第2話 片道切符



セイカがいた空間は誰かの仕事場だった。


戸惑う暇もなく銀髪の女性が


「連れてきましたよ!」



四十代後半くらいのスーツを着たおじさんが


「え?みたところ中学生っぽいけど……?」


「ナズナ君、誘拐でもしてきた?」



セイカは心からの戸惑いを隠せない様子であった。



それは至極当たり前のことであり、戸惑わないほうがおかしい。


自○をしようとしていたところに


いつの間にか背後に女性が立っており


気がついたらこんな仕事場にいたのである。



この戸惑いの中で分かったのは


この銀髪ロングの女性が『ナズナ』という名前であること。



ナズナがおじさんの方へ移動する。


それに伴いセイカも目線を移動する。



その時おじさんの机上名札が目に入る。


そこにははっきりと



『所長』



と書いてあった。


つまりこの部屋は所長室だ。



ナズナが口を開く


「この子、私に似てるんですよ」



所長は一瞬戸惑いを見せたが


すぐにその言葉の意味を理解したようだった。


「君、この怪異事務管理所に入りたいか?」


「危険が沢山の仕事だ。自分で決めればいい」



「……」


セイカは言葉を詰まらす。


だが次の瞬間



「私の居場所があるなら!!どんな危険な仕事でも遂行して見せます!!」


「だからッ!!ここで働かせてほしいです!!」



所長は驚嘆しているようだった。


「本当にいいんだね?」


「はい!」



黙っていたナズナが口を開く


「そういえば所長、名前聞いて無くないですか」


「あ、確かに」



「えっと、琴乃ことのセイカです」



所長は軽くうなずいていたが、ナズナは訝しんでいる様子だった。



ナズナはどこかから大きめの封筒を取り出した


封筒の中から一枚の紙を引っ張り出した。


「おかしいな。このクラス名簿には蓬莱ほうらいセイカと書いている」



「あ…そうです。蓬莱セイカです」



ナズナの口角は微かに上がったように見えた。


「私は雪零せつれいナズナ」


「所長。採用ってことでいいんですね?」


「まぁ、うん」


「ほら、じゃあこっちに来て」



ナズナはセイカの手を引っ張りどこかに連れて行った。



____________________________________



「ここは?」


「更衣室だよ」


「取り敢えずこの仮の制服着てね、学校のは預かっとくから」



ナズナは椅子に座る。


「セイカちゃんが着替えてる間、基本的な怪異事務管理所についての説明をするね」


「はい」



「まず、怪異事務管理所っていうのは戦後にできた政府内でも限られた者のみが知る機関なんだ」


「まぁ戦前にも■■■っていう組織があったんだけどすぐ崩壊しちゃったね」



セイカは歴史の授業を聞いている気分になってきた。



「この事務管理所、怪務局かいむきょく祓務局ふつむきょく祭務局さいむきょくの三局制でやってるんだ」


「それでね……」


セイカが着替え終わった後も結構な時間話は続いた。


頭に入ってきたのは


乙種怪異は弱い、甲種怪異は強い、特甲種特類怪異はありえないほど強い。


ということだけだった。



そしてこれから初任務があるそう。


それに同行してくれる同年代くらいの先輩が来てくれるらしい。

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