二話:新隊長着任しちゃった

隊舎の格納庫に機体を止めた後格納庫に降りるとヴァイス主任が待っていた


「よっ! お疲れ!」


「……ヴァイス主任もお疲れ様です。報告書を書くので失礼します」


「あっ! ちょっおい! ……たく仕方ねぇな仕事するぞ~お前ら!」


「「「ぅす」」」


 何か言いたげなヴァイス主任に気づかないふりをして足早に格納庫を去る、あそこにいてもいいことはない

 廊下を歩いていると隊員たちの話声が聞こえる


【うわっ帰ってきたよ】


【隊長戦死したらしいよ? あいつは別の所で戦ってたから生きてるらしいよ】


【隊長もパワハラ、セクハラしてたからせいせいするけど、あいつも死ねば良かったのに【使い捨て】なんだからさっさと『やつら』に特攻して死ねばいいのにね】



 等俺に対することを周りに憚られることなく話しているがいつものことだ気にしなくなった


「よぉ!!」


「カイルか……」


「おかえり! 無事で何よりだぜ! 隊長は戦死しちまったらしいけどお前が無事でよかった!」


 自室へと戻ろうとする俺に肩を組んできたのはカイル・ローグライト、俺と同じくパイロットで前の戦闘時の怪我で待機していた


「カイルいつも言っているが俺は【使い捨て】だ気遣いは」


「んなこと言うなよ! 二人しかいねぇパイロットなんだから! ダチだろ?」


「……お前と友人になった覚えはない、俺は報告書を書かないといけないから自室に戻る」


 そうカイルのやつに断り自室に戻ろうとしたのだがカイルは組んだ腕を話してくれない


「まぁ待てよ、隊長ががら空きになってそのことでヴァイスさんから話があるんだってよ一緒に行こうぜ!」


「……わかった」


 カイルにそう言われたので報告書を書くのは後回しにして隊長室へと二人で歩いた

 向う途中もカイルはうるさいくらい話しかけてくる

 兵器として使い捨てられる俺とは違い正規パイロットのカイルは俺をもっと奴隷みたいに扱っても不思議ではないのにカイルは俺のことを対等に扱う

 理由は分からない


「なぁなぁあの知らせ聞いた?」


「何の話だ」


「ゾルダのことだよ! 楽しみだなぁ~!」


「ゾルダ……ああ、新型機の」


「そう! 新型機ゾルダ! 全部隊に配備されるらしいじゃん、しかもゾルダは特化型が三種あるんだってよ!」


「らしいな、今までよりもすべての性能を上げた汎用タイプのゾルダ、パワーに特化したゾルダP、スピードに特化したゾルダS、防御に特化したゾルダBの四種あるらしいなパイロットが二人しかいないうちにもすべて配備されるらしいな」


「そう! なんだよ! 特化型ってさ今まで負荷が大きくてパイロット適正が高い人しか乗せてもらえなかったじゃん?」


「お前は確か……適正Bだったか?」


「ああ! だから汎用型しか乗れなくてさぁ!」


「Bでも充分高いだろう、大体はEかDでCですら珍しいだろ」


「そりゃ普通の部隊の話だろ? うちは特務隊だぜ? Bはないときついだろ~それにレクスはSじゃんか~!」


「だからだよ、だから俺は汎用型には乗れない特化型じゃないと機体がついてこれない」


「贅沢な悩みだよな、適正兵装も違うだろうししばらく訓練漬けかなぁ~」


「慣れるまでは今までと同じ機体で出撃だろう、訓練シュミレーターにはゾルダ追加されてるぞ」


「マジ!? じゃあ隊長室の話終わったら付き合えよ!」


「断る、報告書作成がある」


「報告書作成なんて後回しでいいじゃん!」


「ほう? 俺の前でそれを言うとはいい度胸だ」


「げっ! ヴァイスさん」


 報告書作成を後回しするように言うカイルの後ろから現れたのはヴァイス主任でカイルの肩を握っている


「えっとあはは~」


「ったく、隊長室で話するぞ」


 三人で隊長室のドアを開けると中には軍服を着た二人の女性がいた


「ヴァイス主任」


「おう、待たせたな二人とも」


「いえ」


 どうやらヴァイス主任と女性たちは顔合わせを済ましてるらしく親しげだった


「えっとヴァイスさんその女性たちは?」


「おう、新しい仲間だ喜べ!」



 俺たちを代表してカイルがヴァイスに尋ねると

 ヴァイス主任からはそう返ってきた

 仲間? 追加人員が来るとは聞いていないが


「新しく特務第零分隊隊長に任命されましたセラ・セリオスですよろしくお願いします」


「同じくオペレーター兼隊長補佐に任命されましたエリナ・リッターですよろしくお願いします」


 透き通った碧い髪の女性はセラ、銀髪の目つきが鋭い女性はエリナというらしい


 ん? エリナ? 聞き覚えがあるような


「え? リッターってヴァイスさんと同じですよね? 家族ですか?」


「ん? ああ、エリナは俺の嫁だ」


「ええ~!!? ヴァイスさんって結婚できたんですか!?」


「おいカイル、失礼だぞ」


「その通りだこの野郎! 結婚してるんですかなら兎も角できたんですかってどういう意味だ!!」


「ヴァイスさん痛い! 痛いです!」


 迂闊なことをいったカイルはヴァイス主任にヘッドロックをされて泣きそうになっていた

 迂闊なやつめ、ヴァイス主任だって30だ結婚くらいするだろ


「ヴァイス、その辺にして久しぶりねレクス」


「…………お久しぶりですエリナ司令」


「もう一度は軍を辞めた身よそんなかしこまらなくても」


「いえ……」


「え? なになに? 知り合い?」


「エリナさんはヴァイス主任と結婚して辞めたがやめる前は本部の司令官だった人だ」


「えっ!? 超エリートじゃん! マジで!? そんな人がオペレーターやってくれんの!?」


「ええ、よろしくカイル」


「うす! よろしくお願いします」


 問題はエリナさんじゃないセラと名乗ったこの女性だ隊長と名乗ったがあまりにも速すぎる


 隊長が亡くなったと本部に伝達したのはさっきのはずだ、こんなに速く新隊長が送られてくるなんてありえない


「えっと何かな? レクス君? 私の顔に何かついてる?」


「……いえ、あまりにも速すぎると思っただけです」


「あ~レクス、不審に思うのは仕方ないがセラさんは元々今日から隊長になる予定でな? 元隊長は元々今日限りで懲戒免職だったんだ」


「……初耳ですが」


「それは言ってねぇからな、あの人あまりにもセクハラ、パワハラ酷くてついにクビが本部に言い渡されてな」


「……そうですか」


 あまりにも速い着任に何かあるのではないかと疑っていたら顔に出ていたのかヴァイス主任が補足をしてくれた


「はい! はい!」


「どうした? カイル」


「セラ隊長は戦闘するんですか!」


「もちろん、現場の指揮も私が取るよみんなに任せて悠々と安全な場所で命令するってことはないから安心してほしい」


「オペレーターの私は現場にでることはできませんがサポートはさせてもらいます、オペレーターに余裕があれば私も現場に出たんですが」


「ああ、元いたやつらは他の部隊に移動したからな」


「あっとうとうですか?」


「ああ、パイロットが作戦中なのに全員飯に行ってオペレーターの仕事してなかったからな、そんなやつはいらんだろう?」


「まっそうっすね元々オペレーターに期待なんてしてなかったですけど」


 誰にも人当たりがいいカイルにしては珍しく辛辣な意見だと思った、カイルは顔もいい俗に言うイケメンというやつだだからオペレーターたちからすさまじいくらい人気があったはずだけど


「あいつら作戦中も食事の誘いばっかでうるさかったからな別にいらね」


「俺の心を読むな」


「ワリィワリィ」


「あのすいませんカイルさんやヴァイスさんは資料を見たので分かるんですけどそのレクスくんはなかったので分からないので教えてくれませんか」


「ん? 資料送ったはずだが不備があったか? わかった簡単に説明しよう、レクスは―」


 カイルとそうオペレーター陣の事情について話しているとセラ隊長が不思議そうに話してきた

 なんで俺のことくん付けなんだ


 俺のことを説明しようとするヴァイス主任を遮って俺は自己紹介をする


「レクス・アーマルガス、この部隊の【使い捨て】パイロットだ俺のことは存分に使い潰してくれて構わない」


 俺がそう自己紹介をすると時が止まったかのように静かになった

 カイルは額に手を当ててあちゃーと言っているし

 ヴァイス主任はやりやがったという目で俺をみるしエリナさんの俺の目を見る目はとても冷たい

 はて? 俺は何か間違ったことを言っただろうか? 



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