GunFreakSisters トリガーハッピーは異世界でいきる

@idiotdog

第1話

  森に囲まれた大きな湖の畔、キャンプをするには絶好の場所で百々目鬼棗とどめきなつめはイラつきを抑えきれず愛飲しているダビドフのエスクリオというシガリロを取り出し女が持つにはやや渋いオイルライターで火をつけ紫煙を吐き出した。

 

「ちっ 異世界転移だと? ふざけるなよ量産された陳腐な深夜アニメかよ。」

 

「なっちゃん落ち着いて。まぁ不幸中の幸いじゃないこうやって一緒に転移できたんだし。」

 

 棗をなだめるのは棗の恋人一号である久瀬華音だった。

 

「で、でもこの世界って……モ、モンスターとか居るって話だしどうしよう?」

 

 棗の恋人二号の黒崎マコが不安げに棗の腕にしがみつく。

 

「ああ、そういやぁモンスターがいて魔法があってまるでファンタジーゲームみてぇな世界だって話だな。まぁなんか女神が異能とか寄越してくれたがどんな能力だった? アタシは通販だとよ。ブックマークしてたサイトから買い物ができるらしい。」

 

「へぇ。いい能力だと思うよ? ココがどんくらいの文明レベルか知らないけどよくありがちな中世ぽい世界なら現代の商品がないと満足できないもん。私は異空間にある居住区への扉を呼び出す能力だって。現代日本風のワンルームみたいだけど魔石ってのを消費してガスや電気水道が使えたり部屋を大きくしたり増やしたり出来るみたい。」

 

「良い能力なんだがこの通販日本円しか使えねぇ……。この世界でどうやって日本円を手にしたら良いんだよ。マコはどんな能力だ?」

 

「わ、私は配信て能力。私達が日本で使ってた配信アカウントで配信できるみたい。スパチャで稼げるみたいだよ?」

 

「てことは、アタシら三人力を合わせりゃなんとかなるか。で、さしあたって問題はアレだな……。」

 

 棗が見つめる先には棗たちと同じように山梨県にあるキャンプ場からこの世界に転移してきた日本人の男女が40名ほど軽装で呆然と立っていた。

 

 棗達はキャンプ場に着いたばかりでそれも上級者向けのブッシュクラフトエリアに向けて移動としようとしていた所だったが彼らはグランピングエリアで既にバーベキュー等を楽しんでいた者たちだった。

 

 そのため本格的なギアを身に着けフル装備の棗たちと違い、ハーフパンツにサンダル、アロハシャツなど軽装であり荷物も手に持った缶ビールやら食べかけの焼き肉の乗った皿のみだ。

 

「問題って? なっちゃんの性格なら協力するとか手を貸すなんて言わないと思うんだけど。」

 

「あたりめぇだろ? どんな能力もらってるかしらねぇがどう見てもセックスしか頭にねぇようなバカ女とバカ男ばかりじゃねぇか。足手まといにしかならねぇお荷物どもだが協力しようだの言ってくるんじゃねぇか? それにアタシも華音もマコも見た目は良いからなワンチャン狙ってくる奴もいんだろ?」

 

 性格や口調と目つきはともかく棗はかなりの美人だ。

 華音も所謂清楚系とよばれる美人だし、マコも内気でメンヘラ気味だが小動物のような可愛い系だった。

 そして棗は15までアメリカに住んでいたため日本人のように空気を読むだとか周りを気にするようなタイプでは無い。

 そのため三人の会話、特に棗の言葉はおもいっきり周囲に聞こえ反感を買っている。

 

「ま、ここは日本でもねぇしたとえ日本だろうが協力しあわなきゃぁなんねぇって法律もねぇだろ? ココがどこだか知らねぇがさっさと日が暮れる前に人里でも見つけなきゃモンスターどころか野生のクマや狼とかにでも食われちまうぞ。」

 

 棗は背中に背負っていた75リットルの大きなバックパックをおろし、中を漁りマチェットと呼ばれる大ぶりの屶とカーボネイトのシースに入ったコンバットナイフを取り出した。

 

 棗の格好はキャンパーと言うよりもサバイバルをするアメリカのハンターか軍人のような出で立ちだ。

 灰色のハンティングキャップを被り夏場なのに長袖のコンバットジャケットを着ている。腰には銃のホルスターなどはついていないがモールシステムつきのコンバットベルトを巻き、タクティカルライトや様々なポーチをとりつけさらにはチェストリグというキャリアまで身につけていた。

 

 棗はマチェットのシースをコンバットベルトに引っ掛けさらに左の太ももにベルトで巻き付け、コンバットナイフをチェストリグの右のショルダーパットにくくりつけていく。

 

「ブッシュクラフトで良かったな。グランピングだったらこんなに装備整ってなかったぜ。」

 

「確かに。でも私達モンスターに襲われたらどうするの? 戦闘向きの能力じゃないよ? せいぜい私の能力で隠れるくらいしか出来ないよ?」

 

「確かに戦闘向けの能力は貰ってねぇな。でもアタシの能力を思い出せ。アタシの能力はブックマーク・・・・・・しているサイトから買う能力だぜ?」

 

「あっ!?」

 

 棗の言葉の意味が理解できたマコが声を上げる。

 

「そっか、それもアリなんだ。」

 

「ああ、良かったな。アタシらの趣味がアレで。で、華音、マコ今いくら持ってる? アタシは五万だ。」

 

「私もそんくらい。マコちゃんは?」

 

「私は念の為10万くらいは持ってるよ。」

 

「20万か。五万は食費とかに残して十五万円は装備に使うが良いか?」

 

「まぁ、仕方ないよね。身を守らなきゃならないし。何を買うの?」

 

「華音とマコには9mmアタシは12GAゲージってところだな。」

 

「3つも買える?」

 

「ああ。ベレッタやSIGなんかは無理だがな。」

 

 棗はアメリカのテキサス育ちでありテキサスと言えば、アメリカで銃規制がゆるゆるのトリガーハッピー野郎の聖地だった。

 そんなテキサス育ちの棗はというとやはりガンフリークに育っており日本へ帰国したあともエアガンやモデルガンを買い漁ったりサバイバルゲームを楽しんでいた。

 そして華音とマコも棗に付き合いサバイバルゲームをしたり長期休暇にはグァムやテキサスに行きシューティングレンジで射撃を楽しんでいるしそういった配信を行っている。

 

「RXMならクソ安いからな。二丁買っても余裕だぜ。」

 

「RXM? 聞いたこと無いけどドコの9mm?」

 

「ルガーだよルガー。グロックGEN3の特許が切れてるからなそれのクローンだがマグプルとのコラボ銃だからグロックのクソみたいなトリガーより良いぜ。ああ、ホルスターは日本のサバゲーメーカーのクソみたいな奴になるが我慢してくれ。」

 

 棗は能力を使い眼の前にホログラムのような半透明の画面を出すと左側のタブのブックマークから大手銃販売サイトを選び更にそこからRXMを検索していく。

 

「370ドル。日本円にして五万5千円が二丁で十一万。さらに9mm100発とアタシの12GAのホームセキュリティショットガンと12GAのバックショットとホルスターか。ギリギリ15万以内だな。マコはルガーEC9でも良いか。あれなら199ドルだし。もしくはスプリングフィールドXD mod3だな。」

 

「え? スプリングフィールドのXDって安いの? 私結構好きだけどなぁ。」

 

「ああ。300ドルだぞ。ただ予備マグがついてこねぇ。」

 

「因みにマガジンていくら?」

 

「20ドルから30ドルくらいだな。」

 

「じゃぁRXMよりXDのほうが良いなぁ私。なんでRXM選ぼうとしたの? なんか理由ある?」

 

  「特にはねぇな。まぁグリックのマガジン使う銃は結構多いからあっても損はねぇだろ的なアレだ。だがよく考えたら金がありゃそんな銃かわねぇわな。」

 

「だよねぇ。なっちゃんはハンドガンとショットガンラブだけどハンドガンはナインティーンイレブン1911選ぶだろうし。」

 

「華音はフルサイズならM9、コンシールドキャリーならP365ってところか。ま、今はXD MOD3で我慢してくれ。」

 

 そう言いながら棗は9mmホローポイント百発とスプリングフィールドXD mod3 二丁それと予備のマガジンを2つ、自分用にスティーブンの320セキュリティ、12ゲージのバックショットとスラグ弾を購入していく。

 

「なっちゃん、そのショットガンニ万七千円だけど大丈夫なの?」

 

「ポンプアクションのホームセキュリティ用ならこんなもんだろ? セミのタクティカルじゃねぇんだからよ。それに日本じゃ誰も彼も買えるもんじゃねぇからな銃は。一丁あたりの儲けを大きくしなきゃ店も経営なりたたねぇだろ。」

 

 日本ではどんなに安くても30万を超えてしまう散弾銃だが銃社会のアメリカでは各家庭に一丁というくらいに普及しているためそこまで構造が複雑ではないポンプアクションショットガンは安ければ150ドルから存在していた。

 

 棗は華音とマコに銃と弾を渡し、次に大手ECサイトのナイルを開いてサバゲー用の安いホルスターとショットガンにつけるスリングを選んでいきその間に華音はボール紙の箱を開け、XDmod3を取り出すとなれた手つきでマガジンをリリースしスライドを引き中からチェンバーフラグと呼ばれるプラスチックの銃弾が装填されてないことを示すキャップをとりだし数回スライドとトリガーを引いたりしフィーリングを確かめていく。

 

「ちょっとトリガーリセットまでが長いね。でも悪くないよ。」

 

「300ドル以下で買える銃でそのトリガーならかなりいいだろ?」

 

 棗は購入した玩具レベルのゴミみたいなホルスターを華音とマコに渡すと段ボールからショットガンを取り出し数回空打ちをしてからスリングを取り付けていく。

 

「なっちゃん、私とマコちゃんは準備オッケーだよ。」

 

「ああ、アタシももう出来た。」

 

 そういい箱からクリーニングロッド等の部品を取り出すとバックパックに放り込み立ち上がると何人かの男女が棗たちを眺めていた。

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