第17話
翌朝。
怪我の痛みはまだ残るけど、登校できる程度には動ける。
玄関で姉達に見送られ、莉央と一緒に家を出た。
「悠、歩くの速い。怪我してるんだから無理しないで」
「大丈夫だよ。昨日よりマシだから」
莉央は歩幅を合わせてくる。
ポニーテールが朝日に揺れて、綺麗だった。
学校に着くと、校門前で男子数人がこっちを見てざわつく。
「桜木莉央だ…やっぱ可愛いよな」
「連絡先聞くチャンスじゃね?」
そのうちの一人が莉央に声をかけた。
「桜木さん、連絡先交換しない?友達になりたいんだ」
俺は関わらないよう横を抜けようとしたが、莉央が立ち止まる。
一瞬だけ振り返り――冷たく言い放つ。
「興味ない。私には悠がいるから」
男子の顔が固まる。
「い、いや弟くんじゃなくてさ――」
「私、悠以外の男と話す気ない」
ばっさり。
周囲から「強…」「あれは無理だわ」と声が漏れた。
莉央は俺の腕を掴んで小さく微笑む。
「悠、行こ」
「……お、おう」
教室に入り、席についた瞬間――
「……おはよ、悠」
桜木遥が本を閉じて顔を上げた。
クールな雰囲気で、いつも通り淡々としている。
「今日も図書委員あるけど、帰りは――」
遥が言いかけた時、莉央が割り込むように近づく。
「今日も悠と帰るから。遥はいい」
「……それ悠が決めることでしょ」
静かに飛ぶ火花。
そして遥はまだ知らない。
――悠が昨日、ナンパから誤って殴られ怪我したことを。
遥は何も知らないまま、少しだけ柔らかな声で言う。
「最近、莉央さんが悠を独り占めしてる。たまには貸して」
「……貸さない。悠は私のモノ」
即答。断言。ためらいゼロ。
遥はふっと小さく笑った。
まるで挑発するような、余裕のある微笑み。
「じゃあ奪うね、悠を」
俺の心臓が変な跳ね方をした。
周りのクラスメイトがざわつき、視線が刺さる。
得体の知れない三角関係の始まりの気配がする。
俺の平穏は、いつ訪れるのだろうか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます