36のバツイチおっさんが18の美少女JKと再婚することになりました

田中又雄

第1話 バツイチおっさんの日常

 俺の名前は品川康太。

36歳のバツイチで、万年平社員の冴えない男だ。


 毎日同じルーチンを繰り返すだけのつまらない人生。

朝起きて、適当に朝食を済ませ、満員電車に揺られて会社へ。


 デスクに座って、同じルーチンワークをこなす。

エクセルの表を埋めたり、報告書を書いたり、そんなことの繰り返し。


 出世? そんなものは俺の辞書にはない。

同期たちは次々と課長や部長に上がっていき、家族の話や子供の話で盛り上がっているのに、俺はいつも蚊帳の外だった。


 今日もオフィスは賑やかだった。

隣のデスクの佐藤が、スマホの画面を周りに見せびらかしている。


「見てよ、これうちの息子の幼稚園の発表会。かわいいだろ?」


 みんなが笑顔で集まって、褒め言葉を連発する。


 俺はというと、モニターに視線を固定したまま、ただ仕事をするだけ。


 心の中では、羨ましさと虚しさが渦巻いていた。

12年前に結婚した頃、俺もそんな未来を夢見てたはずだ。


 そして、10年前に子供が産まれた時は、最高に幸せだった。


 妻と三人で公園に行ったり、夕飯を一緒に食べたり。


 けど、6年前にすべてが崩れた。

妻が不倫相手の男のところに子供を連れて逃げて、離婚届を勝手に提出されたのだ。

俺の意思なんて関係なく、離婚が成立した。


 取り下げられることもはずだけど、今更どうこうする気力もなかったので、そのまま離婚は成立したのだった。


 そこからはただ、ぽっかり空いた心の穴を埋めようと、アニメや漫画に没頭する日々を送ってきた。


 定時が来て、俺はオフィスを後にした。

帰り道はいつも通り、灰色の街並みを歩く。夕暮れの空が少し赤く染まっていて、秋の気配を感じる。


 ふと、公園の脇を通りかかった。

そこでは、若い父親が小さな子供をブランコに押し、母親が笑顔で写真を撮っている。


 子供の笑い声が風に乗って聞こえてくる。


「パパ、もっと高く!」


 そんな無邪気な声に、俺の足が止まった。

昔の自分と重なる。


 あの頃、俺も妻と子供とここみたいな公園で遊んだっけ。

子供の小さな手が俺の指を握って、信頼しきった目で俺を見上げてた。


 なのに、今はもういない。

胸が締め付けられるような痛み。


 俺は一人でアパートに帰り、冷凍食品をチンして食べる。


 周りの奴らが幸せを掴んでいく中、俺だけが取り残されてる。

このままじゃ、人生が終わる。

……再婚、したい。

出会いがないなら、作るしかない。


 結婚相談所、行ってみるか。



 ◇


 数日後、俺は意を決して結婚相談所に足を運んだ。


 ビルの一角にある小さなオフィスで、受付のお姉さんがにこやかに迎えてくれた。


「初めまして。まずはプロフィールを登録しましょう」


 それから紙に年齢、年収、身長、趣味、過去の恋愛についてとか、バツイチの事実を正直に書いた。


 年収350万、身長170cm、趣味はアニメと漫画…などなど。


 登録が終わると、検索条件を聞かれた。


「相手の年齢や年収、どんな感じでお探しですか?」


 制限をかけられる立場じゃないと思ったから、俺はできる限り広げた。


 年齢は18歳から45歳まで、年収は問わず、身長も何も指定せず。


 受付のお姉さんの目が少し曇った気がした。


「えっと……本当にこれでいいんですか? ちょっと広すぎるかも……」


 でも、俺は頷いた。


「お願いします」


 その中から自分でも手が届きそうな範囲の数人に申し込みをした。


 うまくいけば後日メールが来るらしい。


 でも、何も来なかった。


 一週間、二週間……何もない。

俺は足繁く相談所に通った。


 毎回新しい検索をお願いするけど、結果は同じ。


 数回目には、受付のお姉さんが「また来たよ」という顔を隠しきれなくなっていた。


 その頃には俺のメンタルもボロボロだった。

結局、そこから約半年間行かずにいた。


 存在すら忘れかけていた頃、スマホに一通のメールが届いた。


 件名:【お申し込みがありました】


 結婚相談所からだった。

存在ごと抜け落ちていたので、何のことかわからず困惑していたが、ようやく事態を理解した。


 その上で俺なんかにオファー?と思った。

きっと、とんでもない相手だろう。


 とんでもないおばあちゃんくらいの人か、子持ちな、借金持ちか……。

恐る恐るプロフィールを開いて、俺は思わず目を疑った。


「……18歳の……女子高生?」


 しかも、写真はめちゃくちゃ可愛いかった。


 黒髪のロングヘア、大きな瞳、無表情だけどそれがまた神秘的に見えた。


 都内の女子校に通ってるらしい。

なんでこんな子が、俺みたいなオッサンに?


 すぐに後輩や数少ない友達に相談した。

会社の飲み会で後輩の佐藤に話すと、ビールを吹き出しそうになった。


「マジかよ、康太さん! 絶対やめといた方がいいですって!結婚詐欺か、宗教の勧誘ですよ!」


  友達も同じ。

「身分偽ってる可能性もあるぞ。そもそも18歳のJKが相談所登録? 怪しすぎる」


 確かに俺も疑ってた。

けど、女性と話す機会なんて何年ぶりだ。

騙される覚悟で、リハビリ感覚でやり取りをしてみることに。


 最悪の場合、警察に駆け込む準備もしておくつもりだった。


 そして、メールのやり取りが始まった。


 メールは意外とスムーズだった。


 彼女の名前は前条寺茜というらしい。

彼女は都内の有名女子校に通ってるらしく、大学進学予定で、日本一頭がいい大学を目指してるとか。


 いよいよ設定マシマシだなと思っていた。

結婚相談所に登録した理由は「興味半分、人生経験のため」だとか。


 登録直後にオファーが殺到して困って、やめようと思っていた時に、たまたま俺のプロフィールを見たらしい。


 趣味がアニメと漫画で合うし、年上好きだし、顔も結構タイプだとか。


 俺の顔がタイプ? 何の冗談だろと思った。


 でも、メールのやり取りは続いた。

俺はアニメのオススメを聞いたり、彼女の学校生活を聞いたり。


 文面から冷たさというか、無感情さを感じていた意外と返事が早いかった。


 それから1ヶ月ほど経った頃、彼女から「会ってみませんか?」の提案をされた。


 いよいよ…騙される時が来るのかと正直少しがっかりした。


 さて、どんな話をされるのか…。

学費の援助?親の借金?

それとも…と、俺はドキドキしながらOKした。



 ◇


 そうして、待ち合わせは都内のカフェ前。

俺は背伸びをしない程度にカッコつけた服装で、待ち合わせ場所に向かっていた。


 心臓が鳴ってる。

もし…詐欺じゃなければ…なんて、1%以下の確率を信じながら。

 

 そして、カフェの前に到着し、周りを見回す。すると、そこに制服姿の女の子が立っていた。


 黒いブレザー、白いブラウス、チェックのスカート。


 写真よりずっと可愛い女の子がそこにいた。

無表情でスマホをいじってるけど、存在感が抜群だった。


 あれが……茜ちゃんか?

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/822139840843244143

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る