「ハズレ・スキル」と追放された俺、実は全スキルのクールタイムを0にする能力だった。~今さら戻れと言われても、S級美女たちが離してくれない~
第6話:武器屋にて。「魔力吸いすぎで誰も使えないゴミ杖」? それ、俺のためにあるようなもんですね。
第6話:武器屋にて。「魔力吸いすぎで誰も使えないゴミ杖」? それ、俺のためにあるようなもんですね。
翌日。 俺とアイリスは、王都の大通りを歩いていた。
目的は、俺の新しい武器を買うことだ。 今まで素手で魔法を撃っていたが、きちんとした杖を使えば威力も射程も上がるらしい。 懐には1億2000万ゴルド。 買えないものなんてない。
「ねえディーン様、あそこの服屋さんにも寄りましょうよ! 私、ディーン様に似合う服を選びたいな」
アイリスが俺の腕に絡みつきながら、ウキウキとした声を上げる。 すれ違う人々が、ギョッとした顔で振り返る。
「おい見ろよ、あれ『閃光の戦乙女』だぞ……」 「隣の男、昨日のギルドで噂になってた『億越えルーキー』か?」 「美男美女でお金持ちとか、前世でどんな徳を積んだんだよ……」
ひそひそ話が聞こえてくるが、悪い気はしない。 昨日までの「無能扱い」が嘘のようだ。
「服は後だ。まずは商売道具を揃えないと」
「ちぇっ。真面目なんだから。……でも、そんなところも素敵♡」
アイリスに甘えられながら、俺たちは王都で一番と言われる老舗武器店『ドワーフの鉄槌亭』の扉を開けた。
カランカラン、とベルが鳴る。
「いらっしゃい! 冷やかしなら帰んな!」
カウンターの奥から、赤髪をポニーテールにした少女が出てきた。 背は低いが、胸元が大きく開いた作業着から見える肢体は、健康的で肉感的だ。 彼女はドワーフ族の名工、キャトレアだった。
「あら、キャトレア。相変わらず愛想がないわね」
「げっ、アイリスかよ。……ってことは、隣の男が噂の『旦那』か?」
キャトレアは値踏みするように俺をジロジロと見た。
「ふーん。見た目はヒョロいけど、魔力の質は悪くないね。で、何が欲しいんだ?」
「魔法使い用の杖を頼む。予算は気にしない。一番いいやつをくれ」
俺がそう言うと、キャトレアはニヤリと笑った。
「金持ちの客は大好きさ。ちょっと待ってな」
彼女は店の奥から、一本の美しい杖を持ってきた。 先端に純度の高い青水晶が埋め込まれた、見るからに高そうな逸品だ。
「『蒼海の杖』。ミスリル製で、魔力伝導率は最高クラスだ。お値段は金貨500枚」
「試していいか?」
「ああ。裏の射撃場で撃ってみな」
俺たちは店の裏手にある射撃場へと移動した。 的(マト)に向けて杖を構える。 確かに、素手の時よりも魔力がスムーズに流れる感覚がある。
「よし、いくぞ。《ファイアボール》・連射」
俺は魔力を流し込んだ。 クールタイムゼロの奔流を。
ドガガガガガガッ!!
「おっ、いい威力じゃねえか……って、おい待て!」
キャトレアが叫ぶ。 だが、遅かった。
パキィッ……!
杖の先端にある青水晶にヒビが入り、次の瞬間、粉々に砕け散った。
「あ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!! あたしの自信作がァァッ!!」
キャトレアが頭を抱えて絶叫する。 俺は気まずく杖を下ろした。
「ごめん。ちょっと流しすぎたみたいだ」
「ちょっと!? 今の一瞬でどんだけ魔力を通したんだよ! 普通の魔法使いの百人分だぞ!?」
「うーん……やっぱり普通の杖じゃダメか」
俺の『時短』スキルは、魔法の発動間隔をゼロにする。 つまり、杖には休みなく魔力が注ぎ込まれ続け、熱暴走を起こしてしまうのだ。
「弁償するよ」
「金の問題じゃねえ! ……ハッ、待てよ?」
キャトレアは何かに気づいたように、俺の顔を凝視した。
「お前みたいなデタラメな魔力供給ができる奴なら……アレが使えるかもしれない」
「アレ?」
「ちょっと待ってろ」
彼女は再び店の奥へ走り、今度は黒い布に包まれた、禍々しい気配を放つ杖を持ってきた。 装飾はほとんどなく、まるで黒焦げた木の枝のような杖だ。
「これは『暴食の黒杖』。世界樹の根っこから削り出した失敗作だ」
「失敗作?」
「ああ。魔力伝導率が異常すぎてな。持ち主の魔力を勝手に、しかも底なしに吸い上げちまうんだ。普通の奴が持ったら、一瞬で魔力枯渇(ガス欠)して気絶する」
キャトレアは真剣な目で杖を差し出した。
「だが、お前ならどうだ?」
俺はその黒い杖を受け取った。 瞬間、掌から猛烈な勢いで魔力が吸い取られるのを感じる。 まるで、乾いたスポンジが水を吸うように。
普通の魔法使いなら、これで倒れるだろう。 だが。
「……ちょうどいい」
俺の『時短』は、魔力の回復サイクルすらも加速させる(※と、最近気づいた)。 吸われる端から、湧き上がってくる。 この杖の「暴食」ぶりは、俺の溢れるエネルギーの受け皿として最適だった。
「起動。《ファイアボール》」
ボォォォォォンッ!!
放たれたのは、小さな火の玉ではない。 直径数メートルはある、巨大な太陽のような火球だった。
ズガァァァァンッ!!
的どころか、射撃場の壁が吹き飛び、空にキノコ雲が上がる。
「……すげぇ」
キャトレアが腰を抜かして呟く。 アイリスも目を丸くしている。
「これだ。これが欲しかったんだ」
俺は黒杖を撫でる。 杖も喜んでいるのか、微かに脈動しているように見えた。
「気に入った。これ、いくらだ?」
「……タダでいい」
キャトレアは立ち上がり、紅潮した顔で俺の手を握った。
「その代わり、あたしを専属の鍛冶師にしてくれ! こんな面白い素材(使い手)、逃してたまるかよ!」
「え?」
「ちょっとキャトレア! どさくさに紛れてディーン様の手を握らないで!」
アイリスが慌てて俺とキャトレアの間に割って入る。
「なんだよアイリス、減るもんじゃねえだろ!」 「減るの! ディーン様は私のなんだから!」
最強の武器を手に入れたはずが、なぜか修羅場の火種も手に入れてしまったようだ。 俺は新しい杖を握りしめ、二人の美少女の喧嘩を苦笑いで見守るしかなかった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あとがき
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