第4話
夜になって川を出る。
よしよし、人間はいないわね。
スルルルル〜。
はあはあはあ。
上り坂キッツイ。
人工の道なんて無いから障害物がいっぱいなのよね。スライム的に。
周りを見渡せば美味しそうな木の実や果物があるんだけど、金属的に食欲が湧かないのが悲しい。美味しそうなのにぃ〜。
!大きい気配!
ピタッと止まってドキドキ待つ。
ガサガサ。のそのそ。
やって来たのは大きな角の生えた熊。
牙も爪もすんごいの。
怖ぁ。
ブルブル震えて息を潜めてたら目が合った。
無理無理無理。
怖い怖い怖い。
ジッと見つめ合う事体感数十分。
実際には数分。
熊は興味を無くして向こうへ行った。
助かったぁ。
熊も金属は食べない。
逆に金属食べる生き物っているのかしら。
……。
……。
はっ!自分だわ!
ええ?同族が1番の敵なのかしら。
殺伐とした種族ね。
会いたいのに会いたくない。
我儘じゃないのよ。
怖いのよ。
合言葉はー!
『いのちだいじに!』
スルルルル〜。
はあはあはあ。
熊は敵じゃないし、進行方向は変えずに進むわ。
あら?あれって水晶?こんな山肌に剥き出しって、罠かしら。
水晶って、金属じゃないわよね。
でも鉱物って括りなら一緒かしら。
キョロキョロ。
誰もいない。
気配もない。
慎重に進んでみよ。
うの。うの。
石橋じゃないけど地面を叩いて進むわよ。
どっしん。
穴が空いたわ。
金属って硬いし重かったわ。
今世は絶対に体重計に乗らないわ。
心に決めた。
今決めた。
一先ず変わった事ないし、指先だけでチョンって触れないかしら。
丸い球体の一部を伸ばすイメージ。
背伸びみたいな感じで。
グググググ〜。
おおっ。伸びた!
そうよ。金属って色んな形に加工して使うし、銅なんて線にし使ってるものね。
イメージが湧いたら自由に動かせるようになったわ。
銅線にして、先っちょでツンツツンッと。
しーん。
何も無い。
どうやら杞憂だったみたい。
異世界だもの。
きっと山肌にも水晶が落ちてるんだわ。
食欲も出てるし、これは食べ物ね。
では、いただきます。
うにょん。
水晶に体を這わせてモグモグ。
口は無いから体全体で吸収してるの。
水晶ってほんのり甘くて砂糖菓子みたい。
甘味なんて前世振りだから嬉しい〜。
はー。ご馳走様でした。
私より何倍も大きいのに完食しちゃった。
でも大きさ変わってないし、太ってはないわね。
……体重計には乗らないわよ。絶対に。
あら?あらら?
体が何だかむず痒い。食物アレルギーかしら。
ちょっと川底探して休憩しましょ。
ところで、口も手足もない私。
見えるし匂うし聞こえるって事は、目と鼻と耳はあるのかしら。
因みに話し声は口からじゃなくて金属の振動が言葉になってるみたいなの。
スピーカーかしら。
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