第15話・〈恋愛事情〉

東京府東京市小石川区上富坂

 職業体験から五日程経ったある日、同期三人組は平屋に戻るために歩いていた。

「明日だよね?合ってる、渉?」

 関澄は困惑しながら首を傾げる。

「合っている。連続して聞くな、集まりは明日だ」

「......ねぇ、二人共。僕の胸を抉っていることに気付いている?酷いよ、本当にさ」

 頬を膨らませる花野は、先程から連発されている「明日」という言葉に異常なほど反応している。

 関澄がそれを面白がり、取えて戯けた様子で、「何?恋人たちを見るのが辛いですー、みたいな?」

「はい?何言ってんの?それじゃないし」

 花野は関港に「黙れ」という鋭い視線を送る。

「Guys, stop !」

 音羽は言い合い出した花野と関澄を物理的に離し言葉を継ぐ。

「チサ、今ユウくんはそれどころではない。お前を冷静に流せる程の余裕が無いことくらい分かっているのだからやめなさい。ユウくんはもっと落ち着いて。緊張と心配とで騒いでいるのは理解するが、明日に引きずると面倒だぞ。心配事の大半は起きないから、その場所を独場にする程の意気込みで楽しむことを考えてみて。それに一人じゃないだろ?」

「うう、渉兄さんを久しぶりに見た。うん。僕、頑張る!」

 花野は音羽に励まされ、顔を強張らせる。

「ごめん、裕介。様子が違い過ぎて面白かったから。あのさ、話戻るけど。今まで聞けへんかったんやけど、裕介の恋愛観どうなってるん?」「え?色と結婚してるんだよ、僕」

 花野は至って真面目な何気ない顔で告げる。だが内心はかなり強がっていた。無縁で且つ馴染みがないことを敢えて言わずの返答をしたためである。

「「......」

 関澄は何か言いたげに口を尖らせて、音羽は「ごめんな、チサが......」と眉に競を寄せている。

 二人は各々の感情を顔に浮かべ、花野の強がる顔を見る事しか出来なかった。

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