「ハズレ・スキル」と追放された俺、実は全スキルのクールタイムを0にする能力だった。~今さら戻れと言われても、S級美女たちが離してくれない~
第11話:国王陛下「頼むから機嫌を損ねないでくれ」。あと王女様がグイグイ来る。
第11話:国王陛下「頼むから機嫌を損ねないでくれ」。あと王女様がグイグイ来る。
翌朝。
俺は屋敷の外から聞こえる地鳴りのような歓声で目を覚ました。
「ディーン様! 大変です! お屋敷が群衆に包囲されています!」
メイド服に着替えたキャトレアが(意外と似合っている)、慌てて部屋に入ってくる。
窓から外を見ると、屋敷の門前に黒山の人だかりができていた。
「『無限の魔導師』万歳!!」
「俺たちの英雄!」
「ディーン様こっち向いてー!」
昨日の「無限メテオ」を目撃されたせいで、俺は一夜にして王国の救世主になってしまったらしい。
静かに暮らしたいだけなのに。
「……あーあ。これじゃ気軽に買い物にも行けないな」
「何言ってんだよ。今やあんたは、この国で一番『怒らせちゃいけない男』なんだぞ?」
キャトレアが苦笑する。
そんな中、王家の紋章が入った豪華な馬車が、人波を割って屋敷に入ってきた。
「国王陛下より勅命である! 英雄ディーン殿、至急登城されたし!」
◇ ◇ ◇
王城、玉座の間。
張り詰めた空気の中、俺は国王と対面していた。
両脇には重臣たちが並んでいるが、全員が俺を見る目に「畏怖」を浮かべている。
「……面を上げよ、ディーン殿」
国王の声が少し震えている。
無理もない。俺がその気になれば、城ごと王都を更地にできることを彼らは知っているからだ。
「昨日の働き、見事であった。そなたの魔法により、我が国は未曾有の危機を脱した。礼を言う」
「いえ。たまたま通りかかっただけですので」
「(たまたまで戦略級魔法を連射されてはたまらんが……)」
国王が額の汗を拭う。
そして、コホンと咳払いをした。
「さて、論功行賞の前に……一つ報告がある。昨日の戦場で、そなたの邪魔をした愚か者どもについてだ」
愚か者。
ガイルたちのことか。
「パーティ『銀の牙』。彼らは防衛線の構築を妨害し、騎士団の活動を阻害した罪により、『冒険者資格の永久剥奪』および『国外追放』とした」
「……そうですか」
俺は短く答えた。
何の感情も湧かなかった。
彼らはもう、俺の人生には何の関係もない、ただの過去のシミだ。
これで完全に、縁が切れたことになる。
「では、本題だ。そなたには爵位と領地を……」
「待ってくださいお父様ッ!!」
国王の言葉を遮り、玉座の裏から一人の少女が飛び出してきた。
金髪の縦ロールに、煌びやかなドレス。
この国の第1王女、リリアーナだ。
「リ、リリアーナ!? 何をしておる!」
「お父様! 爵位や領地なんてありきたりな物、ディーン様には不足ですわ!」
リリアーナ王女はツカツカと俺の前に歩み寄ると、扇子で俺の胸元をツンと突いた。
その顔は、獲物を狙う肉食獣のように紅潮している。
「昨日の『隕石』……見ましたわ♡ あの圧倒的な破壊力! あの強引さ! 私の理想そのものです!」
「は、はあ……」
「決めたわ! ディーン様への褒美は、この私! リリアーナがお嫁に行って差し上げます!」
「……はい?」
シン……と玉座の間が静まり返る。
だが、その沈黙を破ったのは、俺の背後に控えていた護衛役(アイリス)だった。
「――ちょっと待ってください、王女殿下?」
アイリスが笑顔(目は笑っていない)で進み出る。
S級冒険者の殺気が、王女に向けられる。
「ディーン様は、私のパーティメンバーであり、将来の旦那様です。横入りはマナー違反では?」
「あら? あなたは『戦乙女』のアイリスね。たかが一介の冒険者が、王族に盾突く気かしら?」
「愛の前では身分など関係ありません。……斬りますよ?」
「やってみなさいよ。王宮魔法部隊、出番ですわ!」
バチバチバチッ!!
アイリスとリリアーナの間に、火花が見えるようだ。
国王が「ひぃぃ……城が壊れるぅ……」と頭を抱えている。
俺は天を仰いだ。
ガイルたちとの縁は切れたが、どうやら新しいトラブルとの縁は、強力接着剤で結ばれてしまったらしい。
俺の平穏な日々は、クールタイムゼロで彼方に消え去っていったのだった。
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