第29話 2機の戦闘機とその謎

 空中艦ディアルナの格納庫はいつの間にか格段に拡張されており、その一隅に二機のFJ25が置かれている。


 一機は以前から存在する、レイジたちが湖で見つけてきた機体で、ベルナルドが散々手を入れた結果ほとんど別の形状となっている。騎士の甲冑めいた意匠と、何か生物の一部のような形状が組み合わされた異様かつ独特の外観だ。それはまるで一個の異種生命体であるかのような印象もある。しかし今の問題となっているのはもう一機の、今回見つかった機体である。レイジはその機体を隅々まで調べた結果、あの召喚の日に自分が搭乗していた機体だと確信する。


しかし奇妙なことが一つあった。


レイジはそのことについてしばらく考えた後、ミアベルに尋ねる。

「こいつは、どういう状況で発見されたの?」


「フロフォティス海の沖合に、ラムトラムっていう島があるの。ひかえめな漁村しか無いような小さい島。そこの砂浜に半分埋まってるのを現地の漁民が見つけたらしいわ」


「その砂浜に、こいつはいつ頃から埋まっていたのかな?」


「……質問の意図が良く見えないのだけれど」

 レイジは、胸中に生じた疑問についてミアベルに説明する。


「深淵界からエストリウム世界に浮上してきたのが俺と同じとは思えないくらい、こいつは古びていないんだ。まるでこっちに来たのがつい昨日みたいに真新しい。おかしいじゃないか? 俺と同時にこっちに来たんならもう最低でも四年以上はその砂浜に埋まってたはずだ」


 アビオニクスを立ち上げることができればもっとはっきりするのかもしないが、さすがに海水の影響があったと見えて、壊れてしまっている。


「ああ、それね」

 ミアベルは何かを知っているような口調で言う。


 レイジは続きを待つ。

「確かに。そのヒコウキが出現したのはつい最近の話らしいわ」


「らしい、とは?」


「現地の漁民が、それが発見される前日までは、そこにそんなものが埋まってるのを見た覚えはないって話してたわ。それからもう一つ、発見される日の前夜、シルヴァリウスに向けて航海していた商船の船員がレムトラム島の方向に正体不明の光の爆発を見たっていう証言があるの」


「その光の爆発っていうのは。召喚に伴う魔法的な何かの効果ってことかな?」


「そっち方面にはくわしくないけど、まあ多分ね」

「…………」

 この事実をどう解釈したものだろうか。


 召喚の儀が行われたのは四年前。


 しかし一緒に召喚されたはずのFJ25がこちら現れたのはつい最近。

 起きた現象だけをそのまま飲み込むのであれば、召喚を受けた対象が深淵界から浮上してくる速度にはかなりの差がある、ということにでもなるのか。


 それをミアベルに説明すると、

「一緒に召喚された、というのは語弊があるんじゃない?」


「というと?」

「私は、召喚の儀の際に対象として選ばれたのはあくまであなた一人だったと聞いてるわ。つまり、その他は巻き込まれただけだと思うの。だからそういう事情であなたの他のなんやかやは、こちらに出現するのが遅れたんだわ、きっと」

 レイジは「うーん」とうなる。


 確かにそれなら筋は通っている、が、何かが釈然としない。

 そこで一つ、レイジは思いつく。


「ミアベル、また一つ頼みたいことがあるんだけど」


「いいわよ、なに?」


「だいぶ今さらなんだけど、あの湖に沈んでた一機目の25式が、時間的にいつ頃、つまり何年前に出現したのか、確認してきて欲しいんだ」


「それはお安い御用。だけど、これってそんなに重要なこと? 私的にはかなりどうでもいいことに思えるんだけど」


「重要かどうかはまだわからないな。ただ少し気になる感じがしてさ」


「――わかったわ。でも何か結論みたいなものが出たら私にも教えてよ」


「了解だ。――ところで」

 レイジは周囲を見回す。


 格納庫には、レイジとミアベル以外の姿は見えない。

「今日は、騒がしいやつの姿が無いようだけど」


 ミアベルはふふっと笑う。

「例の、新型インフラクターの開発が、佳境を迎えてるらしいわよ。見物がてら陣中見舞いにでも行ってみない?」


「え、今から?」


「そ」

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