第3話・送信

「なんでいきなりお土産コーナーなんだよ。」


みかんやパンダ、梅がズラリと綺麗に平積みされたコーナーを真剣な眼差しで見つめる悠司の背中に声をかける。


「ちょお、待ちいや…みかん味のラングドシャ…いや、ここはウケ狙いでパンダのウンチ。ええ梅一粒とかの方がおもろいか?」


「お土産に面白さを求めてどうすんだよ。」

呆れた様にタメ息と共に悠司に語りかける。


「ちゃうねん、センスやん。お土産を渡すことによって『あら、こんなものを買ってくるなんて…フフフ』みたいに思われたいねん。」

「それは、嘲笑じゃないのか?」


白黒だけのパッケージを手に取り、未だにウンウン唸ってる悠司が口を開く。

「と言うわけで、まだもうちょいかかるから何食うか、その辺ブラブラしてきいや。せっかく来たんやから後悔せんようにな。」


『南紀白浜とれとれ市場』


入り口入ってすぐのお土産コーナーから出て、階段を降りて目の前に広がった海鮮コーナーの中にいる観光客達に紛れる。


夕方16時頃のせいか、サク等の塊は売っているがマグロの解体ショーは終わってしまったようだ。

一匹まるまるの鯛、サザエに伊勢海老。


建物に入る前、入り口の頭上にマグロのオブジェを見た時に、良くある観光地だと思っていたが、まるで本当の市場にいるみたいだった。


市場コーナーを抜け、ちりめん等の乾物やお酒のコーナーを越えると『とれとれ横丁』なるフードコートが広がっていた。


定食屋のようにカツ丼、天丼。


しかし、やっぱり海に近いせいか、刺身、海鮮丼、更にカニやホタテ、伊勢海老。と海鮮がたっぷり入ったラーメンが目につく。

それに、地元名物の和歌山ラーメン。


何を食べるか悩みながら、頭の中には先程の悠司の言葉が占めていた。


『せっかく来たんやから後悔せんようにな。』


ゆっくりとスマホを取り出し、慣れた手付きでとあるアプリの中に潜り込む。


右下の自分のプロフィールアイコンを押し、右上のフォロー中の数字をタップする。


リストに載っているアイコンの中から、幾度となく目にした6文字の英単語をすぐに見つけ出す。

『フォロー中』の灰色のマークの横のボタンをタップする。


【こんにちは、初めまして。実は貴方の動画を見てから、どうしても気になってしまって和歌山まで来てしまいました。】


消去。


【こんにちは、あの動画の場所なんですけど、野田浜ですよね?凄く興味があって…】


消去。


「なんて書けば良いんだよ…」

書いては消し、消しては書きながら、ゆっくりと息を吐く。


そうして、出来た文章はどことなく、ビジネスメールのように【初めてメッセージを送らせて頂きます。実は貴方の動画を見てから、どうしても気になってしまって…】という書き出しになってしまった。


それでも、この言葉は伝えたかった。


【あの動画を見た時に、不安を感じてるのかな?と思いました。ひょっとしたら、全くの見当違いかもしれません。でも…もし、そうなら…貴方は独りじゃないって事を伝えたくて連絡しました。それだけ伝えたくてメッセージを送らせて頂きました。】


何度も、書き直したあげく、何だか支離滅裂な文章を、紙ヒコーキのボタンと共に相手に投げ出した。

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