硝煙に咲く

志水命言/ShisuiMicoto

第1話

 雨が街を濡らす夜だった。

 ネオンの光が濡れたアスファルトに反射し、闇市のざわめきと車のタイヤが弾く水音が交錯する。そんな夜の片隅、便利屋「成章(ナリアキ)」のエージェント、在坂(本名・植田雫)は、任務の標的を狙って静かに動いていた。

 白銀の髪は短く、漆黒の瞳だけが冷たく街を見据える。手には相棒の小銃「在坂」を握り、任務への緊張感を自らの血に変えるかのように笑った。血の匂い、恐怖、死。それらが彼女にとっては日常であり、どこか心地よい刺激でもあった。

 しかし、その夜、任務を妨げる影が現れた。

「ここは通さんぞ、姫君」

 低く響く声。振り返れば、闇夜に浮かぶ男、経芳の傭兵、邑田。黒髪の短髪に跳ねたアホ毛、紫の瞳とまろ眉、両耳の長い赤いタッセルが異彩を放つ。手には明治時代に作られた由緒正しき小銃「邑田」を構えていた。

「……男尊女卑を貫くつもりなら、遠慮なく死んでもらおうか」

 在坂は軽く笑い、指先で「在坂」のトリガーを弾いた。銃声が闇に溶け、二人の戦いの幕が上がる。

 街を舞台に、命を懸けた追走と戦闘、そして誰も予期しない感情の交錯。

 これは、逃げても逃げきれない、裏社会の闇に生きる二人の物語。

 バトル、逃避行、そして、ロマンスの始まりだった。

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