1000年間、魔術を極めたのに死にそうなんですけど? 〜不老不死なのに余命宣告されました〜

@hoshikuzunohude

第1話 今年中に死ぬらしいです

「おや、嬢ちゃん……今年中に死ぬよ。」


「へ……?」


私は耳を疑った。

買ったばかりの食材袋がズルッと地面に落ちる。


意味が分からなかった…だって私、不死身なんだよ!?


首チョンパされても粉々にされても数秒で復活!

1000年生きてきて、ちゃんと死んだ記憶が一度もないのに!そりゃ死んだら記憶も何も無いけど!今はそれどころじゃなくて!


「死相って……死ぬ方の死相ですか!?見間違いだったり、意味が違ったり…」


「いんや、死ぬ方で合っとる。しかも死相が100個も出とる。新記録だべ。」


「………はひ?」


私はその場で頭を抱えた。


「私、不死身なのにぃぃぃぃ!!??」


「それでも死ぬよ。どんまい。」


占いジジイはニコニコしながら、追い打ちの一言を口にした。


――死にたくないよぉぉぉぉ!!!!!



 * * *



私はフィーナ・レインヴェル。歳は1000といくつか。顔は可愛いと思う。それなりにモテるし、最近は髪を流すようにしたからね。多分大人な魅力があふれてるはずだ。住所は内緒。好きな物は果物全般と可愛いもの。で、嫌いなものは努力しない子。ちなみに職業はしがない、魔女をやらせてもらっている。


私はなんとびっくり、弟子が9人もいる。その内8人に家出されるっていう快挙を果たしたけど皆可愛い弟子たちである。ちなみにその内の一人は魔導書に名前が残るぐらい有名な功績を残してから死んだし、二人は魔族と人族の王族で、ちゃんと民を導いたって話を聞いた。他の子達も活躍を偶に耳にするけど、今はそれは置いておこう。これだけ語れば十分私の凄さは分かるよね?

まぁ、私の功績のことなど今はどうでもいいのだ。何せ…


──どうやら私、今年中に死ぬらしいのだから。


「あ、魔女のおねーちゃん!」


「ん?」


ここは人族の住む街だ。森に近いので私はよく買い出しにはこの街を使っている。そのためか案外顔見知りの人は多くて……あの子誰だっけ?まぁいいや。丁度いい。


「ねぇ僕?おねーちゃん今年中に死ぬらしいんだけどどう?死にそうに見える?」


「んー?よく分かんない。でもおねーちゃん今日はちょっと顔色悪いね!」


それはまぁまさしくその予言のせいであるのだが今はいいだろう。

というか子供に聞いてもそりゃ分からんよね、うん。こういう時は――――


私は帽子をひっくり返し…そのフサフサの球体を引っ張り出した。


「ねぇ、モチ~聞いてよ~…」


『なんだよ。人前で話しかけんな。変に見られんぞ。』


そんな強気にダンディな声で言い放つのは私の使い魔であるモチだ。

モチはピンク色のフサフサな毛と額の赤色の宝石が特徴のカーバンクルである。


「あのね、それがね、私…今年中に死んじゃうみたいなの!」


『はぁぁ?ありえねぇだろ。だってお前…』


「うん、そう、なんだけど…その可能性が1%でもあるって思ったら…うぅ…」


私の手に抱えられたモチはやれやれ、とでも言いたげに溜息を付いた。私だって…自分が死ぬのはイメージできないけど…!


『ま、俺的にはどっちでもいいぜ?お前が死んでくれれば解放されるわけだしな。』


「そんなぁ~…」


冷たい使い魔だ。私は遺憾の意を示すべくそのプニフワな身体をコネコネコネしておいた。

コネコネコネコネプニプニプニプニ…



 * * *



『いい加減にしろよ。』


ググっと、小さな肉球が私の手を押した。そこで私の正気が戻ってきた。どうやら無意識に帰路を辿っていたらしく既に私の住む家のある森まで入っていた。


「ねぇモチ。なんか私今年中に死ぬって言われた気がするんだけど」


『あぁその通りだぜご主人様。おっと、もう現実逃避はやめるんだな。』


うぅ…でも、あくまで予言だもん。まだ死ぬと決まったわけじゃ…


「う…ん!?」


何もない平らな道で突然足がもつれて――


ゴロゴロゴロゴロ!!


痛い! 枝刺さった! いててて!


しかも止まらない!?


魔術で止めようとしても……何故か発動しない!?


「あれ……この先って……」


『ご主人様よ……まさかだけど……』


「崖ぃぃぃぃぃぃ!!??」


嘘でしょぉぉぉぉ!!!???もしかして私って今日死ぬの?なんで?こんなの…こんなのって…


「あってたまるぐばふぇ!?」


ゴシャ…と、何かが潰れる音が静かな森に響く。そして…私の意識が…




――紐なしバンジー、ごちそうさまでした。


「…生きてる…よね?」


『あぁ。よく守ってくれたな。褒めて遣わすぞご主人様。』


「はふぅ…」


私は傷一つない自分の身体を舐めまわすように観察する。可能性として考えていた一つはどうやら否定できそうだ。

だが…そんなことよりも…


「ねぇ、モチ。」


『…どうしたよ、ご主人様。』


「占いって、当たるのかな…?」


死にたくないよぉぉぉぉぉ!!!



 * * *



崖から落ちただけに飽き足らず、遭難までしてしまった私とモチは共に数時間森の中を彷徨いようやく知っている道に出た。いやぁ、探知魔法を使えばいいとは、やっぱりモチは賢いねぇ…

それはさておき、私には知らなければならないことがいくつもある。


「ねーぇー、何か知ってること無いのー?」


『っ、うっとおしいんだよ!その頬を突くのやめろや!』


「やめたら教えてくれるの~?」


『うぜぇからやなこった。』


「えー!?私ほんとに死んじゃうよ?いいの?良くないでしょ?そしたらモチ一人きりだよ?」


それは…多分この子が知っているであろう私が死ぬ理由。根拠はないが…どうせ、知ってるのに教えてくれないだけだ。いつものかまってちゃんである。私はそれに対抗してメンヘラムーブをかましてみたのだが…イマイチ反応はよろしくない。


『ったく……めんどくせぇ……夕食増やしてくれんなら考えるぜ。』


「それは私が決めれることじゃないからルカに聞いてね。私はいいから…じゃ、教えて。」


『ちっ…しゃーねぇなぁ…』


私の手のひらの上で、小さなカーバンクルが腕を組む。

全く、贅沢な使い魔である。だからそんなにプヨプヨになるんだぞ。


『解決方法は全く知らねぇけど、今の状況の理由なら分かるぜ。』


「理由?」


首を傾げるとあぁ、と答えカーバンクルが続ける。


『お前、世界に嫌われてんだよ。呪いを持ってるからな。』


「え…?なんで?」


確かに…私の身体には、『不死王の呪い』がある。でも世界に嫌われるって、何…?

私何かしたっけ?心当たり全く無いんだけど!?


『他の呪いならよかっただろうが…そいつだけはダメだ。天神様達も、世界も、何もかもが恐れ嫌悪しているからな。』


「……つまり誰かさんのとばっちりというわけですかそうですか。」


『…まぁ、そうだな。』


でも…原因が分かるなら対処法も………ふと疑問が浮かんだ。仮にモチの推測通りだとするならば…


「なんで私、今日という今日までは世界に認知されてなかったの?」


『あぁ、それはだな。』


モチが答えを言う前に一度静止する。こういうのはせっかくならば自分で考えたいものだ。


嫌った、ということは私を認識した、とも言い換えられる。ただこの1000年の間、私は一度たりとも今日みたいなことは起きちゃいない。そこから察するに…


「……あ…」


一つ、一つだけ思い当たる節があった。ただそれだとするなら…とんでもなくあほらしくて…間抜けな理由である。


「ねぇ、私さ、つい一月ぐらい前に…『拡声魔術』の練習してたと思うんだけど…」


『そうだな。』


プクク…と、笑いそうな顔で、モチが返答する。…どうやら、私の嫌な予想は、あっているらしい。


「まさか自分から自分の存在を…通報したってこと?」


ゲラゲラと笑いながらモチが頷く。

あまりにもあほらし過ぎて泣きたくなってきた。



 * * *



「ルカァァァ!!!!」


私は木造建ての我が家に入ったと同時、今いるはずの弟子の名を叫んだ。


「はいっ!なんでしょう!魔女様!」


返事と共に可愛らしい栗色髪の少年が目に入った。私は勢いのまま少年へ抱き着く。


「ルカぁ…会いたかったぁ…」


「魔女様、くすぐったいであります…」


抱き着いてるからよく見えないけど耳が赤い。お…照れてんな…?ふむ、いつものように私の魅力に当てられて…


「じゃない!」


「わわっ!」


「ルカ!旅に出るよ!」


危ない、ルカの可愛さに危うく本題を忘れるところだった。

私は家に着くまでに考えていたことをルカへ伝える。


「きゅ、急になんでありますか?」


「あのね、私死ぬみたいなの!今年中にね!」


「……え?魔女様、いなくなるですか?」


じわじわと、ルカの目尻に大粒の涙が…

ありゃ…伝え方間違えちゃった。


『…まだ確定したわけじゃないがな。』


仕方なしと言った様子でモチが付け加える。モチもルカの涙には弱いのだ。


「そう。だからね、死なないために旅に出るの!」


「…なんで旅ですか?」


当然の疑問である。色々省いて言ったからね。


「それはね、えっと…」


『こいつがやらかしたから神さんに目付けられたんだよ。』


「ちょ、モチ!」


私がいい具合に言いくるめようと思っていたのに馬鹿正直に言うんじゃない!

えっと…でもルカは私の言うことを基本的には信じてくれるから…えと…


「まぁ、その…なんていうかね、魔術の練習を派手にやりすぎたというか…」


『やりすぎって…どこのどいつが夜中の森の中で自分のことを「私は美少女~」って歌うんだよ。あんなの見ている俺が恥ずかし』


「モーチー…!」


私が睨むとようやく黙ってくれた。……なんか、ルカがすごいうずうずしてるんだけど…


「聞かせないからね?」


「はい!僕程度が聞くにはまだ早いと思います!それに、魔女様が美少女なのは皆分かっていると思います!」


キラキラした目でフンスと鼻を鳴らしながら自慢げに告げてくる。…嬉しいんだけども…それじゃいつか聞かせてって言ってるじゃん!


「…とにかく、色々あって世界に嫌われちゃったから好かれるための旅をしようってこと。着いてきてくれる?」


もう色々とめんどくさくなったので私は要件だけ端的に伝えた。


「はい!であります!いつ出立ですか?」


「…早い方がいいからね。明日、明日朝出立よ。」


「了解であります!魔女様の支度は自分がやればいいですか?」


「うん…お願いね〜」


今日は色々あってとても疲れた…

明日からは、久々の旅だ。


――って、ルカが既に私の荷物を詰め始めてる。

ちょっ私の可愛い下着まで!?


「ルカ!! それは私が自分で!!」


「魔女様の大事なものは僕が守ります!!」


『……お前ら明日死ぬかもしれねぇのに何やってんだ…』


世界に好かれる旅、出発決定!



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