Hexe&Espada──忘れられた神話が世界を反転させる──

@Zara1211

序話 魔女と刃

 ――世界が軋んでいた。


 炎と水が螺旋を描き、風が砂を巻き上げ、氷が壁を覆い、白き雷が空を裂く。そして光はすべてを呑み、闇が光を喰らう。


 ――矛盾と絶望が渦巻く場所。


 暗闇の底で蠢く何かが、地上へ這い出ていた。


 万物を喰らい尽くす災厄。その前で――


 一人の剣士が血に塗れながら立っていた。

 腕には、ひとりの魔女を抱いて。


「君は、生きるんだ……」


「私を置いていかないで……」


 息は途切れ、命の火が揺らぐ。

 それでも、その手は決して離れなかった。


 世界の異物が牙を向ける。


 火は怒り、水は揺れ、風は嘆き、土は見守り、氷は閉ざし、雷は叫び、闇は黙し、光は剣のように閃いた。


 ――世界が悔いていた。


 剣士は魔女の手を握り返し、振り返る。

 魔女は泣きながら、その名を呼ぶ。


「俺たちがヤツを………止める……だから後は任せた」


 その光景を、一人の灰衣の男が静かに見つめていた。


 灰衣の男は悟る。救えぬものがあると。

 そして――黄金の光がすべてを呑み込んだ。


 ――こうして神話は、終わった。


 だが、世界はまだ死んでいない。


 これは、その続きを選ばされた異端の物語。

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