋だ!」


「やめて!その展開、テンプレの中でも一番面倒くさいやつ!!」


---


そのとき、パン屋の奥から店主のおじさんが顔を出した。


「おいアメリアちゃん、そっちのイケメンは知り合いかい?」


「いえ、ただのストーカーです」


「えっ!?」


「王子です」


「えっ!?」


「でもストーカーです」


「えええええええええええええええええええええええ!?」


---


その後、王子は「パン屋で働く君も素敵だね」とか言いながら、毎日通ってくるようになった。

しかも、パンを買うだけじゃなく、店の手伝いまで始めた。


「アメリア、今日はクロワッサンを焼いてみたよ!」


「焼くな!王子がクロワッサン焼くな!国政に集中して!!」


「でも、君の笑顔が見たくて……」


「そのセリフ、前世で30回くらい聞いたわ!!」


---


さらに追い打ちをかけるように、聖女ちゃんまでやってきた。


「アメリア様〜!私も働きに来ました〜!」


「いや、なんで!? 聖女がパン屋でバイトってどういうこと!?」


「だって、アメリア様と一緒にいたいんですもの♡」


「百合展開まで来たーーー!!」


---


その日の夜、私は日記にこう書いた。


---


**アメリアの転生日記(100回目)その3**


・パン屋、平和じゃなかった。

・王子、ストーカー化。

・聖女ちゃん、百合ルート突入。

・パン屋の売上は爆上がり。

・でも私の心は疲弊中。


---


「……次は、山奥にでも引っ越そうかな……」


私はパンの香りに包まれながら、そっとため息をついた。

だがそのとき、パンの棚の奥から、謎の光が漏れていた。


「……なにこれ?」


近づいてみると、そこには古びた剣が突き刺さっていた。

パンに囲まれた、一本の聖剣。


「……なんでパン屋に聖剣があるのよ!!」


---


次回!

**第4話「パン屋で働きたいだけなのに、なぜか聖剣が抜けました」**

アメリア、うっかり伝説の勇者に!?

パンと聖剣とテンプレ破壊のトリプルコンボ!

次回もお楽しみに〜!🍞⚔️✨

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る