ギルドにて
ギルドの重厚な扉を押し開けると――
ざわつき、怒号、歓声、装備の金属音と魔法の光、そして新しい冒険者たちの期待と焦りが渦巻いていた。
壁一面クエストボード、中央には巨大な受付カウンター。
種族も装備も見たことのないプレイヤーがひしめき合っている。
「ん……すごい」
「そうだろ。ここが冒険者ギルドだ。最初はクエを受けて金を稼ぐのが基本だぞ」
「にぃに、ギルドって楽しい?」
「まあ、楽しい……こともある」
(たまにとんでもねぇ面倒事に巻き込まれるけどな)
――その瞬間。
ギルド全体の空気が一気に変わった。
「おい……見たか?」「ギアス族って噂の……?」「ユニークの……唯一のプレイヤー……」
視線が、刺さるように突き刺さってくる。
ゴシップのような囁きが止まらない。
「にぃに……なんか見られてる」
「あぁ、気にしなくていい」
気にしてるのはこっちだけどな。
どう考えても原因はステータスだ。
初日で世界ランク1桁に入ったせいだし、そりゃ目立つ。
「いらっしゃいませ冒険者さま。ようこそギルドへ」
受付嬢が柔らかい笑顔で出迎える。
ただ目の奥が完全に「危険物を見る目」になっている。
「冒険者登録をお願いしたい」
「承りました。では、こちらの水晶に触れていただけますか?魔力測定を――」
水晶に触れた瞬間、水晶が光り、震え、悲鳴をあげて粉砕した。
パァン!!
ギルド内の時間が止まる。
「おい……水晶割れてね?」「初めて見たんだけど」「また伝説増えたぞアレ」
受付嬢(固まった)
俺(固まった)
マリア=ピロリ(ポカン)
「……………あの、すみません」
「い、いえ、大丈夫です……記録は取れていますので……………」
受付嬢は震える手で紙を差し出す。
そこには、
[冒険者登録:クオリア/ランク SSSS(仮)]
と書かれていた。
「にぃに、すごい」
「……いや、すごくない。これはすごすぎてダメなやつだ」
「それでは!ギルドマスターが!ぜひともお会いしたいと!申しておりまして!!!」
受付嬢が満面の笑顔(圧)で案内してくる。
マリア(ピロリ)が袖をつまんでくる。
「にぃに、ギルマスって怖い?」
「さぁな……俺も会うの初めてだ」
ギルド奥の巨大な扉が開く。
そこにいたのは――
黒いローブを纏い、伝説級の魔装備に身を包む女性。
瞳の色は深紅、覇気が空間を震わせている。
「来たか、ギアス族」
低く、よく通る声。
「私はギルドマスター、リヴェリア・ナイトフォール。
貴様の存在は世界の均衡を乱す可能性がある」
周囲に護衛が現れる。
そこらのプレイヤーとは比較にならない“強者”ばかりだ。
完全に敵対ムード――かと思いきや。
「……だから、我々のギルドに所属しろ」
え?そっち?
「ギルド全体で貴様を保護し、育成し、戦力として迎えたい。
断るのなら――敵に回る覚悟をして話を続けろ」
「にぃに、なんか怖いけど、ちょっと嬉しそう」
「嬉しくねぇぞ!?目の奥が“逃がさない”って言ってるだろあれ!!」
沈黙。
緊張。
ギルマスの瞳がこちらを射抜く。
「返答しろ、ギアス族クオリア。貴様は――」
「――ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!!!!!」
突然ギルドの窓を突き破って飛び込んできた者がいた。
派手な羽根付きマント、金色の髪、王家の紋章。
そして叫ぶ。
「クオリア先輩は!俺のギルドに所属するんスよぉぉぉ!!」
ピロリ「……ストーカー」
クオリア「お前、来たのかよ……!」
ギルマス「…………誰だ?」
ギルド中の注目、爆発。
混沌、開幕。
――こうしてクオリア争奪戦(物理)が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます