男女比1:10なサキュバスだらけの世界で俺は命の危機に瀕している。

座頭海月

プロローグ サキュバスの世界

第1話 サキュバスだらけの世界



『サキュバス・ハーレム』とは。


 アニメ化、映画化、続編三作品、スピンオフetc…と様々な界隈の覇権を握り恋愛シュミレーションゲーム界の一世を風靡した、神ゲーとも呼ばれる、いわゆるエロゲーの一つである。


 なぜそこまで売れたのかというと、発売した会社が有名だったことや、そのジャンルや設定が、その時代のオタク達に見事に刺さったことなどが大きいだろう。


 ゲームの内容は、主人公である男子高校生の少年が、異能力者と呼ばれる者達が起こす異能犯罪に巻き込まれながらも、ヒロイン達と愛を育む…というものだ。


 世界観は、男女比1:10で、現代日本がモチーフになった国で、異能力という特殊な才能を持った者達がいて、亜人という人間とはまた違う獣耳やエルフなどの特徴を持った人々がいる。


 のだが…なんと、この亜人達の大半が、サキュバスなのだ。


 いわゆる、混血サキュバス。


 なので、サキュバス・ハーレム、略して『サキュレム』というタイトルだというわけだ。


 さて、なんでそんな前置きで始まったかというとだ…


「………まじかよ?」


 俺こと、葉山綾太郎。小学一年生。


 この世界が、サキュバス・ハーレムの世界だということにたった今気づきました。



 ▽



 俺が、この世界がサキュレムの世界だということに気づいたのは、今後の人生が決まると言ってもいいほど重要な日である、六歳になった子供に実施される、異能力検査の日のことである。


 異能持ちかどうかを調べる検査で、突如として俺は前世の記憶が蘇った。


 理由は不明だ。まあ、おそらく前世の記憶を思い出す…とかそんな異能だったのだろう。


 俺は陽性判定となり、異能力者として認定された。


 だが、異能力があるかどうかわかるというだけで、発現するのには個人差があり、能力があるとわかった瞬間から使えるようになる人もいれば、20歳まで使えない…ということもあり、前世の知識を使って今から能力を鍛えるというわけにも行かないのだが。


 ……というのは、そこまで重要な話ではない。いや、転生とか異能力とかそういうのもワクワクするけどだ。もっと大事なことがある。それが…


「サキュバスでハーレムってことじゃん!」


 小学一年生で思い出したのは非常に大きい。


 そう、この世界は男女比1:10。男が援交をし、男というだけでデブでもハゲでも程々に相手が選べるという世界観なのである!!


 そんな世界で?前世の記憶がある俺は?当然女の子に優しくするわけで?この世界で女の子に優しい男は少ないわけで?


 結果、モテるだろう。原作を知っているからこそわかる。しかも、サキュバスの遺伝子が混じっている者達が多い為、顔面偏差値が非常に高い。


 サキュバスの特性は男には遺伝しないため俺は普通の顔だが…今から自分磨きを始め、モテることを目標に努力すれば、ハーレムも余裕ではなかろうか?


「くくっ…フハハハ!!!」

「りょう…くん??」


 あまりの神展開に、思わず笑みが溢れる。


「ん?あぁ、気にしないで。ちょっと思い出し邪悪な笑いしちゃっただけだから」

「じゃ…じゃあく…自分で言うんだ…」


 ふぅ…落ち着け。今はまだ学校だ。あまり本性を出さず、小学一年生を演じなければ…


「ね、ねぇ、りょうくん。りょうくんの能力、もうわかった?」

「ん?俺の能力………というか君は…」


 誰だ?そう言いかけて、口を閉じた。そこにいたのは、幼馴染の少女であったから。


 危ない。そうだ。彼女は今世の俺の幼馴染である、西園桜。


 黒髪と桜色の瞳が特徴の普通の美少女だ。


 うーん、可愛い。こんな娘が幼馴染とは、俺、羨ましいぞおい。


「……桜ちゃん。お…ボクの能力は……えーっと」

「あっ、いいづらかった?なら、いわなくてもいいよ!」


 ……良い娘である!


 俺は感動した。小学生でここまで他人に気遣いができる少女が他にいるだろうか。


「それじゃ、ナイショでいいかな?」

「うん!でね、私も能力あったよ!!」

「そうなの?」

「うん!これでいっしょのがっこーにいけるね!!」

「ほんと!?やったね!」

「ふぁっ!?!」


 喜ぶ彼女に合わせ、とりあえず彼女に抱きつく。


 俺は決めた。この世界で、俺はハーレム王になる!


 ならば、ここは彼女にあわせて喜んでおくのが重要だ。


 そして、大げさなボディタッチ。ボディタッチはこの世界ではむしろ喜ばれるのだ。


 ……だが、俺は失念していた。


「ンヒィィィ!?!!?!」


 彼女が、世にも珍しい、先祖返りの本物のサキュバス…つまり、であるということを。


 純血のサキュバスは、混血とは圧倒的に搾精のレベルが違う。混血はある程度加減が効くが、純血は触れるだけでも精を吸い取る。


 普段であれば手袋をし、肌の露出の少ない服を着ているのだが、日が悪かった。彼女は、異能力検査のため、薄着だったのである。


 そんな彼女に抱きついた俺は…まぁ、当然のようにゲームだとモザイク処理されるような姿で転がることになった。


 体中の穴という穴から体液を垂れ流し、膨大な快楽が脳を支配する。顔は地上波では子供がしてはいけないような放送できない表情を浮かべていたことだろう。


 そこで、俺は思い出した。原作主人公がなぜ、ハーレムになるくらいモテまくったのかを。


 ラッキースケベが起きても、ボディタッチをしても、ベタベタしても大丈夫だったのかを。


(そういや……耐性持ちだったなぁ……)


 主人公が無条件で一癖も二癖もあるメインヒロイン達にモテた理由…それは、サキュバスに対する耐性を持っていたから。


 モブであり、一般人である俺が、純サキュバスの搾精に耐えられるはずが無かったのだ。


「っくん!りょうくん!!!?!」

(ご都合…主義が……過ぎ…るぅ………)


 俺はそうして、意識を失った。

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