一般プロ雀士の俺なぜか幼少期に戻ったので今度は後悔しないように努力してトップ雀士を目指す!
碧
第1話
医者の父と専業主婦の母。そんな2人の間に生まれた俺、蒼井空(あおいそら)は、父の仕事柄ギャンブルやタバコ、酒などはするなと言われていたが、それ以外には特に何も言われることもなく、金銭的にも本当に不自由なく生活させてもらった。
進路にも口出しされることもなく、そこそこの学力の家が近い大学に通い、なんとなく受けたそこそこの企業に就職した。
ほどほどに言われたことを俺なりにやって、
ほどほどに残業などもして気付いたら35歳。
年齢相応の役職にいてそのままずっとこの会社で社会の歯車になるのだと思っていた。
そんな時、俺は麻雀に出会った。
それは本当に偶然だった。酒を飲まない俺は
飲みに誘われることはほとんどなかったし、親の影響で麻雀はギャンブルだと言われ触れてこなかった。
だけれど、偶然4人麻雀で1人メンツが足ら
なくなって、そのメンバーの1人が比較的俺と
仲の良い同期だったこと。そいつらが麻雀をやっていた場所が俺の家に近かったこと。それに同期が気づいて俺に麻雀はできるか?と電話をしてきたこと。
その日はというか年中別に何も無いのだが、
仕事以外に趣味も何も無い俺には時間があり、
麻雀をやったことがないという俺に同期含め他のメンバーが食いついたことで、是非やってみないかと誘われたこと。
偶然に偶然が重なって俺は35歳にして初めての麻雀デビューをしたのだ。
それは本当に衝撃だった。言葉では表せない
到底表すことの出来ない程の、まるでイナズマに身体中が打たれたような間隔に陥った。
同期たちに言われるがままうち、その面白さに一瞬で魅了された。
その時からの俺は早かった。今まで何事にも
熱中出来なかったのにそれが嘘のように、麻雀に出会うために俺は生きて来たのだとばかりに
同期たちが引く程俺はその日、いや、それから麻雀というものにハマった。
仕事の時間以外は麻雀をやった。ネットであったり雀荘であったりどこでも麻雀ができる環境に感謝して、全ての時間を使った。もちろん
仕事は手を抜いていない、いや、むしろ力が入っていった。なぜなら、仕事を辞めさせられたら生きられなくなって麻雀を出来なくなってしまうからだ。
今まで趣味だなんだと無駄な事に時間を使っているなと周りの話を聞いていたが、これが趣味か!とその時の自分を恥じるほど、趣味、麻雀にハマったのだ。
麻雀のことを知れば知るほど本当に奥が深い
ゲーム性に心底驚嘆した、すればするほど学べることに年甲斐もなく興奮して言った。
今まで勉強など程よくしかしてこなかったが、意外と俺は勉強が好きなのかもしれないななんてこの歳で自分の意外な一面に気付いたりなんかしつつ、本当に楽しい日々を過ごしていった。
ハマればハマるほど麻雀を好きになって行って、それと同じぐらい麻雀で食べていきたいと思うようになった。仕事の時間がもったいないと思うようになって行ったのだ。
だけれど簡単なことじゃないことは分かっていた。倍率がめちゃくちゃ高いことも難易度が高いことも調べればすぐにわかる。
だけれどそれ以上に俺は麻雀を始めた年齢が高すぎる確かにプロの人でも俺なんかよりも余程高齢の人達はいるが、そんな人たちでも若い頃からどっぷり麻雀にハマって長い時間をプロとして過ごされている方たちだ。35歳で初めて
麻雀を知った俺なんかとは比べ物にならない。
それでも無理だと分かっていても、辞めたくないと、諦めたくないと俺はひたすら麻雀を
やり続けた。1年、また1年と試験を落ち続ける中、時にはおじさんだとバカにされながら、
プロ試験を受ける中で、なんと俺は40歳で
プロ試験に合格したのだ。
それはもう嬉しかった。
年甲斐もなく跳ねて喜んだり、俺の横で同じように喜んでくれる同期や麻雀友達と恥ずかしげもなく抱き合ったり、出来事だった。だけれど
すぐに喜んでもいられない、いくら麻雀プロと言っても、それだけでは食べてはいけない。
限られた麻雀プロの仕事に対してプロ雀士は
あまりにも多いのだ。
そんなプロ雀士の中で麻雀だけで食べていくには他の人にはない強みが必要なのだ。
それは若さであったり、美しさであったり、かっこよさだったりあまたのプロ雀士が自分の中での強みを見つけるが、何も無い俺には目指すべきものはひとつしかなかったそれは強さだ。
そう、強さを証明しないといけないのだ。強いというのはどの競技でもそうだが大変重要視される麻雀だってそれは例外ではなく、強ければそれだけで麻雀の仕事を貰える。そうすれば
麻雀で食べていける。
俺はもっともっと麻雀にのめり込んで行った。
その中で仕事も辞めて、強くなるには今以上に麻雀の時間が必要だと思ったからだ。このまま全く勝てず麻雀の仕事がこず、生活出来なくなるかもしれない不安はあったが、数年であれば今までの貯金で暮らせるしそうなれば、もう死んでも良いと思ったのだ。
同期や麻雀仲間もそんな俺を応援してくれた。
むしろ会社を辞める背中を押してくれたのだ。
そんな仲間たちに報いるためにも俺さひたすら
麻雀にのめり込んでいった。
と言ってもやっぱりそんな簡単なものではなく最初は全くと言って勝てなかったが、
少しづつではあるが、勝てるようになり、プロの仲間もできたり、仕事もちょっとずつこなしたりと生活していく中で、数年後に初めての
タイトル戦の決勝まで行けた。
本当に本当に嬉しかった。決勝では俺の今までの全てをかけて、人生最高の1局だったと思うほどの対局ができたのだが、結果は2位でタイトルを取ることは出来なかった。
悔しかった。もう信じられないぐらい悔しかった。
タイトルを取ったやつは彗星のように現れた今年プロに合格した20歳の若者だった。
もっと俺が早く麻雀に、出会っていればもっともっとこの身体が若ければ、なんて後悔や言い訳を繰り返しながら、俺は対局会場をでて歩道を歩いていた。
考え過ぎていたのが行けなかっただろうか、
【プーーーーーーーーーーーーー!!!!】
そんな爆音と共に俺の目の前はいきなり赤色に変わった。
ガッシャーーーん、と言う音と共に、痛みが、
えっ、痛い、身体中が痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、、、
痛みが身体中を駆け巡る中、周りの騒がしさにやっと気付く、それと同時に自分が倒れていることも、自分が赤信号に気付かずに渡ってきた車に追突されたことにも、もう俺の身体が持たないことにも気付く。
ハハッ、どうやら神様は俺のことが嫌いみたいだ。こんなに人生で1番悔しい日に俺の人生を
終わらせるのだから。
あーあ、もし俺が若い頃から麻雀に触れていたら今日の試合勝ててたのかな?もっと麻雀やりたかったなー、色んなことを考える。
痛みのせいなのか、悔しさのせいなのか、なにが原因なのかも分からない涙が流れる。後悔の中そっと瞳を閉じる。
その瞬間俺の人生は幕を閉じたのだった。
起きたらそこは見知った天井だった。
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